すひ)” の例文
三四郎が不図其横顔を見ると、どうも上京の節汽車のなかで水蜜桃を沢山食つた人の様である。向ふは気がつかない。茶を一口ひとくちんでは烟草を一すひすつて、大変悠然ゆつくり構へてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
不気味ぶきみ投出なげださうとするとずる/″\とすべつてゆびさきすひついてぶらりとさがつたはなれたゆびさきから真赤まつかうつくしい垂々たら/\たから、吃驚びツくりしてしたゆびをつけてじつとると
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御坊ごばうこそくせをいだしてふねこぎ玉ふらめ、おとたかししづかにいへ、幽霊を見るともかまへて音をたて玉ふな、といひつゝ手作てさくとて人にもらひたる烟草たばこのあらくきざみたるもやゝすひあきて
かれ周圍しうゐには一さいこゝろかされることもなくたもと燐寸マツチけてはまた燐寸マツチたもといれて、さうしてからげつそりとちた兩頬りやうほゝにくさらにぴつちりと齒齦はぐきすひついてしまふまでゆるりと煙草たばこうて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
立し時よりあとに成り先に成て行しは町人體ちやうにんていの一人の旅人なり友次郎夫婦は何の氣も付ず瀬田せたの橋の手前なる茶店に腰打掛けて休みし時彼の旅人も其店へ這入はひり煙草などすひながら友次郎等に對ひ貴君方には何へ御越有哉と云掛られ友次郎は豫て道中には騙子ごまのはひと云もの有と聞及び居ければよわみを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
若狹鰈わかさがれひ——だいすきですが、それ附木つけぎのやうにこほつてます——白子魚乾しらすぼし切干大根きりぼしだいこわんはまた白子魚乾しらすぼしに、とろゝ昆布こぶすひもの——しかし、なんとなく可懷なつかしくつてなみだぐまるゝやうでした
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
三番叟さんばそうすひもので、熱燗あつかん洒落しやれのめすと、ばつ覿面てきめん反返そりかへつた可恐おそろしさに、恆規おきてしたが一夜いちや不眠ふみん立待たちまちして、おわびまをところへ、よひ小當こあたりにあたつていた、あだ年増としまがからかひにくだりである。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)