向日葵ひまはり)” の例文
ホテルでは、夫人の部屋は二階にあつて、向日葵ひまはりの咲いてゐる中庭に面してゐた。そしてその部屋の中に、ほとんど一日中閉ぢこもつてゐた。
聖家族 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
くだんの美人はこの絶景に見とれて、途々根気よく頬ばつてゐた向日葵ひまはりの種の殻を吐きだすことも打ち忘れてぼんやりと考へこんでしまつた。
古来偉大なる芸術の士は皆この独自の眼光を有し、おのづから独自の表現を成せり。ゴツホの向日葵ひまはりの写真版の今日こんにちもなほ愛翫あいぐわんせらるる、あに偶然の結果ならんや。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
卯平うへいがのつそりとおほきな躯幹からだてたそば向日葵ひまはりことごとそむいて昂然かうぜんとしてつてる。向日葵ひまはりつぼみ非常ひじやうふくれて黄色きいろつてから卯平うへいゑたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
向日葵ひまはりの花、磨き立てた銅盥かなだらひの輝きを持つて、によつきりと光と熱との中に咲いてゐる。歩み移る太陽の方にかすかに面を傾くるといふにもこの花のあはれさが感ぜられる。
その室の鏡の枠の模様には一けいの蔓にまつたく故人の空想から出来た奇抜な雑多の花と葉と実とが生じて居た。壁には大きな向日葵ひまはりの花の中から黒牛くろうしが頭を出して居る絵もあつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
向日葵ひまはりが垂れた首のやうに砂の中に立つてゐた。寢ているキャムプの布の傍まで來かかると、女は思ひ出した數日前の出來事をまた話した。——もう一週間にもなりますかしら。
榛名 (旧字旧仮名) / 横光利一(著)
もんまでわづか三四けん左手ゆんでほこらまへ一坪ひとつぼばかり花壇くわだんにして、松葉牡丹まつばぼたん鬼百合おにゆり夏菊なつぎくなど雜植まぜうゑしげつたなかに、向日葵ひまはりはなたかはすごと押被おつかぶさつて、何時いつにかほしかくれた。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と云つたやうなおもむきのある街で、土塀がくづれてゐたり家竝が傾きかかつてゐたり——勢ひのいいのは植物だけで時とすると吃驚びつくりさせるやうな向日葵ひまはりがあつたりカンナが咲いてゐたりする。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
豪然と咲き誇つてゐる向日葵ひまはりに譬へたならば、それとは全く反対に、鉢の中の尺寸の地の上に、楚々として慎やかに花を付けるあの可憐な雛罌粟ひなげしの花のやうな女性が、夫人の手近にゐることを
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
ひたむきにしづけかりけり日の方や向日葵ひまはりしんけつくしたる
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
向日葵ひまはりを一輪活けて幸ひのうちあふれたる青玉せいぎよくの壺
註釈与謝野寛全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
向日葵ひまはりの月に遊ぶや漁師達
普羅句集 (新字旧仮名) / 前田普羅(著)
狂院の向日葵ひまはりの種握りしめ
今日:02 今日 (新字旧仮名) / 西東三鬼(著)
焦げて図太い向日葵ひまはり
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
向日葵ひまはりは肩の上に
測量船 (新字旧仮名) / 三好達治(著)
向日葵ひまはり向日葵ひまはり百日紅ひやくじつこう昨日きのふ今日けふも、あつさはありかずかぞへて、麻野あさの萱原かやはら青薄あをすゝき刈萱かるかやあきちかきにも、くさいきれくもるまで、たちおほ旱雲ひでりぐもおそろしく、一里塚いちりづかおにはあらずや
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
恰好のいい向日葵ひまはりのいつぱい咲き乱れた菜園の上には、翠玉石エメラルドいろ、黄玉石トッパーズいろ、青玉石サファイヤいろ等、色さまざまな、微細な羽虫が翔び交ひ、野づらには灰いろの乾草の堆積やまや黄金いろの麦束が
ひたむきにしづけかりけり日の方や向日葵ひまはりしんけつくしたる
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
大輪の向日葵ひまはりを斫らんとして
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
向日葵ひまはりや葉裏にさがる紋白蝶もんしろの夜はばたかず宿りたりけり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
向日葵ひまはりの実をむ小鳥。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
向日葵ひまはりや葉裏にさがる紋白蝶もんしろの夜はばたかず宿りたりけり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
直ぐに一輪、向日葵ひまはり
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
二階よりに照らしみる向日葵ひまはりの花さうして數無かりけり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
大きな窓が向日葵ひまはり
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
二階よりに照らしみる向日葵ひまはりの花さうして数無かりけり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うち沈む黒き微塵みぢんの照りにしてしよは果しなしきん向日葵ひまはり
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)