コノ稿ハ昭和七年三月三十日正宗白鳥君ノ論文ヲ読ミ燈下匆々筆ヲ走ラセタ。ワガ旧作執筆ノ年代ニハ記憶ノ誤ガアルカモ知レナイ。
正宗谷崎両氏の批評に答う (新字新仮名) / 永井荷風(著)
龐統は恐れをなして、匆々に退出した。玄徳はまだ酔っていたとみえる。左右の者に介添えされて、ようやく後堂の寝所へはいった。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここにおいて、その研究の未熟を顧みず、匆々編成しきたりて、ここにこれを世に公にするに至る。その疎漏、誤脱の多き、余もとよりその責を任ず。
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
書簡 蒲原房枝宛:(一九一五年頃) (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
ツマリこの三人が硯友社の創立発起人でありかつ無限責任者であったが、如何なる理由があった乎して美妙斎は創刊匆々無限責任を忘れて忽ち分離してしまった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉―― (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
やっと木の間から盗み見るくらいで、匆々に逃げ帰って来るのが普通であった。今から考えてみれば、せいぜい二十分くらいの行程のところであったように思われる。
罪と罰 (新字新仮名) / フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(著)
〔気品の泉源、智徳の模範〕 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
看護婦にうながされて、私たちは匆々とサン・ルームを出て横臥場に行った。
蝱の囁き:――肺病の唄―― (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
上陸する匆々から一人でぽつんと膳に向うのは寂しいものだ。ビフテーキの堅いことがまた切れるはずのナイフさえ徹らないのだ。女中はつつましいが、想像していたような東北弁ではない。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
牧野富太郎自叙伝:01 第一部 牧野富太郎自叙伝 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「まだ分らぬか。わからば元より、江戸大公儀御差遣の隠密に傷一つ負わしなば、伊達五十四郡の存亡にかかろうぞ。匆々に捕り方退かせて、江戸へ申し開きの謝罪状でも書きしたためるが家名のためじゃ。退けい。退かせい」
旗本退屈男:07 第七話 仙台に現れた退屈男 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
以上、述べたように、大工事もまだ半ばの——いや、半ばにも達しない着手匆々というのに、秀吉は、それをここに見に来た数日の後
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この時も、秋田オバコのこは何たる敏感さよと、到着匆々重ね重ね敵の意外な敏感さにおどろくことばかりである。
安吾の新日本地理:09 秋田犬訪問記――秋田の巻―― (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ところがその翌晩もまたその翌晩も、十二時といえば「覚えてろ」の声を合図に姿を現し、ついには娘や女中の目にも止まるようになったので、十日あまりで匆々越してしまった。