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勁
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つよ
ふりがな文庫
“
勁
(
つよ
)” の例文
というのは、岩石のそそり立つ山坂を平地と同じように踏めるのは、牛のような短く
勁
(
つよ
)
い
脚
(
あし
)
をもったものに限ると聞くからであった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
今日の紛糾を明日へ向って
勁
(
つよ
)
く掴む歴史的な感覚の弱さでは小説の弱さに通ずるものとして、私たちを深く省みさせる点だろうと思う。
昭和十五年度の文学様相:現代文学の多難性
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
威張れば威張る程別れられないし、ワカレルワカレルといっても、胴締めはワカレルという言葉のたびに、
勁
(
つよ
)
く締めつけられるのである。
我が愛する詩人の伝記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
こんな文句を毎日眼の前におきながら、弁当をぱくついてゐた雪堂といふ百人頭は
性来
(
うまれつき
)
齦
(
はぐき
)
の
勁
(
つよ
)
い、胃の腑の素敵に丈夫な男だつたらしい。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
附近には鹿の足跡が非常に多く、
勁
(
つよ
)
い西風の枝を鳴らす音に交って、例のピューンピューンという細い声が絶えず聞えていた。
大井川奥山の話
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
▼ もっと見る
教養の蓄積というさもしい性根を、一挙にして打ち砕くような
勁
(
つよ
)
さをもって
佇立
(
ちょりつ
)
していた。本来人間は
悉
(
ことごと
)
く仏性をもつはずだ。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
人間の怨念、執着というものが、どれほど激しく
勁
(
つよ
)
いものかを知ったなら、恐ろしさに生きつづける気はしなくなるであろう。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
飽くまでも
勁
(
つよ
)
く押して行けば、やがてその人を笑わなくなり、ああ、浅墓だ、恥を知れ! 掌を返すが如くその人を賞讃し、畏敬の身振りもいやらしく
善蔵を思う
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その底の根に在ると感じられたあの土を
穿
(
うが
)
ち、根を大地の金輪際にまで下しているとも思えるその
勁
(
つよ
)
く逞しい力。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼は
勁
(
つよ
)
い風に吹かれながら、眼の下の景色を見つめていると、急に云いようのない寂しさが、胸一ぱいに
漲
(
みなぎ
)
って来た、そうして思わず、声を立てて泣いた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これは、ベートーヴェンの性格にある
勁
(
つよ
)
い
不羈
(
ふき
)
性やその他本来ドイツ的でない他のいろいろな彼の性質を理解しようとするとき忘れてはならないことである。
ベートーヴェンの生涯:02 ベートーヴェンの生涯
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
これや
北風
(
ほくふう
)
に一輪
勁
(
つよ
)
きを誇る梅花にあらず、また
霞
(
かすみ
)
の春に
蝴蝶
(
こちょう
)
と化けて飛ぶ桜の花にもあらで、夏の夕やみにほのかににおう月見草、と品定めもしつべき婦人。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
意志の
勁
(
つよ
)
そうな眉、豊かな線をもつひき緊った唇つき、なにもかもが親愛な、温かくじかに心に触れてくる感じだ、——こんなにも自分に近いひとだったのか
菊屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
明治四十四年十一月十九日! 我が大東の健児が近く世界の体育競争場裡に於て鉄脚の
勁
(
つよ
)
さを試すべく、東京府下羽根田の運動場に於て国際予選の大競走を行つた日である。
オリムピヤ選手予選
(新字旧仮名)
/
長瀬金平
(著)
されどその民の土やせて石多く風
勁
(
つよ
)
く水少なかりしかば、
聖者
(
ひじり
)
がまきしこの
言葉
(
ことのは
)
も
生育
(
そだつ
)
に由なく、花も咲かず実も結び得で枯れうせたり。しかしてその国は
荒野
(
あれの
)
と変わりつ。
詩想
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
つぐんで黙ってしまう。そして立った彼女の顔の左半面の、咲いたばかりの花のような
勁
(
つよ
)
さ
廃墟(一幕)
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
纖
(
ほそ
)
く
勁
(
つよ
)
く太く艶ある
彼
(
か
)
の聲の如き心をもたむとぞ思ふ (シャリアーピンを聞きて)
和歌でない歌
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
浴を
澡
(
と
)
らなかったものだが、今は立派な温泉宿が出来た、それにしても客の来るのは、夏から秋だけで、冬は雪が二尺もつもる、風が
勁
(
つよ
)
くて、山々谷々から吹き
颺
(
あ
)
げ、吹き下すので
梓川の上流
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
彼能くわが兵刃を禁ずれど必ず刃なき物を禁じ能わぬべしと、すなわち多く
勁
(
つよ
)
い木の白棒を作り、精卒五千を選んで先発せしめ、万を以て計る多勢の賊を打ち殺したが、禁術は一向利かなんだとある。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
すなどり
人
(
びと
)
らが
勁
(
つよ
)
き肩たゆまず
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
はるかに海をへだたっている保のところまで、
勁
(
つよ
)
いひとすじの綱を投げかけようとするように、伸子は心いっぱいにその手紙を書いた。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
成程
腕
(
うで
)
つ
節
(
ぷし
)
は
勁
(
つよ
)
さうに出来てゐるが、その二十年といふもの、金なぞたんまり握つた事の無ささうな
掌面
(
てのひら
)
だなと弟子は思つた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
筒井はその時はじめて
勁
(
つよ
)
く語調をあらため、彼の腹にこたえるように申し出たのであった。それは思いかけぬ言葉の剛直さをあらわしていた。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
熊笹
(
くまざさ
)
を鳴らす
勁
(
つよ
)
い風はつれなくとも、しかし彼は宿内の
小前
(
こまえ
)
のものと共に、同じ仕事を分けることをむしろ楽しみに思った。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
風の
勁
(
つよ
)
い日で、百人ほどの兵士が江の島へ通ずる橋のたもとに、むらがって坐り、ひとしく弁当をたべていた。
狂言の神
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
青年俳優
(
わかおやま
)
の眉目には、最近一身一命をなげすてて、大事にいそごうとするものだけが現す、あの
勁
(
つよ
)
く、激しく、しかも落ちついた必死、懸命の色が
漲
(
みなぎ
)
るのであった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
勁
(
つよ
)
い雑草の根の張った地面は、虎之助の
渾身
(
こんしん
)
の力を平然とはね返してしまう、老躰の閑右衛門にはごく楽々と出来ることが、彼の壮年の力量をまるで受付けないのだ。
内蔵允留守
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私は眼の前に突き出された巨大の拳固のように、
勁
(
つよ
)
い力の籠った山の姿を瞳に烙きつけながら「よし、来年はあれに登ろう」と独語して、偃松の露に浸した手拭で顔を洗った。
木曽駒と甲斐駒
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
蝶子さんを見ると、流れに任せてなよ/\と、どこの岸にでも漂い寄って咲ける
萍
(
うきくさ
)
の花の自然の美しさを感じずにはいられない。弱いものゝ持つ
勁
(
つよ
)
みを感じられずにはいられない
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
美
(
うる
)
わしき
菫
(
すみれ
)
の種と、やさしき野菊の種と、この二つの一つを石多く水少なく風
勁
(
つよ
)
く土焦げたる地にまき、その一つを春風ふき
霞
(
かすみ
)
たなびき
若水
(
わかみず
)
流れ鳥
啼
(
な
)
き
蒼空
(
あおぞら
)
のはて地に
垂
(
た
)
るる野にまきぬ。
詩想
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
最も親しき人々の流血の惨事——この大悲痛からの脱却を身命を
賭
(
と
)
して祈念された
勁
(
つよ
)
い信念、何よりもまず私はそこへ参入したいと願うのである。これが書紀を読んだ後の私の感銘であった。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
擁
(
いだ
)
くは
勁
(
つよ
)
く張りし琴
草わかば
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
ここの若者たちは、小説をよむのもそういう工合だし、芝居を見るのも、常にそういう素朴で
勁
(
つよ
)
い態度をもっているのであった。
広場
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
子供のやうにやんちやで、
生
(
うぶ
)
で、一本気で、
手障
(
てざは
)
りは冷たく静かなやうだが、底には高い潜熱と
勁
(
つよ
)
い執着をもつてゐた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
枝という枝は南向に生延びて、冬季に吹く風の
勁
(
つよ
)
さも思いやられる。白樺は多く落葉して高く空に突立ち、細葉の
楊樹
(
やなぎ
)
は
踞
(
うずくま
)
るように低く隠れている。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
貞時はほかには何もいわず、ただ、ひとつの言葉だけを
勁
(
つよ
)
く、迷うことなく答えるようにといった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
いと尊き玉はいと
勁
(
つよ
)
き金剛砂もて飽くまで磨かざるべからざる也。汝はいと貴き玉なれば也。
青べか日記:――吾が生活 し・さ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
甲武信岳のあたりは既に濃藍色の幾重の雲に包まれ、破風山も
亦
(
また
)
まさに隠れんとして
勁
(
つよ
)
い風でも起っているらしく、其あたりの雲が頻りに騒いでいる。
幸
(
さいわい
)
に北の方面は穏かであった。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
雪之丞は、三斎を
勁
(
つよ
)
い目でみつめたまま、しかし口元の冷たい笑いを絶たなかった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
永遠に人目に触れずしてかつ降り、かつ消えてはまた降り積む、あの北地の奥のしら雪のように、その白さには、その
果敢
(
はか
)
なさの為めに
却
(
かえ
)
って
弛
(
ゆる
)
めようもない究極の
勁
(
つよ
)
い張りがあった。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
中宮寺の像は、その大いさにもよるが、うける感じが
勁
(
つよ
)
く
逞
(
たくま
)
しいのである。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
「水の火よりも
勁
(
つよ
)
きを知れ。キリストの
嫋々
(
じょうじょう
)
の威厳をこそ学べ。」
HUMAN LOST
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
チンダルは科学者の心持で終始一貫して、その科学精神の
勁
(
つよ
)
くリアリスティックであることから独特の美を読者に感じさせる。
作家のみた科学者の文学的活動
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
枝という枝は南向に
生延
(
はえの
)
びて、冬季に吹く風の
勁
(
つよ
)
さも思いやられる。
白樺
(
しらはり
)
は多く落葉して、高く空に突立ち、細葉の
楊樹
(
やなぎ
)
は
踞
(
うずくま
)
るように低く隠れている。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
応募兵は自分が
螽斯
(
ばつた
)
のやうに
勁
(
つよ
)
い脚を持つてゐるのを見せるために、二三度靴の
踵
(
かゞと
)
で
地面
(
ぢべた
)
を蹴つてみせた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
生絹は言い当ててはあとに引かぬこの男の言葉の
勁
(
つよ
)
さに、しだいに心が惹かされて行った。このように勁い言葉を持った男というものを見たことも、生まれてはじめてであった。
荻吹く歌
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「そういう風にまっすぐに生きられればいいな」幸太は話を聞きながらよくそう云った、性質のはっきり現われている線の
勁
(
つよ
)
い彼の顔が、そんなときふと思い沈むように見えることがあった。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
弱いものゝ持つ
勁
(
つよ
)
みをあなたに感じずにはいられません。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
朔風
(
きたかぜ
)
の
勁
(
つよ
)
い夜には、星の光も、するどいものです。
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
何かより
勁
(
つよ
)
い人間精神の高揚によって社会悲劇をも克服した芸術としての俳諧、そういうものを自分の芸術に求めていたのではあるまいか。
芭蕉について
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
勁
漢検1級
部首:⼒
9画
“勁”を含む語句
勁敵
遒勁
勁勇
簡勁
雄勁
勁健
勁烈
蒼勁
驍悍勁厲
雄勁蒼莽
雄健蒼勁
遵勁瀟灑
清勁暢達
浄勁
明勁
強勁
勁騎
勁風
勁抜
勁弩
...