凜々りんりん)” の例文
別に、肩には更紗さらさ投掛なげかけ、腰に長剣をいた、目の鋭い、はだか筋骨きんこつ引緊ひきしまつた、威風の凜々りんりんとした男は、島の王様のやうなものなの……
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
我義塾の命脈を絶つものと云うべし、彼の印鑑の如きはすみやかに之を火に投じて可なりとて、その語気凜々りんりん、決する所あるが如し。
故社員の一言今尚精神 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
勇気凜々りんりん書いていて私は笑い出したし、同時に所謂ハイカラーというか一面的合理主義を感じて、複雑な感想をもちました。
天鵞絨ビロードの声と言われた、柔かい感触と、情緒の豊かな歌が、人間離れのした巨大な声量で、場の隅々まで凜々りんりんと響き渡った。
それにシャアにジャヴェリにカパディア氏! これらの大一座を引き具して勇気凜々りんりん颯爽さっそうとして乗り込んだのであったが
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
と叫んだ新九郎にも、一念のほとばしるところ、おのずから凜々りんりんたる気魄があって、彼の圧倒へ全力をこめて反抗した。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生麦なまむぎの事件でござんさあ、薩摩っぽうが勇気凜々りんりんとして、毛唐二三人を一刀に斬って捨てたのはまあ豪勢なもんだとして、ところでその尻拭いは誰がします
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
実朝の中で、そうした文化へのあこがれが「詩」となってはりつめていることがまともに解るのは、これら一首の声調にこもる凜々りんりんとした、たるみのない統一力によってである。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
同時にその間に於て翁が如何に酬いられぬ努力をつくし、人知れぬ精魂を空費して来たか。国粋中の国粋たる能楽の神髄を体得してこれを人格化し凜々りんりんたる余徳を今日に伝えて来たか。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
納所なっしょ二人も尻はしょり、一人は麺棒めんぼう、一人は鉄火箸かなひばしを得物に代えて、威風凜々りんりんというありさま。隅々を見回ってから四人額をあつめひそひそささやき合い、また立ち分かれて見回り歩く。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
恰好だけでもせめて勇気凜々りんりんたるところを示しているだけでよかったのだ。
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
大仏の鋳造に当って「天下の富をたもつ者はちんなり。天下の勢をもつ者も朕なり」と勅した天皇は、その鋳造を終って東大寺に行幸し、皇后と共に並んで北面の像に向い、凜々りんりんと大仏に相対し
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
と勇気凜々りんりん四辺あたりを払って扇を膝に戦場叱咤しった猛者声もさごえで述べ立てた。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それでも勇気凜々りんりんとして、まるで昔の出陣のようである。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
帆村荘六の勇気凜々りんりんたる姿だった。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
栄華の空より墜落して、火宅の苦患くげんめつつある綾子を犯す乞食お丹、自堕落のてい引替えて悪魔の風采ふうさい凜々りんりんたり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
凜々りんりんとしていたが、師匠の自斎が、華美は嫌う人であったから、そこの水汲み小僧であった小次郎は、元より質素で色の真っ黒な田舎いなか少年でしかなかった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
護摩のけむり濛々もうもうと壇をこめて、東海坊の素晴らしい次低音バリトーンだけが、凜々りんりんと響き渡るのです。やがて
新撰組の近藤勇といえどもおれにはかなわねえ、道庵のさじにかかって命を落したものが二千人からあると、日頃勇気凜々りんりんたる道庵先生も、この子供たちに逢っては一たまりもなく
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その声に驚いて、外に逃出していた百姓連中がワイワイと駈集かけあつまって来るのを、銀之丞は和尚の屍体に片足かけたまま見下した。引抜いた血刀を構えながら凜々りんりんたる声を張上げて叫んだ。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一家惣領そうりょうの末であった小山小四郎が田原藤太相伝のを奉りしより其れに改めた三左靹絵ひだりどもえの紋の旗を吹靡ふきなびかせ、凜々りんりんたる意気、堂々たる威風、はだえたゆまず、目まじろがず、佐沼の城を心当に進み行く
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
清君も勇気凜々りんりんとして、胸をたたいた。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
瞳の動かぬ気高い顔して、恍惚うっとりと見詰めながら、よろよろと引退ひきさがる、と黒髪うつる藤紫、肩もかいな嬌娜なよやかながら、袖に構えた扇の利剣、霜夜に声も凜々りんりん
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前には、恋の貂蝉ちょうせんうしない、今また争覇の地を失って、呂布のうしろ影には、いつもの凜々りんりんたる勇姿もなかった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
読経の声凜々りんりんと響き渡ると、それに合せて念仏を称える善男善女の声が、一種の情熱的なリズムになって、平次のもたらした世俗の「御用」などは通りそうもありません。
連中が道庵の凜々りんりんたる武勇に圧倒されたわけでもなく、これはたぶん江戸より海陸二百八十八里、九州肥後熊本五十四万石細川侯の行列であろうところの供揃いが、下に下にの触れ声で
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
梅津朔造氏の調子は凜々りんりんと冴える、仮名扱いの綺麗な、派手なものであった。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
少年が勇威凜々りんりんとして今大鷲をった時の風采は、理学士をして思わずおもてを伏せて、たおれたる肉一団何かある、我が妻をもてこの神将に捧げんと思わしめたのである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
凜々りんりんとした声ではないが、低いうちにも一念のくことなき三昧さんまいが感じられる念仏の声であった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
振りかぶった左母次郎の刃の下に、銭形平次の声は凜々りんりんと響くのでした。
銭形平次捕物控:126 辻斬 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ただ、ここに現われた勇者は、体格の屈強なるに似ず、勇気の凜々りんりんたるに似ず、ドコかに多少の愛嬌と和気がある。駒井甚三郎はともかくもお礼の心を述べておこうと、彼に近づいて、慇懃いんぎん
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そうして、そのお姿を一心に見つめておりますと、そのうちに、その鏡の中のお母様の唇が、おのずと動き出しまして、その間際に仰有ったお言葉が凜々りんりんとすき透って、私の耳に響いて来るのでした。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
凜々りんりんたる声が澄んで、三ツ扇の紋幕をかなぐり上げるや、たたたたたとそこへ駈け現われて来た一人は、黒絖龍文くろぬめりゅうもんの小袖にたすきを綾なし、青月代あおさかやきに白鉢巻をキリッと締めて
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何の蝸牛ででむしみたような住居すまいだ、この中に踏み込んで、まかり違えば、殻を背負しょっても逃げられると、高をくくって度胸が坐ったのでありますから、威勢よく突立つッたって凜々りんりんとした大音声。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
勧進帳の読上げも凜々りんりんたる調子を張って、満場をシーンとさせました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
恐ろしい沈黙の中を、平次の声だけが、低いながら凜々りんりんと響きます。
見る間に駈け寄ってきたのは春日新九郎、青額あおびたいに紫紐の切下げ髪は余り美貌過ぎて、不敵な郷士の度胆どぎもを奪うには足りないが、勇気は凜々りんりんとして、昔の新九郎とは別人のように
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と見る見る瞳にうるみを持ったが、活々した顔はたわまず、声も凜々りんりんと冴えた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
銭形の平次、土間に突っ立って見上げながら凜々りんりんと響かせます。
爛々らんらんたるそのひとみ凜々りんりんたる威風、見るからに猛豹もうひょうの気がある。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平次は縁端えんばたに立って、凜々りんりんと朝の空気の中に響かせます。
多一の声は凜々りんりんとして
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うながす声は凄愴せいそうを呼んだ。凜々りんりん、血は舟中を紅にしている。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
凜々りんりんと云う。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
軍紀は凜々りんりんとふるった。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)