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わきみ
ふりがな文庫
“
傍見
(
わきみ
)” の例文
藤吉郎は、彦右衛門と他一人を連れたのみで、煙に
紛
(
まぎ
)
れて、城壁の内側を西へ西へ
傍見
(
わきみ
)
もせず走り、やがて七曲り口の木戸へくると
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「下座は一人休んで、半助とお百という夫婦が忙しく働いている。綱渡りが始まると、女房の三味線に亭主の
鉦
(
かね
)
で
傍見
(
わきみ
)
もできない」
銭形平次捕物控:118 吹矢の紅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして、何事もなかつたやうな又何事もないやうな顔で、その汚い垢だらけの顔面から小さい眼だけをきらつかせ
傍見
(
わきみ
)
をして近づいて行く。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
傍見
(
わきみ
)
もせずに足にまかせてそのあとに
※
(
つ
)
いて行った彼は、あやうく父の胸に自分の顔をぶつけそうになった。父は苦々しげに彼を尻目にかけた。
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
虫が知らすとでも云うのか、何だかこう、
傍見
(
わきみ
)
をしているすきに何事か起り相で、どうも外へ目を向けられなかったのだ。
D坂の殺人事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
当座
(
こちら
)
ではじめてから毎晩、毎晩来て下すって、あの可愛らしい顔をして
傍見
(
わきみ
)
もしないで見ていて下さるじゃありませんか。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
白石は、ときどき
傍見
(
わきみ
)
をしていた。はじめから興味がなかったのである。すべて仏教の焼き直しであると独断していた。
地球図
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「
傍見
(
わきみ
)
なんかしてちゃアいけません。その箱を下に置くんですよ。それがすんだら、お前達は向うへ行くんですよ。」
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
その青年を国王の目の前に連れてきた大尉は、その本が焼かれる時、ふと国王が
傍見
(
わきみ
)
せられた隙に、手早く火の中から一冊を抜きとって
懐中
(
ふところ
)
へ隠した。
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
傍見
(
わきみ
)
をせずたゞ一心に、忠実に、自己の道に進むといふ、さう云ふ、決心を絶えずゆるめないで引きしめてゐる、私の頭の中を幾度となく、私が両親を欺いて
日記より
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
(それは四つ
五歳
(
いつつ
)
のころのことだが——)私は父が
傍見
(
わきみ
)
をしながら
猪口
(
おちょこ
)
を口にはこんで、このわたが
咽喉
(
のど
)
につかえたのを見てから、いつも
鋏
(
はさみ
)
をもって座っていた。
旧聞日本橋:15 流れた唾き
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「それは、よく見届けませんでしたが、二人がこうして
傍見
(
わきみ
)
をしているかいない間に、もうあすこまで一飛びに飛んで行ったんですから、おおかた羽が生えたんでしょう」
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
緑の上衣の若者を一寸ハムレットかと思うたら、そうではなくて、少し
傍見
(
わきみ
)
をして居た内に、黒い
喪服
(
もふく
)
のハムレットが出て来て、低い
腰掛
(
こしかけ
)
にかけて居た。余は
熟々
(
つくづく
)
とハムレットの顔を見た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
松の浮根に乗っていた小供は、源吉がそうして一心になって
傍見
(
わきみ
)
もしないのを見きわめると、手をあげて皆を招くようにしておいて、先ず
己
(
じぶん
)
で爪立ちながら跫音のしないようにして歩きだした。
放生津物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その眼がたまたまぬすみ視した
処
(
ところ
)
が、それは別に意味も無い
傍見
(
わきみ
)
に過ぎないと、かの女は結論をひとりでつける。そして思いやり深くその
労役
(
ろうえき
)
の彼等を、あべこべに
此方
(
こちら
)
から見返えすのであった。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
おしゃべりをしたり
傍見
(
わきみ
)
をしたりするようなこともなかった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
額
(
ひたい
)
に汗をにじませ、酒も少し手伝っているらしい顔色をして、本位田又八は、五条から三年坂へ
傍見
(
わきみ
)
もせず駈けて来た。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
暫く
傍見
(
わきみ
)
をしていて、ひょいと目を元に戻すと、いつの間にか、窓の鉄棒のうしろに、胸から上の、二つの顔が並び、四本の手が鉄棒を掴んでいた。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
直
(
す
)
ぐに
殘
(
のこ
)
つたのに
醤油
(
したぢ
)
をつける。
殆
(
ほとん
)
ど
空
(
くう
)
で、
奴
(
やつこ
)
は、
此
(
こ
)
の
間
(
あひだ
)
に
例
(
れい
)
の、
目
(
め
)
をきよろつかせる、
鼻
(
はな
)
をひこつかせる、
唇
(
くちびる
)
をへし
曲
(
ま
)
げる。
石頭
(
いしあたま
)
を
掉
(
ふ
)
る、
背
(
せ
)
ごすりをする、
傍見
(
わきみ
)
をする。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
無心そうにあちこち
傍見
(
わきみ
)
などなさりながら、ひらりひらりと、まるで小さな翼のようにスプウンをあつかい、スウプを一滴もおこぼしになる事も無いし、吸う音もお皿の音も
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
久助は
傍見
(
わきみ
)
をしていたが、馬上のお雪ちゃんは、ハッキリとそれを認めて
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
儂自身東京から溢れ者の先鋒でありながら、滅多な東京者に入り
込
(
こ
)
まれてはあまり嬉しい気もちもせぬ。洋服、白足袋の男なぞ工場の地所見に来たりするのを
傍見
(
わきみ
)
する毎に、儂は眉を
顰
(
ひそ
)
めて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
さて、
傍見
(
わきみ
)
をしないで、急ぎましょう。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
弘一君が
黯然
(
あんぜん
)
として云った。私は答える
術
(
すべ
)
を知らなかった。母夫人は
傍見
(
わきみ
)
をして目をしばたたいていた。
何者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「そうだ」馬場はことさらに
傍見
(
わきみ
)
をしながら、さもさもわざとらしい小さなあくびをした。
ダス・ゲマイネ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
と
自
(
おのず
)
から肩の
嬌態
(
しな
)
、引合せた袖をふらふらと、台所
穿
(
ばき
)
をはずませながら、
傍見
(
わきみ
)
らしく顔を横にして、小走りに駆出したが、帰りがけの四辻を、河岸の方へ突切ろうとする角に、自働電話と
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
傍見
(
わきみ
)
ばかりしているなッ」
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
是
(
これ
)
より
前
(
さき
)
、
雪枝
(
ゆきえ
)
は
城趾
(
しろあと
)
の
濠端
(
ほりばた
)
で、
老爺
(
ぢい
)
と
並
(
なら
)
んで、
殆
(
ほとん
)
ど
小学生
(
せうがくせい
)
の
態度
(
たいど
)
を
以
(
もつ
)
て、
熱心
(
ねつしん
)
に
魚
(
うを
)
の
形
(
かたち
)
を
刻
(
きざ
)
みながら、
同時
(
どうじ
)
に
製作
(
せいさく
)
しはじめた
老爺
(
ぢい
)
の
手振
(
てぶり
)
を
見
(
み
)
るべく……
密
(
そつ
)
と
傍見
(
わきみ
)
して、フト
其
(
そ
)
の
目
(
め
)
を
外
(
そ
)
らした
時
(
とき
)
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
傍見
(
わきみ
)
がてら、二ツ三ツ四ツ五足に一ツくらいを数えながら、靴も沈むばかり積った路を、一足々々踏分けて、欽之助が田町の方へ向って来ると、
鉄漿溝
(
おはぐろどぶ
)
が折曲って、切れようという処に、一ツだけ
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
傍見
(
わきみ
)
をしながら
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
傍
常用漢字
中学
部首:⼈
12画
見
常用漢字
小1
部首:⾒
7画
“傍”で始まる語句
傍
傍目
傍若無人
傍人
傍輩
傍観
傍題
傍杖
傍道
傍眼