すか)” の例文
尼は彼の出鼻をへし折ってすかさず門を閉めた。阿Qはすぐに押し返したが固く締っていた。もう一度叩いてみたが返辞もしない。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
『それ發射はつしや!。』とわたくしさけ瞬間しゆんかん日出雄少年ひでをせうねんすかさず三發さんぱつまで小銃せうじう發射はつしやしたが、猛狒ゴリラ平氣へいきだ。武村兵曹たけむらへいそうおほいいかつて
三郎兵衛は、ふと、浪路が、うつむいて、白い細い指先で、こめかみを押えるのを見ると、すかさず言いかけた。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ほがらかに秋の気澄みて、空の色、雲の布置ただずまひにほはしう、金色きんしよくの日影は豊に快晴を飾れる南受みなみうけの縁障子をすかして、さはやかなる肌寒はださむとこ長高たけたかせたる貫一はよこたはれり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すかさず咽喉のどもと突貫つきとほさんとしけれども手先てさきくるひてほゝより口まで斬付きりつけたり源八もだえながら顏を見ればおたかなりしにぞ南無なむ三と蹴倒けたふして其所そこ飛出とびいだつれ七とともあと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すかさず、この不気味な和郎を、女房から押隔てて、荷を真中まんなかへ振込むと、流眄しりめに一にらみ、直ぐ、急足いそぎあしになるあとから、和郎は、のそのそ——おおきな影を引いて続く。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
余はすかさず「二人の紳士とは、一人は私で今一人は只今此の家を立ち去った権田時介でしょう、彼は私の知人ですが、秀子の事に就いて何を先生へ願いましたか」
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
しかし、声音の自由を失っているので救いを求めることも出来ず、渾身こんしんの力をふるって棺の蓋をわずかにすかしまでしたのでしたが、そのまま彼は力尽きて、再び棺中で動けなくなってしまいました。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
お力は返事もしないで、木間をすかして、離座敷の方を眺めた。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すかさず文治は立直りまして大音を張上げ
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と云うのをすかさず
嫁取り二代記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
空しく長きうめき声を洩すのみ、此有様も如何ように見て取る可きか、目科はすかさずついて入り
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
久八がすかさずたもとに取すがり此程もあれほど御いさめ申せしにお通ひ成るは何事ぞ其後も度々御見かけ申せど此久八にかくまはり少しも御身の落付ぬは如何なる天魔てんま魅入みいりしやと涙を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
けれど、第一だいいちに、其樣そんな危險きけん深山しんざん如何どうして紀念塔きねんたうてるか、外國人ぐわいこくじんかれぬほど危險きけんところへは、吾等われらだつてかれぬはづではいかと、すかさず一本いつぽん切込きりこむと、武村兵曹たけむらへいそうちつともおどろかない。