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闃
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げき
ふりがな文庫
“
闃
(
げき
)” の例文
「忽ち鳥の奇聲を聞く。再び
闃
(
げき
)
として聲無し。熱帶の白晝、却つて妖氣あり。佇立久しうして覺えず肌に粟を生ず。その故を知らず」
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
典医
(
てんい
)
だけは奥へ出入りしていたし、城後の梅花は、日々
綻
(
ほころ
)
びそめて来るのに、その後、
管楽
(
かんがく
)
の音は絶えて、春園も
闃
(
げき
)
たり——であった。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
万籟
(
ばんらい
)
闃
(
げき
)
として声を
呑
(
の
)
む、無人の地帯にただ一人、姉の死体を湖の中へ引き
摺
(
ず
)
り込むスパセニアの姿こそ、思うだに
凄愴
(
せいそう
)
極まりない。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
また
旧
(
もと
)
の境内の中央に立ちて、もの淋しく
瞶
(
みまわ
)
しぬ。山の奥にも響くべく
凄
(
すさま
)
じき音して堂の扉を
鎖
(
とざ
)
す音しつ、
闃
(
げき
)
としてものも聞えずなりぬ。
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一山
闃
(
げき
)
として、氣爽かに、心自から澄み、神冴え何を思うてみても、それが何處までゞも深くふかく考へることが出來る。
箱根の山々
(旧字旧仮名)
/
近松秋江
(著)
▼ もっと見る
まして一月元日の夕景ともなるなれば四辺
闃
(
げき
)
として鎮まりかえり、聞こえるものはセコンドを刻む振子の音ばかり。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
百余年この
方
(
かた
)
は坊主一疋もいなくなり、山神形を
易
(
か
)
えあるいは
豺狼
(
さいろう
)
あるいは
猨狖
(
えんゆう
)
となりて行人を驚恐せしむ、故を以て、
空荒
(
くうこう
)
闃
(
げき
)
として僧衆なしとある。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
これエリパズが天地
闃
(
げき
)
として死せるが如き深夜において、ある霊に接し、その語りし語を取次いだのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
神戸の病院に行って病室の番号を聞いて心を躍らせながらその病室の戸を開けて見ると、室内は
闃
(
げき
)
として、子規居士が独り
寝台
(
ねだい
)
の上に横わっているばかりであった。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
しかし広大無辺の曠野には
闃
(
げき
)
として声なく、岩上の文字は『沈黙』というのであった。彼は
戦
(
おのの
)
き震え、
面
(
おもて
)
をそむけ、
愴惶
(
そうこう
)
として遠く逃げ去って、再び帰って来なかった
沈黙:——神話
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
日は
明
(
あか
)
くヱネチアの
市
(
まち
)
を照して、寺々の鐘は皆鳴り響けり。されど
街衢
(
がいく
)
は
闃
(
げき
)
として人影なきに似たり。
船渠
(
せんきよ
)
を覗へば、只だ一舟の
横
(
よこたは
)
れるありて、こゝにも人を見ざりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
月の光に
影
(
かげ
)
暗
(
くら
)
き、
杜
(
もり
)
の繁みを
徹
(
とほ
)
して、
微
(
かすか
)
に燈の
光
(
ひかり
)
見ゆるは、げに
古
(
ふ
)
りし庵室と覺しく、隣家とても有らざれば、
闃
(
げき
)
として死せるが如き夜陰の靜けさに、
振鈴
(
しんれい
)
の
響
(
ひゞき
)
さやかに聞ゆるは
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
其戸を
闚
(
うかが
)
へば
闃
(
げき
)
として其れ人
无
(
な
)
し、三歳
覿
(
み
)
えず、凶なりといふやうになつてしまふ。
震は亨る
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
賈慎庵は何でも
乾隆
(
けんりゆう
)
の末の老諸生の一人だつたと云ふことである。それが或夜の夢の中に大きい役所らしい家の前へ行つた。家は重門
尽
(
ことごと
)
く
掩
(
おほ
)
ひ、
闃
(
げき
)
としてどこにも人かげは見えない。
鴉片
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私の隣りの空ベッドのあたりが余計
闃
(
げき
)
として来た、私はキリギリス籠を思わせるベッド蚊帳におさまって、それでも病躯にちがいないまだ異和のある身を、眠りのなかに忘れて行った。
草藪
(新字新仮名)
/
鷹野つぎ
(著)
四隣
闃
(
げき
)
として物音がない。草庵の隅に据ゑてある小さい桶の中へ、いつものやうに点滴が落ちてゐる。外は霧が籠めて真つ闇になつてゐて雪も見えない。墓穴の中のやうな静けさである。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
寢る前の
平生
(
いつも
)
の癖で、竹山は窓を開けて、
煖爐
(
ストーブ
)
の火氣に鬱した室内の空氣を入代へて居た。
闃
(
げき
)
とした夜半の街々、片割月が雪を殊更寒く見せて、波の音が遠い處でゴウゴウと鳴つて居る。
病院の窓
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
観覧車も今は
闃
(
げき
)
として鉄骨のペンキも剥げて
赤鏽
(
あかさび
)
が吹き、土台のたたきは破れこぼちてコンクリートの砂利が
喰
(
は
)
み出している。殺風景と云うよりはただ何となくそぞろに荒れ果てた景色である。
障子の落書
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
これに対して、醤の陣営は、
闃
(
げき
)
として、
鎮
(
しず
)
まりかえっていた。
人造人間戦車の機密:――金博士シリーズ・2――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
闃
(
げき
)
として二人をつつむこの天地と一つになつた。
智恵子抄
(新字旧仮名)
/
高村光太郎
(著)
闃
(
げき
)
たる堂上とほりよく
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
また
旧
(
もと
)
の
境内
(
けいだい
)
の中央に立ちて、もの淋しく
瞶
(
みまわ
)
しぬ。山の奥にも響くべく
凄
(
すさま
)
じき音して堂の扉を
鎖
(
とざ
)
す音しつ、
闃
(
げき
)
としてものも聞えずなりぬ。
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
忽
(
たちま
)
ち鳥の奇声を聞く。再び
闃
(
げき
)
として声無し。熱帯の白昼、却つて妖気あり。
佇立
(
ちょりつ
)
久しうして覚えず肌に粟を生ず。その故を知らず」
云々
(
うんぬん
)
。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「まだ夜は深い。明けるには間もあり、城外の敵も、
闃
(
げき
)
として
密
(
ひそ
)
まりおれば、充分にお過ごしなされ。——お心おきなく」
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しばらく
闃
(
げき
)
として声はなく、ただ
萱
(
かや
)
の風に
靡
(
なび
)
く音のみがサヤサヤと私の耳についていたが、途端に
嗚咽
(
おえつ
)
の音が洩れて
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
一座
闃
(
げき
)
として声なく、ただ聞えるものは、白骨が打ち合うようなカラカラと鳴る玉の音ばかり。
ノンシャラン道中記:04 南風吹かば ――モンテ・カルロの巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
旅人のかへり行くあとを見送りて、ついまつの赤き光さへ見えずなりぬる時、あたりは
闃
(
げき
)
として物音絶えたり。この
遺址
(
ゐし
)
のうちには、耶蘇教徒が立てたる木卓あまたあり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
外には沒落の嵐吹き
荒
(
す
)
さみて、散り行く人の忙しきに、一境
闃
(
げき
)
として聲なき墓門の靜けさ、鏘々として響くは松韵、
戞々
(
かつ/\
)
として鳴るは聯珠、世の哀れに感じてや、鳥の歌さへいと低し。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
博士は
闃
(
げき
)
として、化石になりきっていた。
軍用鮫
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
滿天滿地、
闃
(
げき
)
として脈搏つ程の響もない。
葬列
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
門
(
かど
)
を叩けば
僕
(
しもべ
)
出で迎へて、あるじはおん身來まさば、
案内
(
あない
)
することを
須
(
もち
)
ゐざれと
宣給
(
のたま
)
ひぬといふ。そのさま吾が至るを
期
(
ご
)
したるに似たり。廣間には
幌
(
とばり
)
を
卸
(
おろ
)
して、
闃
(
げき
)
として物音を聞かず。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
夜は深沈と更けわたり、四辺
闃
(
げき
)
として、聞こゆるものは松吹く風の音ばかり。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
相変らず
闃
(
げき
)
とした深夜の廊下に、電灯のみが煌々と輝いているのを見ると、私は忍び込んだ男が、窓を破って二階から下へ飛び降りる以外にはどこからも逃げ出す口のないのを見定めておいて
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
闃
漢検1級
部首:⾨
17画
“闃”を含む語句
闃寂
闃然
闃乎
帳帷闃寂
幽闃
闃々沈々
闃寂閑