やつ)” の例文
「まあ隨分まごつきましたのい。いくら探してもこのうちが別らないで、この邊を幾度もぐるぐる𢌞つてやつとの事で探し出したんですのい。」
胡瓜の種 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
おまけやつと此の川下へ出たら、何うだえ貴方あんた此間こなひだ洪水みづましに流れたと見えて橋が無いといふ騒ぎぢやないか。それからまた半里はんみちも斯うして上つて来た。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『さァ、やつだい一のせつへた』と帽子屋ばうしやつて、『其時そのとき女王クイーンあがり、「とき打殺うちころしてるのはれだ!其頭そのあたまねてしまへ!」とさけびました』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
去年の末に幸ひ美奈子の長篇小説がなにがし新聞社へ買取られたので、其の稿料で大崎村の諸はらひとゞこほりやら麹町の新居の敷金やら引越料やらをやつすます事が出来た。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
入梅つゆになッてからは毎日まいにち雨降あめふりそれやつ昨日きのふあがツて、庭柘榴ざくろの花に今朝けさめづらしくあさひ紅々あか/\したとおもツたもつか午後ごゝになると、また灰色はいいろくもそら一面いちめんひろがり
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
二人はもう、身體も心も綿の如く疲れきつてゐて、晝頃何處やらで蕎麥を一杯宛食つただけなのに、燈火あかりがついて飯になると、唯一膳の飯をやつと喉を通した。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ほとんどくちくことも出來できませんでした、やつとのことで左手ゆんでかけすこしばかりみました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
二人はもう、身体も心も綿の如く疲れきつてゐて、昼頃何処やらで蕎麦を一杯宛食つただけなのに、燈火あかりがついて飯になると、唯一膳の飯をやつと喉を通した。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
最初さいしよやつと一二ふんかんそれをいてたのも、却々なか/\容易よういなことではありませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
やつ少許すこし入口のを開けては、種々いろんな道具の整然きちんと列べられたへやの中を覗いたものだ。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
行くときは壁や障子を伝つて危気あぶなげに下駄を穿つつかけたが、帰つて来てそれを脱ぐと、モウ立つてるせいがなかつた。で、台所の板敷をやつと這つて来たが、室に入ると、布団の裾に倒れて了つた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
其店そこの大きい姿見が、村中の子供等の好奇心を刺戟したもので、お定もよく同年輩の遊び仲間と一緒に行つて、見た事もない白い瀬戸の把手ハンドルを上にひねり下に捻り、やつ少許すこし入口の扉を開けては
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
取つたよ。だからやつと外へ出て來て探したけれども、遂々とう/\行方知れずさ。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
行くときは壁や障子を傳つてあぶな氣に下駄を穿つゝかけたが、歸つて來てそれを脱ぐと、もう立つてる勢ひがなかつた。で、臺所の板敷をやつと這つて來たが、室に入ると、布團の裾に倒れて了つた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)