うち)” の例文
切られた者の話によると、音も立てずに忍び寄つて、恐ろしい手際でうちに髷節を拂ひ、サツと風の如く飛去るらしいといふのです。
むかし小野浅之丞あさのじようといふ少年があつた。隣家となりの猫が度々たび/\大事なひなを盗むので、ある日築山つきやまのかげで、吹矢で猫をねらうちにした。
卑怯なとは汝のことだ。ひじ久八きゅうはちその他の身内をだまうちにした覚えがあろう。のみならず、生不動の冷飯食いの分際で、近ごろ侠客風を
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さても出来でかしたり黄金丸、また鷲郎も天晴あっぱれなるぞ。その父のあだうちしといはば、事わたくしの意恨にして、深くむるに足らざれど。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
それに連れて二人の助太刀も、同じ門下の兄弟子二人と知れましたが、それにしてもその返りうちにした片相手は何人なにびとであろう。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
新町河原しんまちがわらわきだまうちに渡邊様の子を殺して逃げたというんだが、大騒ぎよ、八州が八方へ手配りをしたが、山越やまごしをして甲府へへいったという噂で
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それを見ていた岡田弥市は何と思ったか、太刀を振りかぶってちょうど島田虎之助の背後うしろへ廻り、やッとおがうち
こゝ江戸えど新吉原町しんよしはらまち松葉屋半左衞門まつばやはんざゑもんかゝへ遊女いうぢよ瀬川せがはをつとかたきうちしより大岡殿の裁許さいきよとなり父の讐迄あだまでうち孝貞かうていの名をあらは而已のみ遊女いうぢよかゞみたゝへられそれため花街くるわ繁昌はんじやうせし由來を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「妹の仇敵を、兄が討てるか。仇敵うちの法に、目下めしたの仇敵を討つことは、禁じてあるぞ」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
わが国古来のいわゆる「かたきうち」とか、「仇討あだうち」とかいうものは、勿論それが復讎ふくしゅうを意味するのではあるが、単に復讎の目的を達しただけでは、かたき討とも仇討とも認められない。
かたき討雑感 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
こういう場合には、その以前から領主等が用いた策は、常にだまうちであった。
家の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「これで門出かどでさかずきはすんだ、出かけよう、油断して痴漢しれものうちもらすな」
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
まるでだましうちのように浮かんできたのだ。
秘密 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
切られた者の話によると、足音も立てずに忍び寄って、恐ろしい手際でうちに髷節を払い、サッと風の如く飛去るらしいというのです。
やい、臂の久八、荒神の十左、その他の駄武士ださんぴんもよっく聞け。よくも汝等うぬらは、生不動をだまうちにして縄張をりゃあがったな。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
間違えば間違うもので御座いまする……何でもその友川という若いお武家が、返りうちに会うた会うた。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かけやうやく敵をうちて候と申立しかば大岡殿不審ふしんに思はれ其方敵の面體めんていかね見覺みおぼえ居たるや覺束おぼつかなしと有しに瀬川せがは其事そのことは上方のきやく三人半左衞門へ金四百兩あづけ候とて證文しようもん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「魔者をうちもらしたか、あれは、お前さん達の手にはちょと合わないよ、眼に見えない電光いなずまひらめいて、二人は殺されてしまったな、かあいそうに、だが、銀色の眼のきろきろ光るがまは見たろうな」
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
見て汝は何者なるやわれ今宵こよひ此質屋へ忍び入り思ひのまゝぬすまんといま引窓ひきまどより這入はひりたるに屋根にて足音あしおとする故不思議ふしぎおも出來いできたりたり汝聲を立てなば一うちこほりの如きやいば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ち兼ねたよ。見事にかへうちさ、武家は苦手だ。町方の岡つ引なんか手を出すものぢやねえ」
だまうちに?
御鷹 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
間違ひにしろ氣狂ひにしろ、兎も角、罪の無い仲間を一人、だまうち同樣に殺したんでせう。