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荒寥
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こうりょう
ふりがな文庫
“
荒寥
(
こうりょう
)” の例文
それは本土との交通がほとんどなく、少数の貧しい漁夫たちが、所々の寂しい
山蔭
(
やまかげ
)
に住んでるような、暗く
荒寥
(
こうりょう
)
とした
島嶼
(
とうしょ
)
であった。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
この道を奥の方へと荷馬車の通うのにも
出逢
(
であ
)
ったが、人里がありそうにも思えない
荒寥
(
こうりょう
)
たる感じで、
陰鬱
(
いんうつ
)
な樹木の姿も粗野であった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そして
荒寥
(
こうりょう
)
たる土地のうえに落ちて来る暗澹たる夜の淋しさをひしひしと感じて、胸を
緊
(
し
)
められるような思いがするのだった。
初雪
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
その後では
万象寂
(
ばんしょうせき
)
として声なく、ひっそり静まりかえって呼べども答えぬ水面は、ひときわ怖ろしく、ひときわ
荒寥
(
こうりょう
)
たるものになってしまう。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
その
荒寥
(
こうりょう
)
とした眺めのなかの柱の周囲を
鴎
(
かもめ
)
の群が、大きな翼で自分の体をたたきながら、低く、高く、群れとんでいる。
南方郵信
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
▼ もっと見る
ところが——この一座に江戸ッ子が一人もいない、一座が
荒寥
(
こうりょう
)
として、悲哀を感じたのはこの時のことでありました。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
また、セント・ヘレナの島に
幽閉
(
ゆうへい
)
された
英雄
(
えいゆう
)
が、
荒寥
(
こうりょう
)
たる岩頭に立って、胸に雄志を
抱
(
いだ
)
きながら
大海原
(
おおうなばら
)
をながめやっている姿を見たこともあるのです。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
荒寥
(
こうりょう
)
としていたのは、西南戦争当時の薩摩の人心の情勢が今もなおほのかに残っている気がして、興味を感じた。
田原坂合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
目もはるかな
荒寥
(
こうりょう
)
たる曠野の土は、ひろびろと窮りない天空の下に、開拓、建設の鍬が、勇ましく雄々しく振われることを待っているように感じられた。
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
一首の意は、潮煙の立つ
荒寥
(
こうりょう
)
たるこの磯に、亡くなった妻の形見と思って来た、というのだが、句々緊張して然かも情景ともに哀感の切なるものがある。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
ただ
真
(
ま
)
っ
白
(
しろ
)
な
荒寥
(
こうりょう
)
とした
鉛色
(
なまりいろ
)
に
光
(
ひか
)
る
氷
(
こおり
)
の
波濤
(
はとう
)
が
起伏
(
きふく
)
していて
昼夜
(
ちゅうや
)
の
区別
(
くべつ
)
なく、
春夏秋冬
(
はるなつあきふゆ
)
なく、ひっきりなしに
暴風
(
ぼうふう
)
の
吹
(
ふ
)
いている
光景
(
こうけい
)
が
目
(
め
)
に
浮
(
う
)
かぶのでした。
台風の子
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「地大根」と称えるは、堅く、短く、
蕪
(
かぶ
)
を見るようで、
荒寥
(
こうりょう
)
とした土地でなければ産しないような野菜である。お雪はそれを白い「
練馬
(
ねりま
)
」に交ぜて買った。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
これ以上に痛ましくも
荒寥
(
こうりょう
)
とした
展望
(
パノラマ
)
は、どんな人間の想像でも決して思い浮べることができない。
メールストロムの旋渦
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
荒寥
(
こうりょう
)
とした高原の、
涯
(
はて
)
しない崖縁を、僕らは、どこへ行くとも知らず、とぼとぼと歩いていた。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
再び得難い天然を破壊し、失い易き歴史の
跡
(
あと
)
を一掃して、其結果に得る所は何であろう乎。殺風景なる境と人と、
荒寥
(
こうりょう
)
たる趣味の燃え
屑
(
くず
)
を残すに過ぎないのではあるまい乎。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
かれが心のはげしき戦いは昨夜にて終わり、今は
荒寥
(
こうりょう
)
たる戦後の野にも等しく、悲風
惨雨
(
さんう
)
ならび至り、力なく光なく望みなし。身も
魂
(
たま
)
も疲れに疲れて、いつか
夢現
(
ゆめうつつ
)
の境に入りぬ。
わかれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
空には雲の影さえなく、満月に近い月が寒々と輝き、前面の山々に異様な
隈
(
くま
)
を作っている。あたりは溢れるような虫の声、遙かに谷川のせせらぎの音、
荒寥
(
こうりょう
)
たる秋の夜景である。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
平生
(
ふだん
)
は
人気
(
ひとけ
)
も
稀
(
まれ
)
な
荒寥
(
こうりょう
)
とした野天に差し掛けの店が出来ているので、前の日の夜の十二時頃から熊手を
籠長持
(
かごながもち
)
に入れて出掛けるのですが、
量高
(
かさだか
)
のものだから、サシで
担
(
かつ
)
がなければなりません。
幕末維新懐古談:42 熊手を拵えて売ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
この
荒寥
(
こうりょう
)
たる大都会の夜景の中を、全人類を代表して自然の暴力に抵抗しようとしている人のように、吹雪を真正面に受けて、新橋から須田町の方角へ向かって歩いてゆく一点の人影があった。
犠牲者
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
夜寒
(
よさむ
)
の
代
(
しろ
)
に焼尽して、塚のしるしの小松もあらず……
荒寥
(
こうりょう
)
として砂に人なき
光景
(
ありさま
)
は、
祭礼
(
まつり
)
の
夜
(
よ
)
に地震して、土の下に埋れた町の、壁の肉も、柱の血も、そのまま一落の
白髑髏
(
しゃれこうべ
)
と化し果てたる趣あり。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
時刻も彼と同様、
陰鬱
(
いんうつ
)
だった。はるか下のほうには、タッパン・ジーの水が暗く、ぼんやり、
荒寥
(
こうりょう
)
とひろがり、陸のかげにしずかに
碇
(
いかり
)
をおろしている帆かけ舟の高い帆柱があちらこちらに見えていた。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
前に評釈した「
飛弾山
(
ひだやま
)
の
質屋
(
しちや
)
閉
(
とざ
)
しぬ
夜半
(
よわ
)
の冬」と同想であり、
荒寥
(
こうりょう
)
とした寂しさの中に、或る人恋しさの郷愁を感じさせる俳句である。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
春の花園のように、光と愛と美しさとに、
充
(
み
)
ちていた美奈子の心は、
此
(
こ
)
の
嵐
(
あらし
)
のために、吹き荒されて、跡には
荒寥
(
こうりょう
)
たる暗黒と悲哀の外は、何も残っていなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
さすがに門の外は、
荒寥
(
こうりょう
)
たる自然の山科谷だけれど、門の中には相当に手入れをした形跡はある。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
このあたりを取り巻いているものは、ひろびろとした
荒寥
(
こうりょう
)
たる
環境
(
かんきょう
)
ばかりでした。
乾
(
ひ
)
からびた
褐色
(
かっしょく
)
のヒースと、うす黒く
焦
(
こ
)
げた
芝草
(
しばくさ
)
が、白い
砂洲
(
さす
)
のあいだに見えるだけでした。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
彼が探していた質実な生活は彼の
周囲
(
まわり
)
に在った。
先
(
ま
)
ず彼は眼を開いて、この
荒寥
(
こうりょう
)
とした山の上を
眺
(
なが
)
めようとした。そして、その中にある
種々
(
いろいろ
)
な物の意味を自分に学ぼうとしていた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
人気も無い
荒寥
(
こうりょう
)
を極めた山坡に、見る眼も染むばかり
濃碧
(
のうへき
)
の其花が、今を盛りに咲き誇ったり、やゝ老いて
紫
(
むらさき
)
がかったり、まだ
蕾
(
つぼ
)
んだり、何万何千数え切れぬ其花が汽車を迎えては送り
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
畠
(
はたけ
)
の中にある田舎の家。外には木枯しが吹き渡り、家の周囲には、
荒寥
(
こうりょう
)
とした
畦道
(
あぜみち
)
が続いている。寂しい、孤独の中に
震
(
ふる
)
える人生の姿である。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
日が
荒寥
(
こうりょう
)
たる硫黄ヶ岳のかなたに落ち、唐竹の林に風が騒ぎ、名も知れない海鳥が鳴くときなど、灯もない小屋の中に
蹲
(
うずくま
)
っている俊寛に、身を裂くような寂しさが襲ってくる。
俊寛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
彼等は新しい大陸に足を立てゝ居る。彼等の過去は、彼船と共に夢と消ゆる共、彼等の現在は
荒寥
(
こうりょう
)
であるとも、彼等は
洋々
(
ようよう
)
たる未来を代表して居る。彼等は新世界のアダム、イヴである。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
暴風雨の朝、
畠
(
はたけ
)
の
作物
(
さくもつ
)
も吹き荒され、
万目
(
まんもく
)
荒寥
(
こうりょう
)
として枯れた中に、ひとり唐辛子の実だけが赤々として、昨日に変らず色づいているのである。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
あの満目
荒寥
(
こうりょう
)
たる無人の
曠野
(
こうや
)
を、汽車で幾日も幾日も走った後、漸く停車した沿線の一小駅が、世にも
賑
(
にぎ
)
わしく繁華な都会に見えるということだった。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
“荒寥”の意味
《名詞》
「荒涼」に同じ。
(出典:Wiktionary)
荒
常用漢字
中学
部首:⾋
9画
寥
漢検1級
部首:⼧
14画
“荒寥”で始まる語句
荒寥地