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やにさが
ふりがな文庫
“
脂下
(
やにさが
)” の例文
緑雨は恐らく最後のシャレの吐き
栄
(
ば
)
えをしたのを満足して、眼と
唇辺
(
くちもと
)
に会心の“Sneer”を
泛
(
うか
)
べて苔下にニヤリと
脂下
(
やにさが
)
ったろう。
斎藤緑雨
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
無事是貴人
(
ぶじこれきにん
)
とか
称
(
とな
)
えて、
懐手
(
ふところで
)
をして
座布団
(
ざぶとん
)
から腐れかかった尻を離さざるをもって旦那の名誉と
脂下
(
やにさが
)
って暮したのは覚えているはずだ。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
二人は恐る恐る霊公の顔色を
窺
(
うかが
)
った。二人の見出したものは、底意の無さそうな、唯淫らな、
脂下
(
やにさが
)
った笑い顔である。二人はホッと胸を
撫下
(
なでおろ
)
した。
妖氛録
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
外神田一番の味噌屋だから、越後屋の聟になれば人に後ろ指は差させない——などと良い心持さうに
脂下
(
やにさが
)
つて居たと苦々しく話してくれるのでした。
銭形平次捕物控:159 お此お糸
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
七兵衛も
呆
(
あき
)
れ
面
(
がお
)
です。すばしっこいのは今にはじめぬことだが、かくまで澄まし返って、
脂下
(
やにさが
)
っていられると
癪
(
しゃく
)
です。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
「為さあも、油屋の帳場に
脂下
(
やにさが
)
っているそうだで、まア当分東京へも出て来まい。」小父は笑いながら話した。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
こうしてああしてこうして、と独りほくほく
頷
(
うなず
)
きて、帳場に坐りて
脂下
(
やにさが
)
り、婦人を
窺
(
うかが
)
う曲者などの、
万一
(
もし
)
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
ることもやあらむと、内外に心を配りいる。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、大井も角帽をかぶったなり、ちょいと
顋
(
あご
)
でこの挨拶に答えながら、妙に
脂下
(
やにさが
)
った、
傲岸
(
ごうがん
)
な調子で
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私は内心大いに嬉しいのを我慢して、ニヤニヤしながら
脂下
(
やにさが
)
つてゐると、思ひなしかその女中は私の根切笹の紋を珍しさうに見てゐるやうなので、これには私も気が揉めたことであつた。
青春物語:02 青春物語
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「ふた流この石川に合し、つひに大に山門に
脂下
(
やにさが
)
る」といふ句は妙なり。
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
「
厭
(
いや
)
になってしまうな。分り切ったことを訊いて
脂下
(
やにさが
)
っている」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
パクリ/\
脂下
(
やにさが
)
りに呑んで居る。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「そウら見さっしゃい、印象派の表現派のとゴテ付いてるが、ゴークやセザンヌは
疾
(
と
)
っくに俺がやってる哩」とでも
脂下
(
やにさが
)
ってるだろう。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
脂下
(
やにさが
)
りの
煙管
(
きせる
)
、
日向
(
ひなた
)
ぼっこ、植木の世話と、ぬるい茶と、時々は縁側の柱にもたれて天文を案じながら、平次はこんな途方もないことを言うのです。
銭形平次捕物控:245 春宵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
市五郎は
焦
(
じ
)
れ気味で
独言
(
ひとりごと
)
を言っているに
拘
(
かか
)
わらず、自分は長火鉢の前へ
御輿
(
みこし
)
を据えて、悠々と
脂下
(
やにさが
)
っていました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
カーネーション、フリージヤの陰へ、ひしゃげた
煙管
(
きせる
)
を出して
点
(
つ
)
けようとしていたが、
火燧
(
マッチ
)
をパッとさし寄せられると、かかる騎士に対して、
脂下
(
やにさが
)
る次第には
行
(
ゆ
)
かない。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「何のことだか田舎者には分るめえ」と
脂下
(
やにさが
)
つてゐたところ、豈図らんや文藝部委員の一人がその詩の批評をし、べつたら市の解説までしたので、「一高にも少しは江戸ツ児がゐるんだな」と思つて
青春物語:02 青春物語
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
自分の手柄に
脂下
(
やにさが
)
る萬七に案内されて、兎も角も、引取手もなく、
筵
(
むしろ
)
を掛けたまゝにしてある二人の死骸を見ました。
銭形平次捕物控:091 笑い茸
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
お角よりも少し
後
(
おく
)
れてやって来た一人の男が、お角と並んだところに席をとり、そうして、いやにニヤニヤと
脂下
(
やにさが
)
りながら、高座の講釈師の
面
(
かお
)
をながめていることです。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
とかく世間を茶にして
浮世
(
うきよ
)
三
分
(
ぶん
)
五厘と
脂下
(
やにさが
)
るテンと面白
笑止
(
おか
)
しき道楽
三昧
(
ざんまい
)
に堕したからである。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
砥石
(
といし
)
を前に控えたは
可
(
い
)
いが、
怠惰
(
なまけ
)
が通りものの、
真鍮
(
しんちゅう
)
の
煙管
(
きせる
)
を
脂下
(
やにさが
)
りに
啣
(
くわ
)
えて、けろりと往来を
視
(
なが
)
めている、つい目と鼻なる敷居際につかつかと入ったのは、
件
(
くだん
)
の若い者、
捨
(
すて
)
どんなり。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
原田ばかりは嫌に
脂下
(
やにさが
)
ってスパ/\やって居る。
The Affair of Two Watches
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
眺めて
脂下
(
やにさが
)
るほどの人間には出來てゐねえが、續け樣に來た二本の手紙に、腑に落ちないことがあるのだよ。腹の減つた
序
(
ついで
)
に、その曲りくねつた梅の老木を
銭形平次捕物控:284 白梅の精
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
緑雨は定めし
苔
(
こけ
)
の下でニヤリニヤリと
脂下
(
やにさが
)
ってるだろう。だが、江戸の作者の伝統を引いた最後の一人たる緑雨の作は過渡期の
驕児
(
きょうじ
)
の不遇の悶えとして存在の理由がある。
斎藤緑雨
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
その絵の先生というのが
癪
(
しゃく
)
にさわるじゃないか、ぬけぬけと二階に納まって、女共にちやほやされながら、
脂下
(
やにさが
)
っている、色の
生
(
なま
)
ッ
白
(
ちろ
)
い奴、胸が悪くならあ——とがんりきは
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
袷
(
あわせ
)
の上に白の筒袖、仕事着の若いもの。かねて
誂
(
あつらえ
)
の
剃刀
(
かみそり
)
を、あわせて届けに来たと見える。かんぬしが
脂下
(
やにさが
)
ったという体裁、
笏
(
しゃく
)
の形の
能代塗
(
のしろぬり
)
の箱を
一個
(
ひとつ
)
、
掌
(
てのひら
)
に据えて、ト上目づかいに差出した。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
通人氣取りで
脂下
(
やにさが
)
つてゐる猅々のやうな小汚い野郎を縛りたいが、さうも行かないのが十手を預かる悲しさだ。
銭形平次捕物控:158 風呂場の秘密
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
上手に
拵
(
こしら
)
えるよりも上手に捨てるのが本当の色師だ、いい幸いでお譲りを受けて、
持余
(
もてあま
)
し
物
(
もの
)
をおっつけられて、それで色男で
候
(
そうろう
)
と
脂下
(
やにさが
)
っているには、がんりきは、こう見えても少し年をとり過ぎた
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
平次は
脂下
(
やにさが
)
りに噛んだ煙管をポンと叩くと、起き上がつてこの
茫
(
ばう
)
とした子分の顏を面白さうに眺めるのです。
銭形平次捕物控:164 幽霊の手紙
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そういうわけで、ニヤリニヤリと
脂下
(
やにさが
)
る好人物としての入道には幾分の親しみもあるが、人を
狎
(
な
)
れしめない圧迫感もある。それに、ムク犬というものが、お松の命令と意志を分身のようによく守る。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
でも半歳足らずで
鼬
(
いたち
)
の道ぢやありませんか、何處へ行つたかと思ふと、河岸まで同じお幾のところで、
脂下
(
やにさが
)
つて居たのもほんの二た月三月、近頃は素人衆がよくなつて
銭形平次捕物控:286 美男番附
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
とがんりきに
脂下
(
やにさが
)
られ、お蘭どの、眼尻が上ったり下ったりして
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
閉めきつた納戸の前に座布團を敷いて、少し
脂下
(
やにさが
)
りに安煙草の輪を吹いて居ります。
銭形平次捕物控:006 復讐鬼の姿
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
がんりきの百からこう
脂下
(
やにさが
)
られて、お蘭どのが今更のように
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
油障子を開けると三輪の萬七が、銀張りの煙管を
脂下
(
やにさが
)
りに、ニヤリニヤリしてゐるのです。その後ろには萬七の子分のお
神樂
(
かぐら
)
の清吉が、若い女を一人引据ゑて、
肩肘
(
かたひぢ
)
を張つてをります。
銭形平次捕物控:194 小便組貞女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
がんりきは長火鉢の前に
脂下
(
やにさが
)
って
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
パイプを
脂下
(
やにさが
)
りに
銜
(
くわ
)
えたままチェロを奏しているカサルスの写真を私はしばしば見受ける。あの
好々爺
(
こうこうや
)
然とした自由な態度は、やがて美しい音楽の流るるがごとく生れ出る原因でもあろう。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
女房に内證でお北を
口説
(
くど
)
き落し、内々
脂下
(
やにさが
)
つて居るところを、横合から浪人者本田劍之助に奪られ、内證事で表沙汰にもならず、さうかと言つて大金のかゝつた雇女を追ひ出す氣にもなれず
銭形平次捕物控:254 茶汲み四人娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
少し
脂下
(
やにさが
)
りに銀煙管を噛んで、妙に
含蓄
(
がんちく
)
の多い微笑を送ります。
銭形平次捕物控:007 お珊文身調べ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「路地の足跡や、川の中の短刀は皆んなその浪人が見付けてくれました。見掛けによらない才智者で、うんと
褒
(
ほ
)
めてやると、——こいつは
兵法
(
へいはふ
)
の一つだから、何んでもないよ、なんて
脂下
(
やにさが
)
つて居ましたが」
銭形平次捕物控:137 紅い扱帯
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
八五郎を出してやると、平次は又帳場に
脂下
(
やにさが
)
ります。
銭形平次捕物控:071 平次屠蘇機嫌
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
マドロスパイプを
脂下
(
やにさが
)
りにくわえて居ります。
古銭の謎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
脂
常用漢字
中学
部首:⾁
10画
下
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
“脂”で始まる語句
脂
脂肪
脂汗
脂粉
脂切
脂臭
脂肉
脂身
脂気
脂燭