うま)” の例文
その時一方の大きな丼鉢どんぶりばちへ上等の醤油しょうゆばかりいで今の湯煮た肉をぐに漬けておく。それが一日も過ぎると醤油が肉に浸みてうまい味になる。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
M君は食料品を大抵郷里から送らせてゐるほど郷土を愛してゐたが、彼自身はM君のやうに、総てのものがうまいと思ふほど主観的にはなれなかつた。
芭蕉と歯朶 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
英語のうちうまことばがある、日本の詩や歌にも美いのがあるけれども、私は今日卒業なされる方々にお別れの言葉として、私のごく好きな詩の一句がある
人格の養成 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
この辺で俗伝に安珍清姫宅に宿り、飯を食えばはなはうまし。ひそかにのぞくと清姫飯を盛る前必ずわんむる、その影行燈あんどんに映るが蛇の相なり。怪しみおそれて逃げ出したと。
世の中でうまい酒を飲んでる奴等は、金とか地位とか皆それ/″\に武器を持つて居るが、それを、その武器だけを持たなかつた許りにいくさがまけて、立派な男が柿色の衣を着る。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
あゝ有り難うござりますると喜び受けて此中の仕様を一所ひととこ二所ふたとこは用ひし上に、彼箇所は御蔭でうまう行きましたと後で挨拶するほどの事はあつても当然なるに、開けて見もせず覗きもせず
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
かつて皆川淇園みながわきえんは、酒数献にいたれるときは味なく、さかな数種におよぶときはうまみなく、煙草たばこ数ふくに及ぶときはにがみを生じ、茶数わんにおよぶときはかんばしからずと言ったが、誠にその通りで
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
とみに死んでけり、病める夫人は谷間へ下り立ち、糧にとて携えたる梨の実を土にうずめ、一念木となりて臨終の土に生いなむ、わがつまの御運ひらかずば、とこしえにうまを結ぶことなかるべしと
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
允文允武にまします歴代の天皇を御親みおやとし奉り、世界を「家」となす遠大な理想をかゝげ、赤子たるの光栄と本分とを忠誠の臣節に籠めて、ひたすら国運の発展と「うましき」国風くにぶりの充実に尽して来た
オンケーストス、聖なる地、ポセードーンのうまし森
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
うまし契のこまやかにたとしへもなきこのきざみ
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
薔薇さうびの、罌粟けしうまし花舞ひてぞ過ぐる
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
おもけてし常世邊とこよべの、うま黄金こがね
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
のぼりくるうまきみ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
うま追憶おもひで
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
世の中でうまい酒を飮んでゐる奴等は、金とか地位とか、皆それ/″\に武器を持つて居るが、それを、その武器だけを持たなかつた許りに戰がまけて、立派な男が柿色の衣を着る。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
あい宿しゅくとまでもいい難きところなれど、幸にして高からねど楼あり涼風を領すべく、うまからねど酒あり微酔を買うべきに、まして膳の上には荒川のあゆを得たれば、小酌しょうしゃくに疲れを休めて快く眠る。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼に與へり、豐沃の果樹と穀とのうまし地を。 195
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
そことも知らぬ靜歌しづうたうまし音色に
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
渚べをうまゑひならぬれ惑ひ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
來りてうまき酒に泣け
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
上戸じやうこも死ねば下戸も死ぬ風邪かぜ」で、毒酒のうまさに跡引上戸となつた将門も大酔淋漓たいすゐりんり島広山しまひろやまに打倒れゝば、「番茶にんで世を軽う視る」といつた調子の洒落しやれた将平も何様どうなつたか分らない。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
まだき滴る言の葉のうましにほひは
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
きたりてうまき酒に泣け
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
うましかをり
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あざるる木間こまのしたみちに、うまなみだ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
あざるる木間こまのした路に、うまし涙の
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
ひかりや、あめなるうまざし、——
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)