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給金
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きふきん
自分に
店を
張つて
註文を
取るほどの
資力はないまでも、
同業の
許に
雇はれて、
給金を
取らうなら、
恁うした
力業をするには
當らぬ。
羨まず
旦より
暮るまで
只管米を
搗一
粒にても
空にせず其勤め方
信切なりければ主人益々悦び多くの米も一向に
搗減なく取扱ひ夫より其年の
給金を
與吉が三つに
成つたのでおつぎは
他へ
奉公に
出すことに
夫婦の
間には
決定された。
其の
頃十五の
女の
子では一
年の
給金は
精々十
圓位のものであつた。
持せて
遣度者なれども知らるゝ如く我等は此家へ奉公はすれども
給金を取身分にも有ねば一兩の
工面も成難き夫故に
種々工夫せしに一ツの計略を
給金をのこらず
夜具にかける、
敷くのが
二枚、
上へかけるのが
三枚といふ
贅澤で、
下階の
六疊一杯に
成つて、はゞかりへ
行きかへり
足の
踏所がない。
そらなあ、
幾ら
勤めたつて
途中で
厭だからなんて
出つちめえば、
借りた
丈の
給金はみんな
取つくる
返えされんのよ、なあ、それから
泣き/\も
居なくつちやなんねえのよ
お
袋はお
品が
好いて
居るので、
勘次を
不足な
婿と
思つては
居なかつた。
勘次は
其暮も
亦主人へ
身を
任せる
筈で
前借した
給金を、お
品の
家へ
注ぎ
込んだのでお
袋は
却て
悦んで
居た。
憎みけるが或時
給金三兩を
田舍へ
遣はさんとて
手紙に
封じ
瀬戸物町の島屋へ
持行し
途中橋向ふにて
晝抅盜に
奪はれ
忙然として
立歸りしが
那の
金を取れては
又一年
餘の
奉公を爲ねばならぬと力を