破廉恥はれんち)” の例文
ましてや、梅雪入道ばいせつにゅうどうは、武田家譜代たけだけふだいしんであるのみならず、勝頼かつよりとは従弟いとこえんさえある。その破廉恥はれんちは小山田以上といわねばならぬ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
拘引理由は「合衆国が条約関係を結んでいない国土に対する不法にして破廉恥はれんちなる遠征ならびに暴行のかどにより」というのだった。
撥陵遠征隊 (新字新仮名) / 服部之総(著)
「わたしはあなたが……破廉恥はれんちな人だってことは知っていますけれど、少しも恐れてなんかいませんわ。どうぞ先へいらしてください」
しかも、忽ち、父の選んでくれた私の妻の破廉恥はれんちな行爲は、父にとつてもあの女を嫁と呼ぶのを恥ぢるやうなものだつたのです。
日本では何百年かにわたって、裸体を無作法とは思わないのであるが、我々はそれを破廉恥はれんちなこととみなすように育てられて来たのである。
相も変らず酔いどれて、女房に焼きもちを焼いて、破廉恥はれんちの口争いをしたりして、まるで地獄だ。しかし、これもまた僕の現実。ああ、眠い。
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ばかめ破廉恥はれんちめ、そんな事ができるか、ああいやだ、けれどおとよさんはどこまでも悪い人ではない、憎い女ではない、憎いどころではない
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
俺は鏡の中のみにくく歪んだ自分の顔を睨んだ。ひどく破廉恥はれんちなことがしてみたいという砂馬に俺は賛成して、破廉恥なことをするためにここへ来たのだ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
「あの怪人めが屍体にたかって、また破廉恥はれんちなことをやっているのだな。よオし、どうするか、いまに見ていろ!」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そもそも内行の不取締は法律上における破廉恥はれんちなどとは趣をことにして、直ちにとがむべき性質のものにあらず。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
とらへてくれう。……やい、モンタギューめ、破廉恥はれんち所行しょぎゃうめい。うらみ死骸むくろにまでおよぼさうとは、墮地獄だぢごく人非人にんぴにんめ、引立ひきたつる、尋常じんじゃういてい。けてはおかぬぞ。
婦女を誘拐ゆうかいした愚劣漢であると同時に、二重結婚までした破廉恥はれんち極まる人非人……。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
破廉恥はれんち所為しょいえてするに至りしを思い、かかる私欲のちたる人にして、如何いかで大事を成し得んと大いに反省する所あり、さてこそ長崎において永別の書をば葉石に贈りしなれ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
己はむしろ、時にはあの女に憎しみさえも感じている。殊に万事がおわってから、泣き伏しているあの女を、無理に抱き起した時などは、袈裟は破廉恥はれんちの己よりも、より破廉恥な女に見えた。
袈裟と盛遠 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
幹太郎は、その時、親爺の破廉恥はれんちさ加減に、暫らく唖然とした。二人の兄弟だけになら、まだ我慢が出来た。ところが、親爺は貰って四月しか経たないトシ子にも、平気の皮で云いつけた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
破廉恥はれんちな事をしたのではない。俺は何の罪を犯したと云うのではない。」
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
どうだ、衆目の見る処、貴様は国体のいかんを解さない非義、劣等、怯奴きょうどである、国賊である、破廉恥はれんち、無気力の人外である。みんなが貴様をもって日本人たる資格の無いものと断定したが、どうだ。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
談話は真面目まじめにかつ烈しかった。父親はその破廉恥はれんちあえて正面から責めはしないが、おりおりにがい皮肉をその言葉の中に交えた。初めは時雄が口を切ったが、中頃からおもに父親と田中とが語った。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
昨日きのうまではともかく紳士として通っていた私の醜悪極まる正体はこれによって今日完全に暴露されるのだ。しかしこの暴露にさきだって私は私の破廉恥はれんち極まる存在を宇宙間に無くしておかねばならない。
秘密 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
「いくら破廉恥はれんちでも淫売婦のびきじゃないのよ。」
女百貨店 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
「何? 破廉恥はれんち漢、泥酔漢!」
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
破廉恥はれんち市井しせい売文のともがら、あさましとも、はずかしとも、ひとりでは大家のような気で居れど、誰も大家と見ぬぞ悲しき。
あさましきもの (新字新仮名) / 太宰治(著)
砂馬のあの悪遊びだって、旧道徳の眼からすれば、破廉恥はれんち極まるものかもしれないが、あれを俺は、旧道徳にくみして、指弾しだんすることはできないのだ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
にせ小次郎となってうろついていた頃の自分の姿が——今になると、浅ましくもあり、何たる懶惰らんだな、破廉恥はれんちなと、身ぶるいが出るほどにがく思い出された。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただその心中におもえらく、内行の不取締、醜といわるれば醜なれども、詐偽さぎ破廉恥はれんちにはあらず、また我が一身の有様はおのずから人に語るべからざる都合もあることなるに
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
小人こびとの智慧と巨人の性癖とを彼女は持つてゐたことか! その性癖が私の上にかけた呪ひは何といふ恐ろしいものだつたか! 破廉恥はれんちの母親の本當の娘、バァサ・メイスンは
わたしは最近そのことをある立派な人から聞いたので、その人に身を任せ、一緒に共産団を組織することにしました。あなたをだますのは破廉恥はれんちなことと思いますから、率直に申します。
(こういう破廉恥はれんちな人間は、腹いっぱい慾を満たさせ、生命いのちの保証さえしておいてやれば、どんな忍耐もしていている)ことを充分にぬいて飼っていたのである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
破廉恥はれんちであると思った。不倫でさえあると考えた。行こうか行くまいか、さんざ迷った。行くことにきめた。約束を平気で破れるほど、そんなに強い男爵ではなかった。
花燭 (新字新仮名) / 太宰治(著)
恥知らずになるために、みずからをそうして鍛錬しているかのようだった。破廉恥はれんちをみずからのうちに養成するために、そうして醜態をさらけ出しているかのようだった。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
随分ずいぶん家風の悪くない家に生れて、幼少の時から心正しき母に育てられて、いやしくも人にまじわっむさぼることはしないと説を立てゝ居る者が、何故に藩庁に対してばかりくまでに破廉恥はれんちなりしや
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「不義、破廉恥はれんち、云いようもなき人非人ひとでなしの袁紹、いずこにあるぞ。——恥を知らばでよ」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうして帰りに、破廉恥はれんちな事を僕にささやいた。僕が笑ってお断り申したら、扇之介のいわ
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「なんでも、大衆大衆と、庶民の低いほうへばかりびている俗教だからな。——しかし、法然はとにかく、綽空のような、いやしくも北嶺ほくれいの駿足といわれた者が、なんたる破廉恥はれんちか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
霊魂を毛唐に売り渡す破廉恥はれんち至極の所業であるとされて、社会のはげしい侮蔑ぶべつと排斥を受けなければならなかったが、自分たちは、てんで気にせず、平然とその悪魔の洞穴どうけつ探検を続けた。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
あいつのは、幕府を売り、父を殺し、知己親戚をおとし入れ、罪きにもあたいする。貴様の破廉恥はれんちとは、同じ武士道はずれでも、けたが違う。幕臣として俺はあの異端者を斬りに来たのだ。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私も若干馬齢ばれいを加えるに及び、そのような風変りの位置が、一個の男児としてどのように不面目、破廉恥はれんちなものであるかに気づいていたたまらなくなりまして、「こぞの道徳いまいずこ」という題の
男女同権 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ころされる日を待ち切れず、われからすすんで命を断とうと企てた。衰亡のクラスにふさわしき破廉恥はれんち頽廃たいはいの法をえらんだ。ひとりでも多くのものに審判させ嘲笑させ悪罵あくばさせたい心からであった。
狂言の神 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「……さもなくてさえ、土豪という家門のかなしさには、蜂須賀一族もまた、野盗の野武士ずれや、破廉恥はれんちな浮浪人どもと同視されて、この小六正勝の耳にすら——あれは野武士の頭目と——世上の声が、まま聞えてくる折も折」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)