白浪しらなみ)” の例文
そして、汽船きせんぎたあとには、しばらく白浪しらなみがあわだち、それもしずまると、海草かいそうがなよなよと、緑色みどりいろはたのごとくなごやかにゆれるのでありました。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
あと白浪しらなみの寄せては返す、なぎさ長く、身はただ、黄なる雲をむかと、もすそも空に浜辺を引かれて、どれだけ来たか、海の音のただ轟々ごうごうと聞ゆるあたり。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しがない白浪しらなみの下ッにしろ、剣といえば日本のほこりと合点し、伊勢の玉纏横太刀たまきのたちや天王寺の七星剣などの古事ふるごとはとにかくとして、天国あまくに出現以来の正宗まさむね義弘よしひろ国次くにつぐ吉平よしひら
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この歩き方は忍術しのびの骨法だ。……これはおかしい。不思議だな。まさかおいらと同じように、金を目掛けて忍び込んだ、白浪しらなみの仲間でもあるまいが。……いや全くこれは不思議だ。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あのばけ物は、おいらが、江戸で名代の女白浪しらなみだと、まさか気がついてはいなかったろうが、贅六ぜいろく風情ふぜいに、邪魔立てをされて、このまま引ッ込んでいたんじゃあ、辛抱がならぬ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
初君が哥に「ものおもひこしうら白浪しらなみも立かへるならひありとこそきけ」此哥吉瑞きちずゐとなりてや、五年たちてのち嘉元かげん元年為兼卿皈洛きらくありて、九年ののち正和元年玉葉集ぎよくえふしふえらみの時
この外『新古今』の「入日いりひをあらふ沖つ白浪しらなみ」「葉広はびろかしはに霰ふるなり」など、または真淵まぶちわしあらし粟津あわづ夕立ゆうだちの歌などの如きは和歌の尤物ゆうぶつにして俳句にもなり得べき意匠なり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
つきのおくまとは、詰者つめもの白浪しらなみの深きたくみにあたりしはのちの話のたねしまあぶないことで……(ドン/\/\/\はげしき水音みづおと)あつたよなア——これでまづ今晩こんばんはこれぎり——。
士族の乳貰ちちもらい按摩あんま白浪しらなみ、天狗の生酔、娼妓の貞節、楠公の奇計という六題を五幕の世話狂言に脚色したもので、その正本しょうほんは——その頃は脚本とはいわない、無論に戯曲などとはいわない
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この女こそ箱師のお玉といって名打ての女白浪しらなみだ。東京で警視庁に上げられるたびに、吾輩から感想を話させられた女だ。この女の身の上話を雑誌にヨタッたお蔭で吾輩は多量の原稿を稼いでいる。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おめき叫び給えども、ぎ行く船のならいにて、跡は白浪しらなみばかりなり。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と一思案しあんして其場へ捨置すておき是が後日の狂言きやうげんかうして置ば大丈夫と彼藤崎道十郎がわすれて行し傘を死骸しがいわき投捨なげすてあと白浪しらなみと我が家なる麹町へぞ急ぎける爰に武州なる品川宿といふは山をうしろにし海を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なぎさには白浪しらなみの寄るところ見えこの高きより見らくしよしも
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
下には荒れ狂う白浪しらなみが野獣が牙をむいたようになっていた。
飛行機に乗る怪しい紳士 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「拙者を白浪しらなみ仲間とでも感違いを致したのか」
怪異暗闇祭 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
白浪しらなみ四人男じゃねえか」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
初君が哥に「ものおもひこしうら白浪しらなみも立かへるならひありとこそきけ」此哥吉瑞きちずゐとなりてや、五年たちてのち嘉元かげん元年為兼卿皈洛きらくありて、九年ののち正和元年玉葉集ぎよくえふしふえらみの時
またある時は二つの船は互いに遠く乗り放し矢合わせをして戦った。闇の夜にはかがりき、星明りには呼子よびこを吹き、月の晩には白浪しらなみを揚げ、天竜の流れ遠州えんしゅうなだを血にまみれながらただよった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お家騒動の狂言の金主になって、かつて儲けた経験のあるものは、今度も何かお家騒動の狂言を出してくれという。白浪しらなみ物の狂言で当てたものは、今度もなにか泥坊物をえらんでくれと註文する。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
自分がたたずんでいた七八間さきの、切立きったてに二丈ばかり、沖から燃ゆるようなくれないの日影もさせば、一面には山の緑が月に映って、練絹ねりぎぬを裂くような、やわらか白浪しらなみが、根を一まわり結んじゃ解けて拡がる
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どこったって、べら棒め、白浪しらなみの行く先がいえるもんけ」
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鴨山かもやま滝津たきつ白浪しらなみさにつらふをとめと二人見れど飽かぬかも
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)