男子をとこ)” の例文
スキンナアは狂人きちがひと見違へられたのだ。だが、怒るにも及ぶまい、すべての女は自分の亭主以外の男子をとこは大抵狂人きちがひか馬鹿だと思つてゐるのだから。
其後そのあと自轉車隊じてんしやたいて、居合ゐあはせた農夫のうふに、二人連ふたりづれの、人相にんさうわる男子をとこが、此邊このへんをうろ/\してなかつたかとうてると、農夫のうふすこぶふるつたこたへをした。
蒲田屋かばたやおくかざつてあるやうな本當ほんたうのを、おもくてもかまいはしない、やつちよいやつちよいわけなしだと鉢卷はちまきする男子をとこのそばから、れではわたしたちがつまらない
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一體いつたい若旦那わかだんなは、やしき河下三里かはしもさんりばかりのところに、ながれのぞんだ別業べつげふがあるのを、元來ぐわんらいいろこのめる男子をとこ婦人ふじん張氏ちやうし美而びにしてなりとふので、浮氣うはきをする隱場處かくればしよにして、別業べつげふ
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
如何いかなる人でも境遇につと云ふことは余程困難ですから、私は日本の様な不道徳な社会にる婦人は、とても男子をとこから報酬を望むことは断念せねばならぬと思ひますの
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
まあ、お志保を通して想像した母親の若い時のおもかげうであつた。快活な、自然な信州北部の女の美質と特色とは、矢張丑松のやうな信州北部の男子をとこの眼に一番よく映るのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
やうや鐵條網てつでうもうそとからお賽錢さいせんげたのを、へん男子をとこがノコ/\て、敬禮けいれいず、無遠慮むゑんりよに、あなはいつて加之あまつさへ賽錢さいせんんだのだから、先方せんばうになるとはらつのももつとも千ばん
少くとも顎髯のないものは、戦争の洗礼を受けなかつた者として、婦人をんな達からさげすまれるに相違ない。婦人をんなに蔑まれまい為には、男子をとこといふ男子をとこは、蛙の様にとんぼ返りまでもするものである。
せてかほりもわか中村なかむら園田そのだ宿やどあり園田そのだ主人あるじ一昨年をとゞしなくなりて相続さうぞく良之助りやうのすけ廿二の若者わかもの何某学校なにがしがくかう通学生つうがくせいとかや中村なかむらのかたにはむすめ只一人たゞひとり男子をとこもありたれど早世さうせいしての一つぶものとて寵愛ちやうあいはいとゞのうちのたまかざしのはなかぬかぜまづいとひてねがふは
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大道だいどうのまん中で風にられた帽子を追つかけるのは、男子をとこが全力を尽してやるべき真面目な大事業だと言つたが、世の中に帽子ほどよく転がり、帽子ほどよくひとのと間違へられるものはない。
男子をとこが六時間、女子をんなが八時間、そして馬鹿者が十時間。」