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生家
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さと
ふりがな文庫
“
生家
(
さと
)” の例文
隣宿
妻籠
(
つまご
)
の本陣には寿平次がこの
二人
(
ふたり
)
を待っていた。その日は半蔵も妻籠泊まりときめて、一夜をお民の
生家
(
さと
)
に送って行くことにした。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
生家
(
さと
)
では二三年のあいだ家を離れて、
其方
(
そっち
)
こっち放浪して歩いていた兄が、
情婦
(
おんな
)
に
死訣
(
しにわか
)
れて、最近にいた千葉の方から帰って来ていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それから満枝は益す禿の
寵
(
ちよう
)
を得て、内政を自由にするやうになつたから、定めて
生家
(
さと
)
の方へ
貢
(
みつ
)
ぐと思の外、
極
(
きめ
)
の
給
(
もの
)
の外は
塵葉
(
ちりつぱ
)
一本
饋
(
や
)
らん。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
生家
(
さと
)
と縁故のある産婆が、遠い所から
俥
(
くるま
)
に乗って時々
遣
(
やっ
)
て来た。彼はその産婆が何をしに来て、また何をして帰って行くのか全く知らなかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私
(
わたくし
)
の
生家
(
さと
)
でございますか——
生家
(
さと
)
は
鎌倉
(
かまくら
)
にありました。
父
(
ちち
)
の
名
(
な
)
は
大江廣信
(
おおえひろのぶ
)
——
代々
(
だいだい
)
鎌倉
(
かまくら
)
の
幕府
(
ばくふ
)
に
仕
(
つか
)
へた
家柄
(
いえがら
)
で、
父
(
ちち
)
も
矢張
(
やは
)
りそこにつとめて
居
(
お
)
りました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
▼ もっと見る
「
嚊
(
かかア
)
かね」と、善吉はしばらく黙して、「宿なしになッちあア、夫婦揃ッて
乞食
(
こじき
)
にもなれないから、
生家
(
さと
)
へ返してしまッたんだがね……。ははははは」
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
然
(
そ
)
うでない、只
主
(
しゅう
)
家来で居ちゃアいかん、己は百石頂戴致す身の上だから、己が
生家
(
さと
)
になって貴様を一人前の侍に取立ってやろう、
仮令
(
たとえ
)
当家の内でなくとも
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
しかもお
生家
(
さと
)
が並々ならぬ大身なる処より、
嬶
(
かゝあ
)
天下の我儘一杯にて、継子
苛
(
いぢ
)
めの噂もつぱらなる家なり。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
環が、家出したなら、では
生家
(
さと
)
へ入れようとは、何うしても真雄として云えない理由が、もひとつある。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そなたは思いあたりなされますぞえ——この
生家
(
さと
)
に、いつまでも日を消していたなれば、御殿から、かえれ、もどれと、申して来るは知れたこと——現に今日も、重役の老女が見舞に見えられて
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
お雪はしばらく
生家
(
さと
)
へも書かなかった。この母からの便りは彼女に
種々
(
いろいろ
)
なことを思わせた。お雪は、母の手紙を顔に押当てて、泣いた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
生家
(
さと
)
の
居周
(
いまわり
)
にある昔からの知合の家などであったが、受けて来る仕事は、大抵
詰襟
(
つめえり
)
の労働服か、自転車乗の
半窄袴
(
はんズボン
)
ぐらいのものであった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
閑
(
ひま
)
ある身なれば、宮は月々
生家
(
さと
)
なる両親を見舞ひ、母も同じほど
訪
(
と
)
ひ音づるるをば、
此上無
(
こよな
)
き隠居の保養と為るなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
二人の間柄がすれすれになると、細君の心は段々
生家
(
さと
)
の方へ傾いて行った。生家でも同情の結果、
冥々
(
めいめい
)
の
裡
(
うち
)
に細君の肩を持たなければならなくなった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その柿は、
土地
(
ところ
)
の
風習
(
しきたり
)
にしたがって、彼女が楠木家へ
嫁
(
か
)
す日に、
生家
(
さと
)
から苗を移して来たものなのだ。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すき好んで名代部屋に
戦
(
ふる
)
えてるたア知らなかろう。さぞ恨んでるだろうなア。店も
失
(
な
)
くした、お千代も
生家
(
さと
)
へ返してしまッた——可哀そうにお千代は生家へ返してしまッたんだ。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
これはすでに
妻籠
(
つまご
)
の旧本陣でも始めている自給自足のやり方で、彼女はその
生家
(
さと
)
で見て来たことを馬籠の家に応用したのであった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
おとら夫婦は、金ができるにつれて、それ等の人達との間に段々隔てができて、
往来
(
ゆきき
)
も絶えがちになっていた。
生家
(
さと
)
とも
矢張
(
やっぱり
)
そうであった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
生家
(
さと
)
なる
鴫沢
(
しぎさわ
)
にては薄々知らざるにもあらざりしかど、さる
由無
(
よしな
)
き事を告ぐるが如き
愚
(
おろか
)
なる親にもあらねば、宮のこれを知るべき
便
(
たより
)
は絶れたりしなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
健三は小供の時分
能
(
よ
)
く聞かされた彼女の
生家
(
さと
)
の話を思い出した。
田舎
(
いなか
)
にあったその
住居
(
すまい
)
も庭園も、彼女の叙述によると、善を尽し美を尽した立派なものであった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お民の方でも、それを
生家
(
さと
)
の人たちの耳に入れるだけにとどめて、おばあさんや兄の知恵を借りに来たとはまだ言い出せなかった。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
名古屋へ行こうか、それともこの際……いっそ自分の
生家
(
さと
)
の方へ帰って
了
(
しま
)
おうか、と彼女は叔父の家の門へ行くまでも思い迷った。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
お種がまだ若くて、自分の
生家
(
さと
)
の方に居た娘の頃——丁度橋本から縁談のあった当時——あの頃は、父が居た、母が居た、
老祖母
(
おばあさん
)
が居た。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その夏、彼は妻の
生家
(
さと
)
の方まで遠く行く積りで、名倉の両親を始め、多くの家族を訪ねようとして、
序
(
ついで
)
に
一寸
(
ちょっと
)
東京へ立寄ったのであった。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
別れるのは
反
(
かえ
)
ってお互の為だ、そんなことをおせんに言い聞かせて、
生家
(
さと
)
の方へ帰してやった。大塚さんはそれも考えて見た。
刺繍
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「鈴木さんはまだ
旅舎
(
やどや
)
に逗留して居るんださうだなあ。あんなに長くなるんなら、叔母さんの
生家
(
さと
)
へ紹介して遣るんだつた。」
出発
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
と言って来ますし……
生家
(
さと
)
の母からは、また……是非
是方
(
こっち
)
へ帰って来いなんて……
真実
(
ほんと
)
に、親達は、
先
(
ま
)
ず自分の子の方のことを考えてますよ。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
馬籠にある彼女の
生家
(
さと
)
も変わった。彼女は
旧
(
ふる
)
い屋敷の内の裏二階まで行って、久しぶりで祖母のおまんや
嫂
(
あによめ
)
のお
槇
(
まき
)
と一緒になることができた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
馬籠から妻籠まで行って、彼はお民の
生家
(
さと
)
へ顔を出し、王滝行きの用件を寿平次にも含んで置いてもらって、さらに踏み慣れた街道を奥筋へと取った。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
生家
(
さと
)
を見慣れた目で、この街道に
生
(
は
)
えたような家を見ると、お民にはいろいろな似よりを見いだすことも多かった。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そうだ、おせんは身に覚えが無いと言って泣いたりしたが、
終
(
しまい
)
には観念したと見え、紅く泣
腫
(
はら
)
した顔を揚げて、
生家
(
さと
)
の方へ帰れという夫の言葉に
随
(
したが
)
った。
刺繍
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「兄さんは
矢張
(
やつぱり
)
叔母さんの
生家
(
さと
)
へ知らずに買物に行つたのよ。三度も。なんでもハイカラな娘が居たなんて——
必
(
きつ
)
とお
君
(
きみ
)
さん(叔母さんの
姪
(
めひ
)
)のことよ。」
出発
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
こんなことで、お民はそこそこに
戻
(
もど
)
りのしたくした。馬籠の方に彼女を待つ夫ばかりでなく、娘のことも心にかかって、そう長くは
生家
(
さと
)
に
逗留
(
とうりゅう
)
しなかった。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
久し振で
生家
(
さと
)
へ帰る妻の為にと思って、三吉は名倉の娘達の
許
(
もと
)
へ何か荷物に成らない物を見立てようとした。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
遠く北海道の方に住む園子の
生家
(
さと
)
の人達の耳にまでも伝わる時があるとしたら。直接に自分の
行為
(
おこない
)
に関係の無い人達のことを考えたばかりでもこの通りであった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
娘お
粂
(
くめ
)
の縁談に関する件で、かねて伊那の南殿村、
稲葉
(
いなば
)
という家は半蔵が継母おまんの
生家
(
さと
)
に当たるところから、おまんの世話で、その方にお粂の縁談がととのい
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
こんな話をしているところへ、
生家
(
さと
)
の親たちを見に来る上の伏見屋のお喜佐、半蔵夫婦を見に来る
乳母
(
うば
)
のおふき
婆
(
ばあ
)
さん、いずれも立ち
退
(
の
)
き先からそこへ一緒になった。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
いづれ下高井にある
生家
(
さと
)
を指して、三人だけ子供を連れて、父の留守に家出をしたものらしい。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
その上に兄が二人あつて、一人は母の
生家
(
さと
)
の方へ養子に參りました。一番
年長
(
うへ
)
が姉です。姉は私がまだ極く幼少い時に嫁に行きましたから、殆んど
吾家
(
うち
)
に居たことは覺えません。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
何を隠さう——丑松が今指して行く塚窪の家には、
幼馴染
(
をさななじみ
)
が
嫁
(
かたづ
)
いて居る。お妻といふのが其女の名である。お妻の
生家
(
さと
)
は姫子沢に在つて、林檎畠一つ
隔
(
へだ
)
てゝ、丑松の家の隣に住んだ。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
そここゝの樹の下に
雄雌
(
をすめす
)
の鶏、土を浴びて
静息
(
じつ
)
として
蹲踞
(
はひつくば
)
つて居るのは、大方羽虫を振ふ為であらう。丁度この林檎畠を隔てゝ、向ふに
草葺
(
くさぶき
)
の屋根も見える——あゝ、お妻の
生家
(
さと
)
だ。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
それから四五日の間を、お節はお婿さんと一緒に新婚の旅で暮して、お婿さんの
生家
(
さと
)
の方にも居て、復た一旦東京の方へ引返して来た。
最早
(
もう
)
お婿さんでも無かつた。旦那さんで
可
(
よ
)
かつた。
出発
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
あらかたは
生家
(
さと
)
の方へ返し、形見として郷里の姉へも分け、根岸の
嫂
(
あによめ
)
にも
姪
(
めい
)
にも分け、山の方にある知人へも分け、生前園子が懇意にしたような人達のところへは大抵分けて配ってしまって
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
“生家”の意味
《名詞》
生 家(せいか)
その人の生まれた家。
(出典:Wiktionary)
生
常用漢字
小1
部首:⽣
5画
家
常用漢字
小2
部首:⼧
10画
“生家”で始まる語句
生家方