珊瑚珠さんごじゅ)” の例文
珊瑚珠さんごじゅは沢山輸入されて居るが日本のように無瑕むきずの物は少なく虫のったような物が多い。それでもチベット人は好んで付けます。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
まだ一度も過ちを犯さなかったというわけではない。もう今では二年ばかり前、珊瑚珠さんごじゅなどを売る商人の手代てだいと僕等をあざむいていたこともある。
第四の夫から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
木綿縞もめんじまにジミな帯もいつに変らず、よそおいもなく巻いた髪には、一粒の珊瑚珠さんごじゅだけがあかかったけれど、わずかなうちに、けずったようなやせがみえる。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その席へ幇間ほうかんが一人やって来て言うことには、ただいませつは、途中で結構なお煙草入の落ちていたのを見て参りました、金唐革きんからかわ珊瑚珠さんごじゅ緒〆おじめ
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは、山中の樹の下に生える一種のひょろひょろした樹で小さな珊瑚珠さんごじゅみたいなあかい実がなる、普通みな「老弗大」と呼んでいるものだ、と教えてくれた。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
握飯にぎりめしほどな珊瑚珠さんごじゅ鉄火箸かなひばしほどな黄金脚きんあしすげてさゝしてやりたいものを神通じんつうなき身の是非もなし、家財うっ退けて懐中にはまだ三百両あれどこれ我身わがみたつもと
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
大番頭夫人は、小さな丸髷まるまげとはつりあわない、四分玉の珊瑚珠さんごじゅの金脚で、髷の根をきながらいった。
いずれは堆朱ついしゅか、螺鈿らでん細工のご名品にちがいないが、それに珊瑚珠さんごじゅの根付けかなんかご景物になっていたひにゃ、七つ屋へ入牢にゅうろうさせても二十金どころはたしかですぜ。
物馴れない純一にも、銀杏返いちょうがえしに珊瑚珠さんごじゅ根掛ねがけをした女が芸者だろうということだけは分かった。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
これはちょっとさびしい人通りのまばらな、深川の御船蔵前とか、浅草の本願寺の地内とかいう所へ、小さい菰座こもざを拡げて、珊瑚珠さんごじゅ銀簪ぎんかん銀煙管ぎんギセルなんかを、一つ二つずつ置いて
江戸か東京か (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
さっと揺れ、ぱっと散って、星一ツ一ツ鳴るかとばかり、白銀しろがね黄金こがね、水晶、珊瑚珠さんごじゅ透間すきまもなくよろうたるが、月に照添うに露たがわず、されば冥土よみじの色ならず、真珠のながれを渡ると覚えて
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お村の姿なりは南部の藍の乱竪縞らんたつじま座敷着ざしきぎ平常着ふだんぎおろした小袖こそでに、翁格子おきなごうし紺繻子こんじゅすの腹合せの帯をしめ、髪は達摩返しに結い、散斑ばらふくし珊瑚珠さんごじゅ五分玉ごぶだまのついた銀笄ぎんかんし、前垂まえだれがけで
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
湯治場へおくってくれた大阪の嫂に土産みやげにするつもりで、九州にいるその嫂の叔母から譲り受けて来て、そのままかばんの底にひそめて来た珊瑚珠さんごじゅの入ったサックを、机の抽斗ひきだしから出してお銀にやった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
山にあった三吉の家から根分をして持って来た谷の百合には赤い珊瑚珠さんごじゅのような実が下っていた。こうして、花なぞを植えて、旧い家を夢みながら、未だお種は帰らない夫を待っているのであった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それからその真珠しんじゅの紐の真中には大真珠あるいは(緑玉)を入れて飾りにしてある。で頭の頂には高価な珊瑚珠さんごじゅ、真珠等で飾られてある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
たった一粒身に着いていた珊瑚珠さんごじゅも、小間物屋に見せれば、それは練玉ねりだまというまがい物だと分って、お金にはならず、腹が立つやら悲しいやらで涙も出ません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうだ、帯上げもおなじ色だったので、大粒な、珊瑚珠さんごじゅ金簪きんかんざしが眼についたって。
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
これに対する用心もしたがって存したことで、治世になっても身分のある武士が印籠いんろうの根付にウニコールを用いたり、緒締おじめ珊瑚珠さんごじゅを用いた如きも、珊瑚は毒に触るれば割れて警告を与え
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
目の下のみぎわなる枯蘆かれあしに、縦横に霜を置いたのが、天心の月に咲いた青い珊瑚珠さんごじゅのように見えて、その中から、瑪瑙めのうさんに似て、長く水面をはるかに渡るのは別館の長廊下で、棟に欄干をめぐらした月の色と
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今度は珊瑚珠さんごじゅ根懸ねかけが出た。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
また税関のある地方からは珊瑚珠さんごじゅ、宝石、布類、羅紗らしゃきぬ及び乾葡萄ほしぶどう乾桃ほしもも乾棗ほしなつめ類、また地方によっては皮あるいは宝鹿ほうろく血角けっかくを納めるところもある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
根下ねさがりの丸髷に大きな珊瑚珠さんごじゅかんざしを挿し、鼈甲べっこうくしをさしていた、ことさらに私の眼についているのは、大きくとった前髪のあまりを、ふっさりきって二つにわけ、前額ひたいの方へさげている。