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櫟林
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くぬぎばやし
ふりがな文庫
“
櫟林
(
くぬぎばやし
)” の例文
そこは三十軒ほどの部落の端にある、北側に
櫟林
(
くぬぎばやし
)
をめぐらせた、南向きの、枯れて明るい桑畑を前にした陽当りのよい構えだった。
日本婦道記:小指
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
其
(
そ
)
の
菜種油
(
なたねあぶら
)
のやうに
櫟林
(
くぬぎばやし
)
と
相
(
あひ
)
接
(
せつ
)
しつゝ
村落
(
むら
)
の
西端
(
せいたん
)
に
僻在
(
へきざい
)
して
親子
(
おやこ
)
三
人
(
にん
)
が
只
(
たゞ
)
凝結
(
ぎようけつ
)
したやうな
状態
(
じやうたい
)
を
保
(
たも
)
つて
落付
(
おちつい
)
て
居
(
ゐ
)
るのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
全山こと/″\く小松原であるこの山も麓の方には稀に
櫟林
(
くぬぎばやし
)
や萱の原がある。紅梅を見越しての麓の原はちやうどその櫟の林となつてゐた。
樹木とその葉:27 春の二三日
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
「あの
櫟林
(
くぬぎばやし
)
の冬景色は、たしかにこの塾の一つの
象徴
(
しょうちょう
)
ですね。ことにこんな朝は。——まる
裸
(
はだか
)
で、澄んで、あたたかくて——」
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
銃声はなか/\近付いて来ません。わたくしは、もどかしくなり、風呂敷包を玄関の踏石の上に置いて
櫟林
(
くぬぎばやし
)
の方へ先生を捜しに行きました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
富士の美しく
霞
(
かす
)
んだ下に大きい
櫟林
(
くぬぎばやし
)
が黒く並んで、
千駄谷
(
せんだがや
)
の
凹地
(
くぼち
)
に新築の家屋の
参差
(
しんし
)
として連なっているのが走馬燈のように早く行き過ぎる。
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
甲虫のいる
櫟林
(
くぬぎばやし
)
はもうそこに見えている。二人は、いつしか手を取りあって、幼いときによく歌った歌を思いだして、声をそろえて歌ってゆく。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
物思う身に秋は早くも暮れて、
櫟林
(
くぬぎばやし
)
に木枯しの寂しい冬は来た。昨日まで苦しい暑さを想いやった土方の仕事は、もはや霜柱の冷たさをいたむ時となった。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
正午の頃までは、裏の
櫟林
(
くぬぎばやし
)
で
吠
(
ほ
)
えたりして居た。何時の間に甲州街道に遊びに往って
無惨
(
むざん
)
の
最後
(
さいご
)
を
遂
(
と
)
げたのか。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
櫟林
(
くぬぎばやし
)
や麦畠や街道や菜園や、地形の変化に富んだその郊外は静かで
清
(
すが
)
すがしかった。乳牛のいる牧場は信子の好きなものだった。どっしりした百姓家を彼は愛した。
雪後
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
街路
(
とおり
)
の左右に
櫟林
(
くぬぎばやし
)
を見るようになった。政雄はもう人家が無くなるだろうと思っていると、
街路
(
とおり
)
の右側に石の新らしい
鳥居
(
とりい
)
に電燈を一つとりつけてあるのが見えた。政雄の
縦
(
ほしいまま
)
な心が高ぶっていた。
女の怪異
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
櫟林
(
くぬぎばやし
)
のはずれで
貧しき信徒
(新字新仮名)
/
八木重吉
(著)
途方に暮れてぼんやり立ち続けていますと川上の丘の
櫟林
(
くぬぎばやし
)
の方に当って、聞き慣れた犬の吠える声が聞え、銃声も響きます。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「書記さん。私はあの
櫟林
(
くぬぎばやし
)
の中を探して、武夫君の行方をつきとめたいんですが、貴方も一緒に行って呉れませんか」
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
久さんが生れて間もなく、村の
櫟林
(
くぬぎばやし
)
に
棄児
(
すてご
)
があった。農村には人手が
宝
(
たから
)
である。石山の爺さんが右の棄児を
引受
(
ひきう
)
けて育てた。棄児は大きくなって、名を
稲次郎
(
いねじろう
)
と云った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
二人は話しながら、月の光を浴びて
櫟林
(
くぬぎばやし
)
の下を長峰の方にたどった。冬の夜は長くまだ十時を過ぎないけれども往来には人影が
杜絶
(
とだ
)
えて、軒燈の火も氷るばかりの寒さである。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
もとから在った
櫟林
(
くぬぎばやし
)
をそのまま取入れたあたりと、僅かに野川の水を引いて流れを作ってあるのとが庭造りらしい跡をみせているが、ながいこと主人も来ず捨てて置かれたので
晩秋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
斯
(
か
)
ういふ
櫟
(
くぬぎ
)
の
木
(
き
)
を
植
(
う
)
ゑて
林
(
はやし
)
を
造
(
つく
)
るべき
土地
(
とち
)
の
開墾
(
かいこん
)
をする
爲
(
ため
)
にもう
幾年
(
いくねん
)
といふ
間
(
あひだ
)
雇
(
やと
)
はれて
其
(
そ
)
の
力
(
ちから
)
を
竭
(
つく
)
した。
彼
(
かれ
)
は
漸
(
やうや
)
く
林相
(
りんさう
)
を
形
(
かたち
)
づくつて
來
(
き
)
た
櫟林
(
くぬぎばやし
)
に
沿
(
そ
)
うて
田圃
(
たんぼ
)
を
越
(
こ
)
えて
走
(
はし
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
そして行き着いたのが戸山ヶ原の
櫟林
(
くぬぎばやし
)
であつたのだ。驚きはいつか一種の哀愁に變つて、足音をぬすむ樣にして私は其處に群立してゐる木から木の間の下草を踏み分けて歩き𢌞つたものであつた。
樹木とその葉:29 東京の郊外を想ふ
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
……黄いろな夕陽の光が松原の外にあったが春の日のように空気が湿っていて、顔や
手端
(
てさき
)
の皮膚がとろとろとして眠いような日であった。彼は松原に沿うた
櫟林
(
くぬぎばやし
)
の中を縫うている
小路
(
こみち
)
を抜けて往った。
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
戸籍面
(
こせきめん
)
の父は
痴
(
おろか
)
で、母は
莫連者
(
ばくれんもの
)
、実父は父の
義弟
(
ぎてい
)
で実は此村の
櫟林
(
くぬぎばやし
)
で
拾
(
ひろ
)
われた
捨子
(
すてご
)
である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
彼
(
かれ
)
は
村外
(
むらはづ
)
れの
櫟林
(
くぬぎばやし
)
の
側
(
そば
)
に
居
(
ゐ
)
たので
自分
(
じぶん
)
の
家
(
いへ
)
の
近
(
ちか
)
くにはさういふ
物
(
もの
)
を
作
(
つく
)
る
畑
(
はたけ
)
が一
枚
(
まい
)
もなかつた。それでも
胡瓜
(
きうり
)
だけは
垣根
(
かきね
)
の
内側
(
うちがは
)
へ一
列
(
れつ
)
に
植
(
う
)
ゑて
後
(
うしろ
)
の
林
(
はやし
)
に
交
(
まじ
)
つた
短
(
みじか
)
い
竹
(
たけ
)
を
伐
(
き
)
つて
手
(
て
)
に
立
(
た
)
てた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
櫟林
(
くぬぎばやし
)
は巨人群像のように、逞しい枝を張り、生々した梢を大空の方にグッと伸ばしていた。膝を没するような雑草を、バサバサと踏みわけながら、武夫とお美代とは、奥深く入っていった。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そしてひと組の青年たちが、かんば沢の
櫟林
(
くぬぎばやし
)
の中に彼をみつけだした。
藪落し
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
櫟
漢検1級
部首:⽊
19画
林
常用漢字
小1
部首:⽊
8画
“櫟”で始まる語句
櫟
櫟井
櫟津
櫟谷
櫟丘
櫟斎
櫟木
櫟社
櫟窓
櫟翁