こっちから頭を下げて行くのは業腹だから、じっと辛抱していた。後で聞いて見ると、向うでもやっぱり同じような気持だったらしい。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「あんなのを送った日にゃ、八丁堀の旦那衆から、どんなお小言が出るか判らない。業腹だがとうとう縄を解いてしまったよ」
銭形平次捕物控:123 矢取娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
よっぽど引っ返して通弁兼護衛でも雇って出直そうかと考えたが、私だって意味の判然しないことでそうやすやすと追っぱらわれるのは業腹だ。
踊る地平線:05 白夜幻想曲 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
……どうしてこう早くお帰りになったんでございますか……皆様のおっしゃる事を伺っているとあんまり業腹でございますから……もう私は耳をふさいでおります。
彼にはソバケーヴィッチの仕打が業腹でならなかったのだ。とにかく、何といったって、知事のところでも、警察部長のところでも会って、知合いの仲じゃないか。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
日和下駄:一名 東京散策記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
八分通りは売ったので、まあこれで引き上げようと父は帰りましたが、まだ売れ残りがあるので、私はそれを持って帰るのも業腹で、私は、これを売ってから帰りますと後に残りました。
幕末維新懐古談:42 熊手を拵えて売ったはなし (新字新仮名) / 高村光雲(著)
それも業腹なら死んでしまうかだよ。ところでわしはまだ死にともないのだ。だから強くなくてはいけないのだ。だがわしは気が弱いでな。気を強くする鍛錬をしなくてはいけないのだ。
旧聞日本橋:23 鉄くそぶとり(続旧聞日本橋・その二) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
道庵が鰡八に楯をつくのは、それはほんとうに業腹でやっているのだか、または面白半分でやっているのだかわからないのであります。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
掴むような話で、おめえに笑われるのも業腹だから実は今まで黙っていたが、おめえをここまで引っ張り出したのは、もしやという心頼みがちっとはあったんだ
半七捕物帳:10 広重と河獺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
言われるだろう。それに他の御用聞に嗅ぎ出されて、馬鹿にされるのも業腹だ。銭形の兄哥なら——
銭形平次捕物控:112 狐の嫁入 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
恥かしいっていう柄じゃありません、真似をしたように思われるのが業腹でね。こう見えてもわたしゃ、真似と坊主は大嫌いさ。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)