げき)” の例文
と、けよりざま、雷喝らいかつせい、闇からうなりをよんだ一じょう鉄杖てつじょうが、ブーンと釣瓶もろとも、影武者のひとりをただ一げきにはね飛ばした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おどろいたのはモンクスだった。敵の上半身をねらってただ一げきと思いきや、相手は寝てしまったんだ。拍子抜ひょうしぬけがして、ぼんやりしてしまった。
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
洋人來航するに及んで、物議ぶつぎ紛々ふん/\、東攻西げきして、内訌ないこう嘗てをさまる時なく、終に外國の輕侮けいぶまねくに至る。此れ政令せいれいに出で、天下耳目のぞくする所を異にするが故なり。
マーキュ ただ一ごんでござるか? なにかおへなさい。一ごんけんげきとしたら如何どうぢゃ?
のろわばあな二つだ!」と、かれは、いいながら、石塊せきかいげつけて、一げきのもとに、かえるもとかげももろともに粉砕ふんさいして、まえまわしい光景こうけい払拭ふっしょくしようとあせったのです。
透明人間がま近にきたな、と感じた瞬間しゅんかん、ケンプ博士は、したたかにあごに一げきをくらった。倒れたところを脾腹ひばらをけられ、つづいて胸を重いものがおさえつけ、のどをしめつけられた。
将に我頭をにらむ、一小蛇ありて之にはる、よつただちに杖を取りて打落うちをとし、一げきのうくだけば忽ち死す、其妙機めうきあたかせる蛇をおとしたるが如くなりし、小なる者はあはれにも之を生かしけり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
十二三ヶ所の傷だつたと言ひますが、ツイ近所の人も、宵のうちの人殺し騷ぎを知らなかつたところを見ると、多分最初の一げきで致命的な傷を與へ、聲を出す力も騷ぐ力もなくなつたものでせう。
げきもと其處そこふね撃沈げきちんするつもりかもれぬ。
かれのがんじょうな五体は、さすが戦場のちまたできたえあげたほどだけあって、小柄こがらな若者を見おろして、ただ一げきといういきおいをしめした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一メートル五十五の日本人に、一メートル八十二の雲をつくようなアメリカ人、一げきでふっ飛ぶか? あやうし!
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
この一げきで、さしも精巧せいこうなドイツせいも、銃身じゅうしんがみにくくがってしまいました。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、おなじ志の阿蘇あそ一族をかたらって、阿蘇火山の噴煙をうしろに、筑後川をわたり、博浪はくろうげきの下にと、博多の北条探題邸の襲撃にむかった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しんぱつ、また、眼もとまらぬ一げきとつ、すべて見事な肉体のから演舞だった。史進は、声をらして、そののどから臓腑ぞうふを吐かんとするほどに身も疲れてしまった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とはね起きた蔦之助つたのすけ、持ったる高札こうさつで黒衣のかげに一げきをくらわせた。すごい声をあげたのは呂宋兵衛、したたかにかたを打たれたのだ。そして疾風しっぷうのごとくげだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)