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引手
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ひきて
ふりがな文庫
“
引手
(
ひきて
)” の例文
まことにお恥かしいことでございますが、その頃わたくしの家は吉原の
廓内
(
くるわうち
)
にありまして、
引手
(
ひきて
)
茶屋を商売にいたしておりました。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
或時頼んで遣ったら、そこの
引手
(
ひきて
)
が三人の女を連れて来て、「どれでもお好きなのをお使い下さい」といったのには
呆
(
あき
)
れました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
正面の
襖
(
ふすま
)
は暗くなった、破れた
引手
(
ひきて
)
に、襖紙の
裂
(
さ
)
けたのが、ばさりと動いた。お君は
堅
(
かた
)
くなって真直に、そなたを見向いて、
瞬
(
またたき
)
もせぬのである。
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ウサギの前足が一つ、
紐
(
ひも
)
にゆわえつけられてさがっていました。これがいまの皇帝宮の、呼びりんの
引手
(
ひきて
)
なのです。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
八五郎も板戸に手を掛けましたが、これは思いのほか厳重で、
引手
(
ひきて
)
も
桟
(
さん
)
もなく、力のほどこしようもありません。
銭形平次捕物控:282 密室
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
「
去年
(
こぞ
)
見てし秋の月夜は照らせども相見し
妹
(
いも
)
はいや年さかる」(巻二・二一一)、「
衾道
(
ふすまぢ
)
を
引手
(
ひきて
)
の山に妹を置きて山路をゆけば生けりともなし」(同・二一二)がある。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
一幅ごとに残っている
開閉
(
あけたて
)
の
手摺
(
てずれ
)
の
痕
(
あと
)
と、
引手
(
ひきて
)
の取れた部分の白い型を、父は自分に指し示した。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
火鉢ばかりの店もあれば
金
(
かな
)
だらいや
手水鉢
(
ちょうずばち
)
が主な店もあり、
襖
(
ふすま
)
の
引手
(
ひきて
)
やその他細かいものの上等品ばかりの店もあり、笹屋という刃物ばかりのとても大きな問屋もあった。
旧聞日本橋:02 町の構成
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
讓は
何時
(
いつ
)
の間にか
土間
(
どま
)
へ立っていた。背の高い
蝋細工
(
ろうざいく
)
の人形のような顔をした、黒い
数多
(
たくさん
)
ある髪を
束髪
(
そくはつ
)
にした凄いように
姝
(
きれい
)
な女が、
障子
(
しょうじ
)
の
引手
(
ひきて
)
に
凭
(
もた
)
れるようにして立っていた。
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
不夜城のにぎわしさ! 明るさ!
引手
(
ひきて
)
茶屋に着くと、いつか、先乗りが触れ込んでいたと見えて、芸者、太鼓持が、かごを下りる姿を見かけて、ずらりと顔を揃えて迎える。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
良雄の
後
(
うしろ
)
の障子に、影法師が一つ映らなかったなら、そうして、その影法師が、障子の
引手
(
ひきて
)
へ手をかけると共に消えて、その代りに、早水藤左衛門の逞しい姿が、座敷の中へはいって来なかったなら
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そういいながら、おせんのふるえる
手
(
て
)
は
襖
(
ふすま
)
の
引手
(
ひきて
)
を
押
(
おさ
)
えた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
うち
潤
(
しめ
)
る
石油色
(
せきゆいろ
)
の
陰影
(
いんえい
)
の
中
(
うち
)
、
薄
(
うす
)
ら
光
(
ひか
)
る
銀
(
ぎん
)
の
引手
(
ひきて
)
のそばに
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
吉原
引手
(
ひきて
)
茶屋山口巴。
六百句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
八五郎も板戸に手を掛けましたが、これは思ひの外嚴重で、
引手
(
ひきて
)
も
棧
(
さん
)
もなく、力のほどこしやうもありません。
銭形平次捕物控:282 密室
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
例の通り
紅葉
(
もみじ
)
を
引手
(
ひきて
)
に張り込んだ
障子
(
しょうじ
)
が、閑静に
閉
(
しま
)
っているだけなのを、敬太郎は少し案外にかつ物足らず
眺
(
なが
)
めていたが、やがて
沓脱
(
くつぬぎ
)
の上に脱ぎ捨てた
下駄
(
げた
)
に気をつけた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ぴつたり
閉
(
し
)
めた
襖
(
ふすま
)
一
枚
(
まい
)
……
臺所
(
だいどころ
)
へ
續
(
つゞ
)
くだゞつ
廣
(
ぴろ
)
い
板敷
(
いたじき
)
との
隔
(
へだて
)
に
成
(
な
)
る……
出入口
(
ではひりぐち
)
の
扉
(
ひらき
)
があつて、むしや/\と
巖
(
いは
)
の
根
(
ね
)
に
蘭
(
らん
)
を
描
(
ゑが
)
いたが、
年數
(
ねんすう
)
算
(
さん
)
するに
堪
(
た
)
へず、で
深山
(
みやま
)
の
色
(
いろ
)
に
燻
(
くす
)
ぼつた、
引手
(
ひきて
)
の
傍
(
わき
)
に
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ぴったり閉めた襖一枚……台所へ続くだだっ広い板敷との
隔
(
へだて
)
になる……
出入口
(
ではいりぐち
)
の
扉
(
ひらき
)
があって、むしゃむしゃと
巌
(
いわ
)
の根に蘭を描いたが、年数
算
(
さん
)
するに
堪
(
た
)
えず、で
深山
(
みやま
)
の色に
燻
(
くす
)
ぼった、
引手
(
ひきて
)
の
傍
(
わき
)
に
霰ふる
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
引手
(
ひきて
)
も
馬方
(
うまかた
)
もない
畜生
(
ちくしやう
)
が、あの
大地震
(
おほぢしん
)
にも
縮
(
ちゞ
)
まない、
長
(
なが
)
い
面
(
つら
)
して、のそり/\と、
大八車
(
だいはちぐるま
)
のしたゝかな
奴
(
やつ
)
を、たそがれの
塀
(
へい
)
の
片暗夜
(
かたやみ
)
に、
人
(
ひと
)
もなげに
曳
(
ひ
)
いて
伸
(
の
)
して
來
(
く
)
る。
重荷
(
おもに
)
に
小
(
こ
)
づけとはこの
事
(
こと
)
だ。
十六夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
引
常用漢字
小2
部首:⼸
4画
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
“引手”で始まる語句
引手繰
引手茶屋
引手数多
引手奪
引手夥多
引手金具