はか)” の例文
此派の詩人は我を尺度として世間をはかる。彼は理想の高大圓滿ならむことを望み、自家の極致の其作の中に飛動せむことを期す。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
疑がえばおのれにさえあざむかれる。まして己以外の人間の、利害のちまたに、損失の塵除ちりよけかぶる、つらの厚さは、容易にははかられぬ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わがあらかじはかりし如く、さし向ひとなりては何のむづかしき事もなかりき。おん身が得しは只一つの接吻なりしが、わが得しは千萬にて總て殘るくまなき爲合しあはせなりき。
数間の地を測るには尺度にて足るべし、天下の大をはかるには、人造の尺度果して何の用をかせむ。
各人心宮内の秘宮 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
で、自分一人室の中央に立上ると、妙に頭から足まで竹山の鋭い眼にはかられる樣な心地がして、疊觸りの惡い自分の足袋の、汚なくなつて穴の明いてるのが恥しく思はれた。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
丹泉はしきりに称讃して其鼎をためつすがめつ熟視し、手をもつて大さをはかつたり、ふところ紙に鼎の紋様をうつしたりして、斯様いふ奇品に面した眼福を喜び謝したりして帰つた。
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
吾を以てこれをはかるに、我が国に乞丐きっかい甚だおおければ、彼れ必ず貧院を起こし、棄児甚だ衆ければ、彼れ必ず幼院を設け、疲癃ひりゅう残疾、貧賤にして治療するあたわざるもの甚だ衆ければ
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
馬をはかると一匹長かった故とか、馬死んで売るときぬ一匹得たからとか種々の説を列べた中に、〈あるいはいわく、馬は夜行くに目明るく前四丈を照らす、故に一匹という〉とある。
階級で人をはかったり、衣服で人を度ったり、ないしは成功で人を度ったり、官吏ならば、勅任だの、奏任だのと、官等で人を度ったり、あるいはまた学問や技芸で人を度ったりして
人格を認知せざる国民 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
わたしちひさくなるんだわ』あいちやんはあがり、身長せいはからうとおもつて洋卓テーブルところきました、自分じぶんおもつてたとほほとんど二しやくたかくなつてましたが、きふまたちゞしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
重量約一匁とか長さ約一寸といえば通例はかり方はかり方の粗雑な事を意味する。丁度一匁とかキッチリ一寸など云えば大変に正確に聞えるが、精密とか粗雑とかいうのも結局は相対的の言葉である。
方則について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
すなはその(四九)歩軍ほぐんて、その(五〇)輕鋭けいえいと、(五一)ばいかうあはせてこれへり。孫子そんし其行そのかうはかるに、くれまさ馬陵ばりよういたるべし。馬陵ばりようみちせまくしてかたは(五二)阻隘そあいおほく、へいふくし。
で、自分一人室の中央に立上ると、妙に頭から足まで竹山の鋭い眼にはかられる様な心地がして、畳触りの悪い自分の足袋の、汚なくなつて穴の明いてるのが心恥うらはづかしく思はれた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
(下卷七四五面)是れあに逍遙子が所謂、我を尺度として世間をはかるところにあらずや。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
丹泉はしきりに称讃してその鼎をためつすがめつ熟視し、手をもっておおいさをはかったり、ふところ紙に鼎の紋様をうつしたりして、こういう奇品に面した眼福がんぷくを喜び謝したりして帰った。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
豆腐屋が豆をつぶしたり、呉服屋が尺をはかったりする意味で我々も職業に従事する。上下こぞって奔走に衣食するようになれば経世利民仁義慈悲の念は次第に自家活計の工夫くふうと両立しがたくなる。
文芸と道徳 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)