巨大おおき)” の例文
あやし気な日本語で会釈して、巨大おおきな手で赤い小さな百合形ゆりがたの皿を抱えたが、それでも咽喉のどが乾いていたと見えて美味おいしそうにすすり込んだ。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ると、水辺すいえんの、とある巨大おおきいわうえには六十前後ぜんごゆる、一人ひとり老人ろうじんが、たたずんで私達わたくしたちるのをってりました。
途端とたん! 一同は思わずハッとした様子、それは何故なぜかと云うに、今しも不意に一つの巨大おおきな流星が空中に現われ、青い光は東から西へ人魂ひとだまの如く飛んで
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
広さ六畳の洋風書斎、壁にめ込まれた巨大おおきな書棚。それへ掛けられた深紅の垂布たれぎぬ、他に巨大な二個の書棚、なおこの他に廻転書架、窓に向かって大ぶりのデスク。
小酒井不木氏スケッチ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私は話の中のこのうおを写出すのに、出来ることなら小さな鯨と言いたかった。大鮪おおまぐろか、さめふかでないと、ちょっとその巨大おおきさとすさまじさが、真に迫らない気がする。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
暫くして、突然、何か巨大おおきな物が海へ落ちこんだ物音に、彼等はぎょっとして跳びあがった。
その次に小山のような巨大おおきけものがゆるぎ出して来た。千枝松は寺の懸け絵で見たことがあるので、それが象という天竺てんじくの獣であることを直ぐに覚った。象は雪のように白かった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
よごれた顔の子供にも、荷馬車に石炭を積んで巨大おおきな馬を駆って行く男にも、子供の手を引き腰掛椅子を小脇こわきかかえながら公園の方へ通う乳母うばにも、鳥打帽子をかぶった年若な労働者にも
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
神田から出た北風ならいの火事には、類焼やけるものとして、くら戸前とまえをうってしまうと店をすっかり空にし、裸ろうそくを立てならべておいたのだという、妙な、とんでもない巨大おおき男店おとこだなだった。
正面の大卓子テーブルと、大暖炉との中間に在る、巨大おおきな肘掛回転椅子に乗っかった正木博士は、白い診察服の右手の指に葉巻の消えたのを挟み
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
白無垢しろむくを着た険しい山や巨大おおきな獣の口のようにワングリと開いた谿たになども橇が進むに従って次第次第に近寄って来、橇が行き過ぎるに従って後へ後へと飛び去って行く。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「マア何んと云う巨大おおきな流星でしょう」と、一番目の娘も二番目の娘もを円くして叫んだ。
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
彼奴きゃつ等が巨大おおきな体で打突ぶっつかるものだから、犬舎いぬごやが今にもはち切れそうな音がする。
犬舎 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
彼女はこの若い美しいえさ巨大おおきさかなを釣り寄せようとたくらんでいた。
半七捕物帳:05 お化け師匠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
のみならず、いつもニコニコしている小さな眼の光りが、処女のように柔和なので、さながらに巨大おおきな赤ん坊のように見えた。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
どの牛を見ましてもそのたくましさは驚かれるばかりでございましたが、いよいよ最終の競技となって、宮廷闘牛の現われました時には、その巨大おおきさと獰猛さに、見物はすっかり気を呑まれて
闘牛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
汽車が線路かられてウンウン唸りながら僕を追っかけて来たり、巨大おおきな黒い牛が紫色の長い長い舌を出してギョロギョロと僕をにらんだり
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ヌーッと男は、湯から、巨大おおきな柱でも抜き上げたように立ち上がった。
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
マドロス煙管パイプをギュウと引啣ひっくわえた横一文字の口が、旧式軍艦の衝角しょうかくみたいな巨大おおきあご一所いっしょに、鋼鉄の噛締機バイトそっくりの頑固な根性を露出むきだしている。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私は、私の周囲に迫りつつある、何とも知れない、気味のわるい、巨大おおきな、恐ろしいものを感じた。一刻も早くうちに帰るべくスタスタと歩き出した。
怪夢 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
猛烈な足払いをかけた……が……ビクともしない……と思った瞬間に又野の巨大おおきな両手が、中野学士の襟首にかかって、ギューギューと絞付けて来た。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
背丈がグッと低く、十三、四歳の日本児童ぐらいにしか見えないところへ、頸部は普通の西洋人以上に巨大おおきく発達しているために、どうかすると佝僂せむしに見え易い。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「僕に負けんくらい巨大おおき赭顔あからがおの、あぶらの乗り切った精力的な男だ。コイツも独身という話じゃが」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかし何をいうにも何十ひろという巨大おおきな奴が、四方行止まりのない荒浪あらうみの上で、アタリ憚からずに夫婦の語らいをするのですから、そこいら中は危なくて近寄れません。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
巨大おおきな鉄火鉢のカンカン起った署長室で、平服の田宮特高課長と差向いで話した時の室内の光景から、何度も何度も炭火の跳ねたところから、田宮課長の腕時計の音までも
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
矮小な正木博士が、大きな椅子の中一パイにハダカッているのに対して、巨大おおきな若林博士が、小さな椅子の中に恭しくかしこまっている光景は、いよいよ絶好の漫画材料で御座います。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……といって閨房けいぼうあかりらしい艶媚なまめかしさも、ほのめいていない……夢のように淡い、処女のように人なつかしげな、桃色のマン丸い光明こうみょうが、巨大おおきな山脈の一端はならしい黒い山影の中腹に
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
取り返しが付かぬどころの騒ぎじゃない。飛び出しがけの置土産おきみやげ巨大おおきな穴でもコジ明けられた日には、本家本元の船体が助からない。シャフトのアトからブクブクブクと来るんだ。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
天井裏に隠れていた何千貫かわからない巨大おおき硬炭ボタの盤が、鉄工場の器械のようにジワジワと天降あまくだって来て、次第次第に速度を増しつつ、福太郎の頭の上に近付いて来るのが見えた。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一直線に逆行して来た四台の炭車トロッコが折重なって脱線をした上から、巨大おおき硬炭ボタが落ちかかって作った僅かな隙間に挟み込まれたもので、顔中を血だらけにして、両眼をカッと見開いたまま
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そうしたら僕の心臓の大動脈の附根に巨大おおきな動脈瘤というものがある事が発見されたのです。その時にもう二週間の寿命しかないと、宣告されたのですから、僕の寿命は今日、明日のうちなのです
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そいつが腐りつきそうな秋波を親方に送ったついでに吾輩をジロリと睨みながら、吾輩がタッタ今立上った椅子の座布団の中へドシンと巨大おおき大道臼だいどううすを落し込んだ。愛想あいそもコソもあったもんじゃない。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あっしを手招きしながら部屋の隅の巨大おおきな銀色の花瓶の処へ来ました。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……左の薬指に「槻田つきだ」と彫った巨大おおき認印みとめつきの指環ゆびわ一個……。
この導火線くちびの寸法なるものが又、彼奴きゃつ等の永年の熟練から来ているので、所謂、教化別伝の秘術という奴だろう。魚群の巨大おおきさや深さによって咄嗟とっさの間に見計みはからいを付けるのだからナカナカ難かしい。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
僕が南洋土産の巨大おおき擬金剛石アレキサンドリアを一持っております。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)