左舷さげん)” の例文
る/\うちあやしふね白色檣燈はくしよくしやうとう弦月丸げんげつまる檣燈しやうとう並行へいかうになつた——や、彼方かなた右舷うげん緑燈りよくとう左舷さげん紅燈こうとう尻眼しりめにかけて
尻屋しりやの燈台、金華山きんかざんの燈台、釜石かまいし沖、犬吠いぬぼう沖、勝浦かつうら沖、観音崎かんのんざき浦賀うらが、と通って来た。そして今本牧ほんもく沖を静かに左舷さげんにながめて進んだ。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
「うん、沈没なんかしやせんよ。さっきの爆弾は、左舷さげんの横、五、六メートルの海中で炸裂さくれつしたんだそうだ、それだけはなれていりゃ、大丈夫だ」
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もし往航おうこうならば左舷さげん彼方かなたにエトナがたか屹立きつりつしてゐるのをるべく、六七合目以上ろくしちごうめいじよう無疵むきづ圓錐形えんすいけいをしてゐるので富士ふじおもすくらゐであるが
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
だがいっこう潮が引かない、そのうえに船はますます左にかたむいて、左舷さげんはがっくりと水に頭をひたした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
K中尉はそこに腰をおろし、スタンションを取り払った左舷さげんの海や赤い鎌なりの月を眺め出した。あたりは甲板士官のくつの音のほかに人声も何も聞えなかった。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこへ激しい彼岸嵐に襲われて、左舷さげん船嘴せんしと一舷窓とがこわれ、前檣ぜんしょうの索棒がいたんだ。そしてそれらの損所のためにまたツーロン港にはいってきたのである。
朝食後に出て見ると左舷さげんに白く光った陸地が見える。ちょっと見ると雪ででもおおわれているようであるが、無論雪ではなくて白い砂か土だろう。珍しい景色である。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
船は左舷さげんへぐいとなかばまわり、それからその新たな方向へいなずまのようにつき進みました。
『最上』の左舷さげんと狼岩との間へ、一そうの内火艇が、ボボボボボと音を立てて入って来た。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
ノソリノソリと歩み出したムク犬は、左舷さげんの舟べりに立って、海の上を見渡しています。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
月のあかりはどこかぼんやりありましたが、きりが非常に深かったのです。ところがボートは左舷さげんの方半分はもうだめになっていましたから、とてもみんなは乗り切らないのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
艦首にうごめく番兵の影を見越して、海を望めば、ただ左舷さげんに淡き島山と、見えみ見えずみ月光のうちを行く先艦秋津洲あきつしまをのみくまにして、一艦のほか月にしらめる黄海の水あるのみ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
かの字港に着くと、船頭がもう用意したくをして待っていた。寂しい小さな港の小さな波止場はとばの内から船を出すとすぐ帆を張った、風の具合がいいので船は少し左舷さげんかしぎながら心持ちよくはしった。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
トムは左舷さげんに立って、自分へさけぶたくさんなハンケチ女のむれを見出して笑った。お光さんはその中に立って、白い手をさしあげていた。唇が届かない——トムはそう思った。——唇が届かない。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すぐに、左舷さげんの、太い鎖のついた大錨が投げこまれて船は止った。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
稲妻のするスマトラを左舷さげんに見
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
なにたもありません、本船ほんせん左舷さげん後方こうほう海上かいじやうあたつて星火榴彈せいくわりうだん一次いちじ一發いつぱつ火箭くわせん、それが難破船なんぱせん信號しんがうであるくらゐりませんか。
「おい、わかったぞ。左舷さげん前方三十度に赤い火が三つほばしらに出ている船が、われわれを待っているエデン号だそうだ。船をそっちへ向けなおして、全速力でいそげ」
豆潜水艇の行方 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、本船の前左舷さげんはるかな沖合に、一そうの汽船が見えた。「あ、汽船が!」と、小倉は無意識に叫んだ。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
月のあかりはどこかぼんやりありましたが、きり非常ひじょうふかかったのです。ところがボートは左舷さげんの方半分はんぶんはもうだめになっていましたから、とてもみんなはり切らないのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
僕はその何分か前に甲板の欄干らんかんりかかったまま、だんだん左舷さげんへ迫って来る湖南の府城を眺めていた。高い曇天の山の前に白壁や瓦屋根かわらやねを積み上げた長沙は予想以上に見すぼらしかった。
湖南の扇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
春の日ののどかな光が油のような海面にけほとんどさざなみも立たぬ中を船の船首へさきが心地よい音をさせて水を切って進行するにつれて、かすみたなびく島々を迎えては送り、右舷うげん左舷さげん景色けしきをながめていた。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「艇長! 左舷さげんの下に漂流者が見えます。」
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
はる左舷さげん鋸山式のこぎりやましきのヴルカーノがえる。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
船長閣下せんちやうかくか越權えつけんながら報告ほうこくします、本船ほんせん左舷さげん後方こうほう、三海里かいりばかりへだゝつた海上かいじやうあたつて一個いつこ難破船なんぱせんがありますぞ。
そして、今にも衝突しそうに思えた、山のような怪物、(それは軍艦だと波田と西沢は思っていた)は全速力をもって、まるで風のように左舷さげんの方へ消え去った。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
巨船クイーン・メリー号も、いまや右舷うげん左舷さげんもサケの大群にかこまれてしまった。魚の群れは、メリー号と競走しているように、同じ進路をとっておよいでいる。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
が、左舷さげんの水平線の上には大きいかまなりの月が一つ赤あかと空にかかっていた。二万トンの××の中は勿論まだ落ち着かなかった。しかしそれは勝利のあとだけにきとしていることは確かだった。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
汽船の前には、美しい花壇かだんがあった。又汽船の後には道路があって、自動車がひっくりかえっていた。右舷うげんを見れば、町であった。左舷さげんを見ればこれも町であった。これは変だ。
なぜといって、いま雷洋丸はぐんぐんと左舷さげんへかたむいていく。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「船長、漂流物が見えます。左舷さげん——」
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)