ちよう)” の例文
(五二)くわんなればすなは名譽めいよひとちようし、きふなればすなは介冑かいちうもちふ。いまやしなところもちふるところあらず、もちふるところやしなところあらずと。
それから満枝は益す禿のちようを得て、内政を自由にするやうになつたから、定めて生家さとの方へみつぐと思の外、きめものの外は塵葉ちりつぱ一本らん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そうして、斉彬の生母は死し、斉興の愛するお由羅ゆらが、そのちようを一身に集めていた。そして、お由羅の生んだ久光は、聡明な子の上に、斉興の手元で育てられた。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
燒け殘りたる築垣ついがきの蔭より、屋方やかたの跡をながむれば、朱塗しゆぬり中門ちゆうもんのみ半殘なかばのこりて、かどもる人もなし。嗚呼あゝ被官ひくわん郎黨らうたう日頃ひごろちように誇り恩をほしいまゝにせる者、そも幾百千人の多きぞや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
品は初子が亀千代を生んだ年に二十一歳で浜屋敷に仕へることになつて、すぐに綱宗の枕席ちんせきしたらしい。あるひは初子の産前産後の時期にちようを受けはじめたのではなからうか。
椙原品 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ずゐ文帝ぶんてい宮中きうちうには、桃花たうくわよそほひあり。おもむき相似あひにたるものなりみないろてらちようりて、きみこゝろかたむけんとする所以ゆゑんあへ歎美たんびすべきにあらずといへども、しかれどもこゝろざし可憐也かれんなり
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小づき廻すといふに語弊があつたらちようして気にしていぢくつて仕方のないものだ。
花は勁し (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
豫期通り彼を嬰兒えいじのやうにかばいたはつてくれたのだが、しかし、子供が此世に現れて來て妻の腕に抱かれて愛撫されるのを見た時、自分へのちようは根こそぎ子供に奪ひ去られたことを知り
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
子を生みし後も宮が色香はつゆうつろはずして、おのづか可悩なやまし風情ふぜいそはりたるに、つまが愛護の念はますます深く、ちようは人目の見苦みぐるしきばかりいよいくははるのみ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
この腰元ははるといひて、もとお村とは朋輩なりしに、お村はちようを得てお部屋と成済なりすまし、常にあごて召使はるゝを口惜くちをしくてありけるにぞ、今く偶然に枕を並べたる二人ににんすがたを見るより
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)