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天稟
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てんぴん
ふりがな文庫
“
天稟
(
てんぴん
)” の例文
彼が死に到るまで、その父母に対しては
固
(
もと
)
より、その兄妹に対して、
掬
(
きく
)
すべき友愛の深情を
湛
(
たた
)
えたるは、
単
(
ひと
)
りその
天稟
(
てんぴん
)
のみにあらず。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
「その程度なら、君、語学を専攻するだけの
天稟
(
てんぴん
)
がある」と、先生は梵語の手並をためした上で、こんな思いきったお世辞を言う。
勉強記
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
これを
天稟
(
てんぴん
)
と思はないわけにいかない。どうかするとわたしは作者が贈答の句なぞに突き當つて、あまりの輕さにまごつくこともある。
桃の雫
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
されば始めは格別将来の目算もなくただ好きにまかせて一生
懸命
(
けんめい
)
に技を
研
(
みが
)
いたのであろうが
天稟
(
てんぴん
)
の才能に熱心が
拍車
(
はくしゃ
)
をかけたので
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その間になんら両性を隔つる
屏障
(
へいしょう
)
が存在しておらず、男女両性をして、共に
天稟
(
てんぴん
)
の智能を遺憾なく教育せしむることとなっている。
現代の婦人に告ぐ
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
▼ もっと見る
彼女はかなり
怜悧
(
れいり
)
で、たといクリストフの真の独創の才を見分けることはできなかったにしろ、その
稀有
(
けう
)
な
天稟
(
てんぴん
)
を感ずることができた。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
大した智慧のある男ではありませんが、眼と耳の良いことはガラツ八の
天稟
(
てんぴん
)
で、平次の爲には、これ程
誂
(
あつらへ
)
向のワキ役はなかつたのでした。
銭形平次捕物控:024 平次女難
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「それは、現在では、水かけ論だ。範宴が、果たしてそういう
天稟
(
てんぴん
)
の質であったか否かは、彼の成長を見た上でなければ決定ができない」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかもそが
天稟
(
てんぴん
)
の傾向たる写生の精神に至つては終始変ずる事なく、老年に及びてその観察はいよいよ鋭敏にその意気はいよいよ
旺盛
(
おうせい
)
となり
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その
天稟
(
てんぴん
)
の能力なるものは、あたかも土の中に埋れる種の如く、
早晩
(
いつか
)
萌芽を
出
(
いだ
)
すの性質は天然自然に備えたるものなり。
家庭習慣の教えを論ず
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
天稟
(
てんぴん
)
の正直と温和で
謙遜
(
けんそん
)
で
冷静
(
れいせい
)
な点において、なんぴとからも尊敬せられ、とくに富士男とは親しいあいだがらである。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
天稟
(
てんぴん
)
にうけえた一種の福を持つ人であるから、
商
(
あきな
)
いをするときいただけでも不用なことだと思うに、相場の勝負を争うことなどは
遮
(
さえぎ
)
ってお止めする。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
私は鳴尾君におしゃれの
天稟
(
てんぴん
)
のあるのを察知した。恐らく年頃の娘さんはこういう可愛い牧師さんから祝福を授けてもらいたくなるのではなかろうか。
西隣塾記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
もちろん
天稟
(
てんぴん
)
の素質もあったに相違ないが、また一方数奇の体験による試練の効によることは疑いもない事である。
俳諧の本質的概論
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
一、第二期は
天稟
(
てんぴん
)
の文才ある者能く業余を以てこれを為すべし。第三期は文学専門の人に非ざれば入ること能はず。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
もし彼に独自の道を切り開いて行く
天稟
(
てんぴん
)
がないのなら、どうか正直な勤勉な凡人として一生を終わってくれ。もうこの苦しみはおれ一人だけでたくさんだ
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
どうしたか聞いても見なかったが、——そうさ、まあ
天稟
(
てんぴん
)
の奇人だろう、その代り考も何もない全く金魚麩だ。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この子の巴里を迎い入れる
天稟
(
てんぴん
)
も私の好尚の第一意義に合致するのはうれしくも
遣
(
や
)
る
瀬
(
せ
)
ないことだった。
オペラの辻
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
しかるに専門家中には、その専門に
熱中
(
ねっちゅう
)
し、他の
天稟
(
てんぴん
)
の力を発達せしめない者がたくさんある。その
怠
(
おこた
)
りたる力をもって測れば遠くノルムに及ばぬ者も
間々
(
まま
)
ある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
姉上、私は彼女の美を
称
(
たた
)
えることあまりにも長きに失するように思われますが、しかし彼女はただに美しいばかりではなく、また聡明そのもののような
天稟
(
てんぴん
)
でした。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
すなわち自分のサークルの中で新しいことばを発する
天稟
(
てんぴん
)
なり、才能なりを持っている人々なのです。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
それに
天稟
(
てんぴん
)
ともいうべき筒井の言葉づかいの高雅なことは、高い官についた人の次女であることをおもわせ、
卑賤
(
ひせん
)
のそだちである彼に
勿体
(
もったい
)
ないくらいのものであった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
娘の時代に仕込み入れた人間としての教養と、
天稟
(
てんぴん
)
のしとやかな寂しいうちに包んだ
凛然
(
りんぜん
)
たる気象は、彼女をただのくだらない肉欲の犠牲者とのみはしておかなかった。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
高邁
(
こうまい
)
ノ精神ヲ喚起シ兄ガ
天稟
(
てんぴん
)
ノ才能ヲ完成スルハ君ガ天ト人トヨリ賦与サレタル天職ナルヲ自覚サレヨ。
徒
(
いたず
)
ラニ夢ニ悲泣スル
勿
(
なか
)
レ。努メテ厳粛ナル五十枚ヲ完成サレヨ。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
是
(
こゝ
)
に於て花魁の何うも……実に
取敢
(
とりあえ
)
ず即答の御返歌になるてえのは、大概の
歌詠
(
うたよみ
)
でも出来んことでございますのに、花魁は
歌嚢
(
うたぶくろ
)
俳諧嚢何んでも
天稟
(
てんぴん
)
備わった
佳人
(
かじん
)
なんで
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
解剖した屍體を
舊
(
もと
)
の如く縫合はせる手際と謂ツたら
眞個
(
まつたく
)
天稟
(
てんぴん
)
で、誰にも眞似の出來ぬ業である。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
其ばかりか家持は、歌人として時代を劃するだけの
天稟
(
てんぴん
)
を備へてゐた人であるのだ。黒人の開発した心境は、家持が此を伝へて、正しく展開させて、後継者に手渡して居る。
短歌本質成立の時代:万葉集以後の歌風の見わたし
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
何が何やらわからないという、はなはだ技術的に飛躍した
天稟
(
てんぴん
)
天才を持ち、そのほか、
百貨店
(
マガザン
)
の美しい売子の前で、しばしば故意にコン吉に恥辱を与えるとか、日常の買物は
ノンシャラン道中記:01 八人の小悪魔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
天稟
(
てんぴん
)
の感受性を備えて居て、それが累代の長い間に多くの高尚な芸術上の作品となって発露したり、又近年に及んでは、幾度か情深い奥床しい慈善事業となって現れたりした事や
アッシャア家の覆滅
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
『そうしたことは
天稟
(
てんぴん
)
だ』と、ある芸術家の感化のもとにいる善人たちはそう言う。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
天稟
(
てんぴん
)
の美しい情緒を花袋はもっている。それを禅に参ずる
居士
(
こじ
)
が懐くような自負心で
掩
(
おお
)
うている。実際のところ、かれの情緒はその自負心によって人生の煩累から護られていたのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
故に人の干渉を
恃
(
たの
)
み人の束縛を受るの人民は、なほ
窖養
(
こうよう
)
の花、盆栽の樹のその天性の香色を放ち、その
天稟
(
てんぴん
)
十分の枝葉を繁茂
暢達
(
ちょうたつ
)
せしむること能はずして、
遽
(
にわ
)
かにこれを見れば美なるが如きも
『東洋自由新聞』第一号社説
(新字旧仮名)
/
中江兆民
(著)
多計代は、芸術的な才能とか
天稟
(
てんぴん
)
とかいうものにたいしてひどく架空な考えをもっていた。自分が日本画の稽古をはじめたときも、しばらくすると師匠が平凡すぎるといって、中絶してしまった。
二つの庭
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
私は、その数年前から彼の弟の秀人と親しくしていたが、秀人は文学者としても卓越した才能の持主であるとともに、洋画家としても、詩人としても、稀に見る
天稟
(
てんぴん
)
の資質にめぐまれた大男だった。
叛骨・中野正剛:――主観的な覚え書き
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
兄が東京へ伴って教育したのであるから、学問のことは勿論、行儀作法から女の芸事にかけては、何一つ欠くるところがないまでに育て、そして
躾
(
しつ
)
けたのである。そして
天稟
(
てんぴん
)
の麗質の持ち主であった。
猿ヶ京
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
その
天稟
(
てんぴん
)
の性質を失って、意気地ない者と成りおわったのである。
進化論より見たる沖縄の廃藩置県
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
アントオニオ 誰か能く彼の
天稟
(
てんぴん
)
に参通し得る者ぞ。
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
われわれの
天稟
(
てんぴん
)
の精神が自己を肯定するのは、他を否定したり破壊したりすることによってではなく、他を吸収することによってである。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
全くガラッ八は、少し調子ッ外れですが、耳の早いことは
天稟
(
てんぴん
)
で、四里四方のニュースは、一番先に嗅ぎ付けて来てくれます。
銭形平次捕物控:017 赤い紐
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
わしは、範宴の
天稟
(
てんぴん
)
を愛す。わしは、範宴のすぐれた気質を愛す。見よ、彼は将来の法燈を、亡すか、興隆するか、いずれかの人間になろう。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
誰も彼も
挙
(
こぞ
)
って美しからんと努めた揚句は、
天稟
(
てんぴん
)
の体へ絵の具を注ぎ込む迄になった。芳烈な、或は絢爛な、線と色とが其の頃の人々の肌に躍った。
刺青
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
よくその子の性質を察して、これを教えこれを導き、人力の及ぶ所だけは心身の発生を助けて、その
天稟
(
てんぴん
)
に備えたる働きの頂上に達せしめざるべからず。
教育の事
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
プロータスは女子が
綺羅
(
きら
)
を飾るの性癖をもってその
天稟
(
てんぴん
)
の醜を
蔽
(
おお
)
うの
陋策
(
ろうさく
)
にもとづくものとせり。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
修業という事は、天才に到る方法ではなくて、若い頃の
天稟
(
てんぴん
)
のものを、いつまでも持ち堪へる為にこそ、必要なのです。退歩しないというのは、これはよほどの努力です。
炎天汗談
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
勝れた
天稟
(
てんぴん
)
を守るために富貴によって
傅
(
かしず
)
かれている者はまだ幸福である。優秀な天稟を「貧乏」のうちに露出して生くる者こそこの世の最も不幸なる者というべきであろう。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
私は非凡な話術と雰囲気醸成の
天稟
(
てんぴん
)
のあることは、いつぞや太宰さんが私に向って秘かに告白された事実に徴しても明らかなことである。太宰さんはその折かく云われたのである。
メフィスト
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
の如き数へ尽さず、これらの
什
(
じゅう
)
必ずしも力を用ゐし者に非ずといへども、皆善く蕪村の特色を現して一句だに他人の作とまがふべくもあらず。
天稟
(
てんぴん
)
とは言ひながら老熟の致す所ならん。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
今度も彼女は、自分の
天稟
(
てんぴん
)
に我ながら満足しずにはいられなかった。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
彼は美食に事欠かぬのみならず、
天稟
(
てんぴん
)
から、料理の秘奥を感取った。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
其老女たちすら、郎女の
天稟
(
てんぴん
)
には、舌を
捲
(
ま
)
きはじめて居た。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
“天稟”の意味
《名詞》
天稟(てんぴん)
生まれつきのもの。天性。天資。
(出典:Wiktionary)
天
常用漢字
小1
部首:⼤
4画
稟
漢検1級
部首:⽲
13画
“天稟”で始まる語句
天稟之
天稟学