可懷なつかし)” の例文
新字:可懐
つい、あの、とほりがかりに貸家札かしやふだましたものですから、誰方どなたもおいでなさらないとおもひますと、なんですか可懷なつかしくつて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
すだきかへるこゑつて、果敢はかないなかにも可懷なつかしさに、不埒ふらち凡夫ぼんぷは、名僧めいそう功力くりきわすれて、所謂いはゆる、(かぬかへる)の傳説でんせつおもひうかべもしなかつた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
暗夜やみよから、かぜさつ吹通ふきとほす。……初嵐はつあらし……可懷なつかしあきこゑも、いまはとほはるか隅田川すみだがはわた數萬すまんれい叫喚けうくわんである。……蝋燭らふそくがじり/\とまた滅入めいる。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
折々をり/\そら瑠璃色るりいろは、玲瓏れいろうたるかげりて、玉章たまづさ手函てばこうち櫛笥くしげおく紅猪口べにちよこそこにも宿やどる。龍膽りんだういろさわやかならん。黄菊きぎく白菊しらぎく咲出さきいでぬ。可懷なつかしきは嫁菜よめなはなまがきほそ姿すがたぞかし。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
若狹鰈わかさがれひ——だいすきですが、それ附木つけぎのやうにこほつてます——白子魚乾しらすぼし切干大根きりぼしだいこわんはまた白子魚乾しらすぼしに、とろゝ昆布こぶすひもの——しかし、なんとなく可懷なつかしくつてなみだぐまるゝやうでした
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こゑけた一人ひとりがあつた。……可懷なつかしこゑだ、とると、とんさんである。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、手酌てじやくひつかけながら叔父をぢつた——ふる旅籠はたご可懷なつかしい。……
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
可懷なつかしる、ゆかしくる、種痘うゑばうさうかゆる。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これですもの、可懷なつかしさはどんなでせう。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なみだぐましいまで、可懷なつかしい。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)