“口説(くどき)” の例文
賣てとかき口説(くどき)親子の恩愛(おんあい)孝(かう)と慈(じ)と暫時(しばし)は果(はて)も無りけり漸々(やう/\)にして妻(つま)お安は落(おつ)る泪(なみだ)を押拭(おしぬぐ)ひ夫程迄(それほどまで)に親を思ひ傾城遊女(けいせいいうぢよ)と成とても今の難儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すると、此(この)夏頃から、松公といふ、色白の若い蕎麥屋(そばや)の出前(でまへ)を口説(くどき)落して、金(かね)(大工の名)の目を忍んで、チヨイ/\宅(うち)へ引張込むやうになつた。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「親分、到頭萬七親分を口説(くどき)落しましたよ。船が停つたので、土手を追つかけると、よい鹽梅(あんばい)にすぐ追ひつきましてね」
彼が取澄せば女の方はよけい取澄して応じるものであるから、彼は自分のポーズを突きぬけて失敗するかも知れぬ口説(くどき)にのりだすだけの勇気がないのだ。
デカダン文学論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
かくるが愁(つ)らきぞとてしみ/″\と物語(ものがた)りつお八重(やへ)の膝(ひざ)に身(み)をなげ伏(ふ)して隱(か)くしもやらぬ口説(くどき)ごとにお八重(やへ)われを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
受けて無言(だまっ)て居るのですか覚えが無(ない)と言切てお仕舞いなさい貴方に限て其様な事の無いのは私しが知て居ますと泣きつ口説(くどき)つする様(さま)に一同涙を催(もよお)しました
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
口説(くどき)上手のどんづまりは大抵死ぬと云うから、今新五郎は死ぬと云ったら、まア新どんお待ちと来るかと思うと、お園は死ぬ程新五郎が厭だから何とも申しませんで
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「黒島口説(くどき)」という郷土舞踊を踊ってくれたのである。この人たちが出るときまった時、那覇の新聞が騒いで、県の恥になるから呼び返さなければいけないと主張した。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
女で印袢纏(しるしばんてん)に三尺帯を締めて、股引(ももひき)を穿(は)かずにいるものもある。口々に口説(くどき)というものを歌って、「えとさっさ」と囃(はや)す。好(よ)いとさの訛(なまり)であろう。石田は暫く見ていて帰った。
鶏 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
(何さ、行ってみさっしゃいご亭主(ていしゅ)は無事じゃ、いやなかなか私(わし)が手には口説(くどき)落されなんだ、ははははは。)と意味もないことを大笑(おおわらい)して、親仁(おやじ)は厩(うまや)の方へてくてくと行った。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「さて、東西東西(とざいとうざい)、魚(さかな)づくしはどうじゃいな。」「野菜づくしはどうじゃいな。」「鱈捕(たらとり)口説(くどき)はどうじゃいな。」「何とか何とかどうじゃいな。」「謎々何とかどうじゃいな。」
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
両肩が強(きつ)く骨立つて頸(くび)が益益長く見える、賤げな左の頬の黒子(ほくろ)と鍵の様に曲つた眼尻と、ひつくり返すやうな目付をして人を見る癖と、それから遇ひさへすれば口説(くどき)上手(じやうず)にくどくど云ふ口。
公判 (新字旧仮名) / 平出修(著)
線の太い歴史物よりは『南柯夢(なんかのゆめ)』や『旬殿実々記(しゅんでんじつじつき)』のような心中物に細かい繊巧な技術を示しておる。『八犬伝』でも浜路(はまじ)や雛衣(ひなきぬ)の口説(くどき)が称讃されてるのは強(あなが)ち文章のためばかりではない。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
内々考えてきた口説(くどき)の文句など、実際となると、なんの役にもたちません。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
時を措(お)いては、またべつな者が杯を持ってすすみ、献酬(けんしゅう)のあいだに説(と)く。或いは情(じょう)をもってすがる。或いは世情の嘆や官の腐敗を言って口説(くどき)にかかる。が、盧(ろ)の拒否はまるで巌(いわお)のようでしかない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして市島氏が椅子に腰を下すなり、もう口説(くどき)にかゝつた。
口説(くどき)けれ共勿々(なか/\)承引せず却て平左衞門を辱(はづか)しめ惡口(あくこう)しける故平左衞門は其身の惡き事も思はず渠(かれ)が惡口を大いに憤ほり心中に偖(さて)は此女は藤五郎と言男のある故に我を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「濡れ鼠の道行なんてのは新しいな。合の手にクシヤミの入る口説(くどき)も洒落(しやれ)て居るぜ」
先方(さき)の男が諾(うん)といえば自由結婚だなどと吹聴あそばし、また首(かぶり)をふればナニ此処(こゝ)な青瓢箪野郎、いやアに済していアがる、生意気だよ、勿体なくも私のような茶人があればこそ口説(くどき)もしたのさ
これ即ち口説(くどき)ですよ。衆生済度(しゅじょうさいど)といふですな。浮気も即ち救ふといふことです。口説は即ち女人を救ふ道ですよ。浮気によつて救ふ。肉体によつて救ふ。口説のカラ鉄砲といふのは、いけねえな。
金銭無情 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
去年から口説(くどき)通しなんだわ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
して田舍者(ゐなかもの)と笑はれなと心の有たけかき口説(くどき)また夫十兵衞に打向ひ隨分(ずゐぶん)道中(だうちう)を用心して濕氣(しつけ)に當り給はぬ樣娘の事は呉々も能(よき)やうに計(はか)らひ給へと懇切(ねんごろ)に言慰(なぐ)さめ互ひに名殘(なごり)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
勝「何うも御苦労さま、直ぐ参(めえ)りやす、お鍋どんまア好(い)いじゃねえか、お茶でも飲んでいきねえな、敵(かたき)の家(うち)へ来ても口は濡らすもんだわな、そんなに逃げてく事アねえや、己(おい)ら口説(くどき)アしねえからよ」
「乞食のような虎松を引入れて、大変な口説(くどき)をしたというのだろう」
私の知る口説(くどき)の原理はそれだけであった。
ジロリの女 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)