ぼん)” の例文
あらそ將棋せうきやぶれていて死ぬなどは一しゆ悲壯ひそう美をかんじさせるが、迂濶うくわつに死ぬ事も出來ないであらうげん代のせん棋士きしは平ぼん
父にとっては、法律を知っている人間は世の中で一番偉い人間で、ほかのものはみんなぼんくらな一段下な人間のように見えたのである。
預けられた茶山の塾の壁に「山ぼんみず、先生どん」の出奔遺書をのこして京地へ走った一書生の頼久太郎は、今では、山陽外史頼襄らいじょうの名を
梅颸の杖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それは売僧まいすたくぼんならずさ。対照コントラストのために態〻わざわざ鳴らないところを拵えて置いてお上りさんに有難がらせるのさ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
其頃そのころ武内たけのうち富士見町ふじみちやう薄闇うすぐら長屋ながやねづみ見たやうなうちくすぶつてながら太平楽たいへいらくならべる元気がぼんでなかつた
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
風励鼓行ふうれいここうして、やむなく城下じょうかちかいをなさしむるは策のもっともぼんなるものである。みつを含んで針を吹き、酒をいて毒を盛るは策のいまだ至らざるものである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あれは中井ぴんというんだ。顔が長いだろう? だから、長井ぴんとよぶ奴もある。僕の親友です」土門は豹一にそう説明した。そして、また呶鳴った。「森ぼん!」
青春の逆説 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
……即ち、もしもこの書類が公表されるか、又は司直の手に渡るかした暁には、如何にぼんクラな司法官でも、直ぐに吾輩を嫌疑者として挙げずにはおられないように出来ているのだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
うづむばかり又忠兵衞は忠相ぬしが活機くわつき明斷めいだんぼんならでいまあらためて婚姻こんいんむす𫥇人なかうどとまで成給はんと述給のべたまはるの有難さは是のみならず和吉お金も思ひがけなきお奉行のお聲掛りは一世のはれ巨萬きよまんの金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
歌にはいまだ用いざる新句法をも用いたるはその見識のぼんならぬを見るべし。
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
〔評〕南洲守庭吏しゆていりと爲る。島津齊彬なりあきら公其の眼光がんくわう烱々けい/\として人をるを見てぼん人に非ずと以爲おもひ、拔擢ばつてきして之を用ふ。公かつて書をつくり、南洲に命じて之を水戸みとれつ公に致さしめ、初めより封緘ふうかんを加へず。
上 迷迷迷めいめいめいまよい唯識所変ゆいしきしょへんゆえぼん
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「先にゃあ、去年の失敗しくじりがある。よもや今年は、のめのめ掠奪かすめられるようなぼんくらを警固としては出かけまい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よくもこう一個の身で、ぼんと非凡、大度たいどと細心、大見得おおみえとまるはだかとの、仕分けができるかとおもわれるほど、いわゆる達者な生命力を、日々、飽くことなく生きていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(おれでも……こんなぼんくらでも、眼がさめてやり直せば、少しずつでも、変るんだなあ)
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぬすでもねえ俺を、盗ッ人と間違えて、縄をかけやがッたぼんくら与力だ、そいつは」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だめ、わたしの眼は、そんなぼんくらじゃありませんよ。だけど、よそう、私だって、あんなことしたのは、重々悪い。しみじみと、別れてから、分かった。……やっぱりあなたのことを
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かたちぼんではない。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)