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冥々
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めいめい
ふりがな文庫
“
冥々
(
めいめい
)” の例文
または自分の想像した通り
幻
(
まぼろ
)
しに似た糸のようなものが、二人にも見えない縁となって、彼らを
冥々
(
めいめい
)
のうちに
繋
(
つな
)
ぎ合せているものか。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
鶴見はこれまで重荷にしていた痛苦がこの代衆生苦の御念願によって、
冥々
(
めいめい
)
のうちにあっていつの間にか救われているのだろうと思う。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
真綱はこれを憤慨して、「
塵
(
ちり
)
起るの路は
行人
(
こうじん
)
目を
掩
(
おお
)
う、
枉法
(
おうほう
)
の場、
孤直
(
こちょく
)
何の益かあらん、職を去りて早く
冥々
(
めいめい
)
に入るに
加
(
し
)
かず」
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
地
(
つち
)
の下の、
仄白
(
ほのじろ
)
い寂しい
亡霊
(
もうれい
)
の道が、草がくれ
木
(
こ
)
の葉がくれに、
暗夜
(
やみ
)
には
著
(
しる
)
く、月には
幽
(
かす
)
けく、
冥々
(
めいめい
)
として
顕
(
あら
)
われる。
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
以て
冥々
(
めいめい
)
の間に自家の醜を
瞞着
(
まんちゃく
)
せんとするが如き
工風
(
くふう
)
を
運
(
めぐ
)
らすも、
到底
(
とうてい
)
我輩の筆鋒を
遁
(
のが
)
るるに
路
(
みち
)
なきものと知るべし。
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
▼ もっと見る
そして、御壇ノ
帳
(
とばり
)
の蔭に
冥々
(
めいめい
)
と立ち並んでいる先祖代々の位牌の御厨子を、
微小
(
みしょう
)
な
灯
(
ほ
)
ゆらぎの中に、じっと見あげた。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかしこの自動車を見た時、——殊にその中の棺を見た時、何ものか僕に
冥々
(
めいめい
)
の
裡
(
うち
)
に或警告を与へてゐる、——そんなことをはつきり感じたのだつた。
凶
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一度
(
ひとたび
)
は絶えし恋ながら、なほ
冥々
(
めいめい
)
に行末望あるが如く、さるは、彼が昔のままの
容
(
かたち
)
なるを、今もその
独
(
ひとり
)
を守りて、時の到るを待つらんやうに
思做
(
おもひな
)
さるるなりけり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
冥々
(
めいめい
)
のうちに作家チェーホフを支え導いていた
端倪
(
たんげい
)
すべからざる芸術的
叡知
(
えいち
)
の存在を明かすとともに、この叡智の発動形式の一端に私達を触れさせて
呉
(
く
)
れることである。
チェーホフの短篇に就いて
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
これみなその先達の諸子が
冥々
(
めいめい
)
黙々のうちに当時の大勢より支配せられたるを知るべきなり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
よしこの
疾
(
やまい
)
痊
(
い
)
ゆとも一たび絶えし縁は再びつなぐ時なかるべきを感ぜざるにあらざるも、なお二人が心は
冥々
(
めいめい
)
の
間
(
うち
)
に通いて、この愛をば
何人
(
なんびと
)
もつんざくあたわじと心に
謂
(
い
)
いて
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
悔い改める
望
(
のぞみ
)
のない男であるから、必ず
冥々
(
めいめい
)
の
裏
(
うち
)
に神罰を
蒙
(
こうむ
)
るであろうというのである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
冥々
(
めいめい
)
の化ということがある。夫人の長い生涯の間の感化がそれである。いつとは知れず、その感化がおれの体に浸み込んだのだ。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
これは
公
(
おおや
)
けにこそ明言しないが、向うでも腹の底で正式に認めるし、僕も
冥々
(
めいめい
)
のうちに彼女から僕の権利として要求していた事実である。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この国には山にも森にも、あるいは家々の並んだ町にも、何か不思議な力が
潜
(
ひそ
)
んで居ります。そうしてそれが
冥々
(
めいめい
)
の
中
(
うち
)
に、私の使命を
妨
(
さまた
)
げて居ります。
神神の微笑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ここは
冥々
(
めいめい
)
の神威犯すべからずと
畏
(
おそ
)
れ
敬
(
うやま
)
って、御返上申しあげておくのが北条家のためでもあり、行く末かけて、泰平長久の策とも、自分には考えられるが
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いかにも人は
籠
(
こも
)
らぬらしい、
物凄
(
ものすさま
)
じき
対岸
(
むこう
)
の崖、炎を宿して
冥々
(
めいめい
)
たり。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
然
(
しか
)
れども彼らの真意の開国に傾きたるが如きは、また
冥々
(
めいめい
)
の
裡
(
うち
)
にこれを察するを得べし。何んとなれば彼らの中には時務的経綸において、他の二派に対し、一頭地を
抽
(
ぬき
)
んでたるもの多ければなり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
冥々
(
めいめい
)
のうちに、
漠然
(
ばくぜん
)
とわが脳中に、長谷川君として迎えるあるものが存在していたと見えて、長谷川君という名を聞くや否やおやと思った。
長谷川君と余
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
実に大浦の武士道を
冥々
(
めいめい
)
の
裡
(
うち
)
に
照覧
(
しょうらん
)
し給う神々のために擦られたのである。
保吉の手帳から
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
さても明日の世はまた、
冥々
(
めいめい
)
としてわからない。今日が、平和というたとて、
生死流転
(
しょうじるてん
)
、三界苦海、色に、酒に、金に、
跳猿
(
ちょうえん
)
の迷いから
醒
(
さ
)
めぬものは、やがて、思い知る時があろうというもの。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二人は自分たちのこの態度に対して何の注意も
省察
(
せいさつ
)
も払わなかった。二人は二人に特有な因果関係を
有
(
も
)
っている事を
冥々
(
めいめい
)
の
裡
(
うち
)
に自覚していた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
冥々
(
めいめい
)
たる真の闇が、辺りを塗りつぶす。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二人の間柄がすれすれになると、細君の心は段々
生家
(
さと
)
の方へ傾いて行った。生家でも同情の結果、
冥々
(
めいめい
)
の
裡
(
うち
)
に細君の肩を持たなければならなくなった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
生死流転の
巷
(
ちまた
)
冥々
(
めいめい
)
たり
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
出せなければ楽しむ訳に参らんからやむをえずこの過程を
冥々
(
めいめい
)
のうちにあるいは理論的に覚え込むのであります。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
始めから相談して、こう見ようじゃありませんかと、規約の束縛を
冥々
(
めいめい
)
のうちに受けている。そこで人間の頭が複雑になればなるほど、観察される事物も複雑になって来る。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし事実上彼らはパノラマ的のものをかいて平気でいるところをもって見ると公然と無筋を
標榜
(
ひょうぼう
)
せぬまでも
冥々
(
めいめい
)
のうちにこう云う約束を
遵奉
(
じゅんぽう
)
していると見ても
差支
(
さしつかえ
)
なかろう。
写生文
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
マクベスは
妖婆
(
ようば
)
、毒婦、
兇漢
(
きょうかん
)
の行為動作を
刻意
(
こくい
)
に描写した悲劇である。読んで冒頭より門番の
滑稽
(
こっけい
)
に至って
冥々
(
めいめい
)
の際読者の心に生ずる唯一の惰性は怖と云う一字に帰着してしまう。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
実は金の工面を思い立ってから、自分でもこの弱点を
冥々
(
めいめい
)
の
裡
(
うち
)
に感じていたのである。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
が、やがて、この美くしさを
冥々
(
めいめい
)
の
裡
(
うち
)
に打ち崩しつつあるものは自分であると考え出したら悲しくなった。彼は今日もこの美くしさの一部分を曇らす為に三千代を呼んだに違なかった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
これは漱石が一言の争もせず
冥々
(
めいめい
)
の
裡
(
うち
)
にこの御転婆を屈伏せしめたのである。
倫敦消息
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
せっかくの好意で
調
(
ととの
)
えてくれる金も、
二三日
(
にさんち
)
木賃宿
(
きちんやど
)
で夜露を
凌
(
しの
)
げば、すぐ無くなって、無くなった暁には、また
当途
(
あてど
)
もなく流れ出さなければならないと、
冥々
(
めいめい
)
のうちに自覚したからである。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この
点
(
てん
)
から見ると主人の
痘痕
(
あばた
)
も
冥々
(
めいめい
)
の
裡
(
うち
)
に妙な
功徳
(
くどく
)
を施こしている。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
冥
常用漢字
中学
部首:⼍
10画
々
3画
“冥々”で始まる語句
冥々裡
冥々裏
冥々昏々
冥々隠々裏