“じっ”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
30.8%
25.4%
凝乎11.4%
凝然10.5%
8.7%
6.6%
1.8%
0.6%
静然0.6%
祖父0.3%
寂然0.3%
不動0.3%
0.3%
晏然0.3%
0.3%
0.3%
肅然0.3%
0.3%
静乎0.3%
静止0.3%
静粛0.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
あたかも戸外の天気の様に、それが静かにじっと働らいていた。が、その底には微塵みじんごとき本体の分らぬものが無数に押し合っていた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三吉は姉の肉声を通して、暗い座敷ろうの格子に取縋とりすがった父の狂姿を想像し得るように思った。彼はお種の顔をじっと眺めて、黙って了った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
黄昏たそがれ——その、ほのぼのとした夕靄ゆうもやが、地肌からわきのぼって来る時間になると、私は何かしら凝乎じっとしてはいられなくなるのであった。
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
姉のことを考えたり会いたくなったりしたとき、私はこれを出して凝然じっと姉のやさしい顔や言葉に触れるような思いをして楽しんでいた。
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
で、野原の雪の中に蹲踞うずくまってじっと白装束の三つの影を見送っていると、最初に立ったのは、老人のようで頭に何か白いものをかぶっている。
北の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
朝、眼を覚して見ると、もう自分は起きていて、まだ寝衣ねまきのまゝ、詰らなそうに、考え込んだ顔をして、じっと黙って煙草を吸っていた。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
動かずにいる体が少し寒さを感じて来た頃、心あてにじっと見詰めていた方向から、水桶を重そうに背負った男の姿がにじみ出した。
木曽駒と甲斐駒 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
源助、宮浜の児を遣ったあとで、天窓あたま引抱ひっかかえて、こう、風の音を忘れるようにじっと考えると、ひょい、と火をるばかりに、目に赤く映ったのが、これなんだ。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、きりで刺すような寒さに身内がぞくぞくしてとて静然じっとしていられないので、彼女は再び歩きだした。
碧眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
勉が寝不足で蒼く乾いた顔を洗う間、祖父じっちゃんは草箒で格子の前あたりをちっと掃き、掃除のすんだ部屋へ上って坐った。アヤがチャブ台を出す。
小祝の一家 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
祖父じっちゃん祖母ばっちゃんが来て暮すようになってから、すっかり睡眠不足になった勉は、頻繁に耳のうしろの傷を押えながら、むっつりして乙女の云うことを聞くだけで
小祝の一家 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
昨日きのう……たしか昨日きのうと思うが、を負ってからう一昼夜、こうして二昼夜三昼夜とつ内には死ぬ。何のわざくれ、死は一ツだ。いっ寂然じっとしていた方がい。身動みうごきがならぬなら、せんでもい。
斯う寂然じっとしていた方がましであろう。
私はすぐ節穴から離れようとしたが、そうすれば節穴が明るい記帳場のひかりを透すであろうと思って、わざと不動じっとしていた。
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
美しい英子姫の瞳が、非難するともなく、自分の方をじっと見詰めて居るのです。
判官三郎の正体 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
お杉は消えかかる焚火を前にして、かたえの岩に痩せた身体をせかけたまま、さながら無言のぎょうとでも云いそうな形で晏然じっと坐っていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
無人はきびしい眼光をじっと安兵衛の顔に射向けた。満々たる不平が、すこし茶いろなひとみの底から燃えている。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あなた僕の履歴を話せっておっしゃるの? 話しますとも、じっき話せっちまいますよ。だって十四にしかならないんですから。別段たいしたよろこびも苦労もした事がないんですもの。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
と七輪の上で、火の気ににぎやかな頬が肅然じっと沈んだ。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
突然じっ血、吐血、下血、創傷再出血を起こして死亡した。これは還流血液中の血小板が破壊され、出血性素因を生じたものと思われる。兎での実験がある。
長崎の鐘 (新字新仮名) / 永井隆(著)
父はそれを静乎じっと眺めていたが、やっと落着いてそして娘に言った。
みずうみ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
運動場であるベース・ボールの練習も、空を飛ぶ球の動きも、廊下から見物するものをじきに飽きさせた。皆な静止じっとしていられなかった。何か動くことを思った。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
能登守は静粛じっとして聞いていたけれども、座中にはもう聞くに堪えない者が多くなって、雲行きが穏かでないのを、太田筑前守が、この時になってようやく調停がましき口を利き出しました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)