高楼たかどの)” の例文
旧字:高樓
この町の別な処にある高楼たかどのの静かな一室に、生きているとは思われない、大理石のような姿をした一人の女が横たわっていた。
一寸ちょいと、其の高楼たかどの何処どこだと思ひます……印度インドの中のね、蕃蛇剌馬ばんじゃらあまん……船着ふなつきの貿易所、——お前さんが御存じだよ、私よりか
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
前黄門さきのこうもん松平龍山公の世にも薄命なる隠遁いんとん高楼たかどの、含月荘の楼上ろうじょう今宵こよいもまた、ポチと夕ぐれの燈火ともしびが哀れにいた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
歌舞伎かぶきの舞台では大判事清澄の息子久我之助こがのすけと、その許嫁いいなずけ雛鳥ひなどりとか云った乙女おとめとが、一方は背山に、一方は妹山に、谷にのぞんだ高楼たかどのを構えて住んでいる。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一緒にいるとは名目だけで、小次郎とも浮藻ともかけ離れ、別棟の高楼たかどのに一人で住んでいるのであった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
早く頬摺ほおずりしてひざの上に乗せ取り、護謨ゴム人形空気鉄砲珍らしき手玩具おもちゃ数々の家苞いえづとって、喜ぶ様子見たき者と足をつまて三階四階の高楼たかどのより日本の方角いたずらにながめしも度々なりしが
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
日に一度は川口の船屋敷へ出張して上荷あげに積荷の宰領をしていたが、夏も終って、川口に白々しらしらと秋波が立つ頃になると、船溜ふなだめにいる船頭や水子かこが、このごろ谷津の斜面なぞえにあるお邸の高楼たかどのに、一晩中
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
この悲劇の舞台になった、南伊豆の別荘、かつえんの行者が、神斧鬼鑿しんぷきさくの法術で彫り成したという伝説の凄まじい断崖の上の高楼たかどの——名づけて臨海亭りんかいていというのも、実は志津子夫人の我儘な願いを容れて
屋根に鐘鳴る高楼たかどのそびえし塔の数多く
高楼たかどのわれはのぼりゆき
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そもいずくよりなげうちたらんと高楼たかどのを打仰げど、それかと見ゆる影も無く、森々と松吹く風も、助けを呼びて悲しげなり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一切の国政をみな家臣にまかせて、光風霽月こうふうせいげつを友とし、九年の間も、この高楼たかどのから降りないせいか、老公の耳朶じだまなじりには、童顔のうちに一種の仙味がある。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高楼たかどの欄干おばしまには姫が一人
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
四 高楼たかどの
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いとも危うく身を遁れて、泰助は振返り、きっ高楼たかどのを見上ぐれば、得三、高田相並んで、窓より半身を乗出のりいだし、逆落さかおとしに狙う短銃の弾丸たまは続いて飛来らん。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
老公のいる含月荘の高楼たかどのは、この四層めの一室だった。三つの鉄の梯子を登って、国家老の大村郷左衛門は、やがて、いちばん上の一室へ畏る畏る伺候しこうした。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
を思うさえ恋となる、天上ののりを越えて、おきてを破って、母君が、雲の上の高楼たかどのの、玉の欄干らんかんにさしかわす、かつらの枝を引寄せて、それにすがって御殿の外へ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
高楼たかどのに百千の燈籠をかざり、門という門は、これを花と緑でうずめ、閣下もまた、吉例の“春祭りの行列”へおくり出しあるなど、人民と共に楽しむ事実をお示しあらねばなりません
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると貴客あなた、赤城の高楼たかどのの北の方の小さな窓から、ぬうと出たのは婦人おんなの顔、色真蒼まっさお頬面ほうッぺたは消えて無いというほどやせっこけて、髪の毛がこれからこれへ(ト仕方をして)こういう風
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
青銅瓦せいどうがわらのご殿てん屋根やね樹林じゅりんからすいてみえる高楼たかどのづくりのしゅ勾欄こうらんしば土手どてにのびのびと枝ぶりをわせている松のすがたなど城というよりは、まことに、たちとよぶほうがふさわしい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こう言ううちにも、明さんのおっかさんが、花のこずえと見紛うばかり、雲間を漏れる高楼たかどのの、にじ欄干てすりを乗出して、叱りもにらみも遊ばさず、の可愛さに、鬼とも言わず、私を拝んでいなさいます。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちょうど、まだあかしを入れたばかりの暮方くれがたでね、……其の高楼たかどのから瞰下みおろされる港口みなとぐち町通まちどおりには、焼酎売しょうちゅううりだの、雑貨屋だの、油売あぶらうりだの、肉屋だのが、皆黒人くろんぼに荷車をかせて、……商人あきんどは、各自てんでん
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
哥太寛こたいかんが、——今夜だわね——其の人たちを高楼たかどのまねいて、話の折に、又其の事を言出いいだして、鸚鵡おうむの口真似もしたけれども、分らない文句は、鳥の声とばツかし聞えて、そばで聞く黒人くろんぼたちも
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……高い廊下をちらちらと燭台しょくだいの火が、その高楼たかどの欄干てすりを流れた。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)