)” の例文
わが旧時代の芸文はいずれか支那の模倣にらざるはない。そはあたかも大正昭和の文化全般の西洋におけるものと異るところがない。
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
坦々たる古道の尽くるあたり、荊棘けいきよく路をふさぎたる原野にむかひて、これが開拓を勤むる勇猛の徒をけなす者はきようらずむば惰なり。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
人にして人にらず、画家にして画かきに非ずとさえ見做みなされる事が、日本では殊の外あったようである。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
りに人間にんげん満足まんぞく安心あんしんとが、その身外しんがいるにらずして、自身じしんうちるとして、またりに苦痛くつう軽蔑けいべつして、何事なにごとにもおどろかぬようにしなければならぬとして、
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
また竹は年所を経れば必ず花さくものなるかというにあえて必ずしもしかるにらず。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
されど、此処彼処ここかしこに往々急峻なる地隙、または峻坂なきにしもらず。
武士道の山 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
さうふやうにかんがへてると、我國わがくに經濟界けいざいかい基礎きそ堅固けんごのものにらずして早晩さうばん變動へんどうすべき状態じやうたいのものであつたので、あたかひと自分じぶん收入しうにふでは生計費せいけいひ不足ふそくぐるをもつ毎月まいつき借入金かりいれきんをして
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
然レドモソノ考証研覈けんかく如何いかんニ至ツテハ彼ノもっとも詳確ニシテ我ノ甚シク杜撰ずさんナルヤもとヨリ日ヲ同ジクシテ語ルベキニラズ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
晴れたる風景画は晴れたる日の幾日かを要求し、雨の日の絵は同じ雨を毎日註文ちゅうもんして見たりするが、それは画家のためのみの存在にはらず、勝手気ままに晴れて行く。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
りに人間にんげん滿足まんぞく安心あんしんとが、其身外そのしんぐわいるにらずして、自身じしんうちるとして、またりに苦痛くつう輕蔑けいべつして、何事なにごとにもおどろかぬようになければならぬとして、て、だい貴方あなた自身じしんなんもとづいて
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
暗示はすなはちこれ幻想にらずや。這般しやはん幽玄の運用を象徴と名づく。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
詩ハ淡雅たんがたっとブトイヘドモマタ郷野きょうやノ気有ルベカラズ。いにしえ応劉鮑謝李杜韓蘇おうりゅうほうしゃりとかんそ皆官職アリ。村野そんやノ人ニラズ。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
西洋近代思潮は昔日の如くわれを昂奮刺㦸せしむるに先立ちていたずらに現在のわれを嫌悪けんおせしめ絶望せしむ。われは決して華々はなばなしく猛進奮闘する人をむにらず。
矢立のちび筆 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
一の弊あるも九の徳あらばその弊何ぞ言ふに足らんや。風流の人は言ふ風流人の淫行は人間の淫行にして野獣の淫にらず、人情の美をもといとするを忘れざるなり。
猥褻独問答 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
然るに甲斐守はがんとして之を聴かず、おのれは徳川氏の臣にして罪を幕府に獲たのである。幕府より赦免の命を受くるにらざればわたくしに配所を去るわけにはゆかないと言った。
枇杷の花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
夫故それゆえ江戸には門戸を維持するあたはず始終田舎へ而已のみ飄泊ひょうはく致し候次第なり。『安政絶句』に相洩し候はあえて意あるにらず。唯游歴而已致し候故むことを得ず相洩し候儀に御座候。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一 詩歌しいか小説は創意を主とし技巧をひんとす。技芸は熟錬を主として創意を賓とす。詩歌小説の作措辞そじ老練に過ぎて創意乏しければ軽浮けいふとなる。然れどもいまだ全く排棄すべきにらず。
一夕 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)