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逆茂木
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さかもぎ
ふりがな文庫
“
逆茂木
(
さかもぎ
)” の例文
石弩
(
いしゆみ
)
、針縄、
逆茂木
(
さかもぎ
)
などで守られた
柵門
(
さくもん
)
を三つも通って、一群の百姓と縄付きの大坊主が、大勢の賊に前後をかこまれて登って来た。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蜻蛉
(
とんぼ
)
でも来て留まれば、城の
逆茂木
(
さかもぎ
)
の威厳を
殺
(
そ
)
いで、抜いて取っても
棄
(
す
)
つべきが、
寂寞
(
じゃくまく
)
として、三本竹、風も無ければ動きもせず。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
義仲勢は、宇治も勢多も橋板をはずし、川底に
乱杭
(
らんぐい
)
を打ちこみ、そこへ縦横に大綱を張り廻らし、またこれに
逆茂木
(
さかもぎ
)
をつないで流してある。
現代語訳 平家物語:09 第九巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
本間、渋谷の手の者が、真っ先立って突き進み、堀の中へこみ入りこみ入り、忽ち
切岸
(
きりぎし
)
の下まで押し進み、
逆茂木
(
さかもぎ
)
を引きのけ打ち入ろうとした。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
挙げて
麾
(
さしまね
)
かるることもあらば返すに
駒
(
こま
)
なきわれは何と答えんかと予審廷へ出る心構えわざと
燭台
(
しょくだい
)
を
遠退
(
とおの
)
けて顔を見られぬが一の手と
逆茂木
(
さかもぎ
)
製造のほどもなくさらさらと
衣
(
きぬ
)
の音
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
▼ もっと見る
こうしてムクの歩み行く方向を見ると、暗い中でも物を見るに慣らされた眼が、ハッキリと、自分のこしらえた
生田
(
いくた
)
の森の
塀
(
へい
)
と、それから
築
(
つ
)
き出した
逆茂木
(
さかもぎ
)
へと続いて行きました。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
吹き通しも夏はせいせいして心持ちがいいものだ、不用心だって金のないところに盗難のあるはずはない。だから主人の家に、あらゆる
塀
(
へい
)
、垣、
乃至
(
ないし
)
は
乱杭
(
らんぐい
)
、
逆茂木
(
さかもぎ
)
の類は全く不要である。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
逆茂木
(
さかもぎ
)
がしつらえてあるので、頭を
低
(
た
)
れて、入ろうとしたが、入れそうもないので、恨めしそうに佇んで、ジッと見詰めている、私たちは逆茂木と牛の間に割り込んで、身を平ったく、崖につけて
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
拗
(
ねじ
)
けくねった木がその間に根を張り枝を拡げて、
逆茂木
(
さかもぎ
)
にも似ているが、それがなければ
到底
(
とて
)
も登れぬ場所がある。岩壁や木の根には諸所に
氷柱
(
つらら
)
が下っていた。雨の名残りの
雫
(
しずく
)
が凍ったものであろう。
皇海山紀行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
ふところ深くつけ入って
鍔
(
つば
)
ぜり合いといこうとそのまま、飛び込んで来る……そこを! 腰をおとしざま、逃げるように退った喬之助、低めた剣を立て直して、つるぎの
逆茂木
(
さかもぎ
)
、下正眼につけたうえ
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「水練の達者なものは名のり
出
(
い
)
でよ。河底へ
潜
(
もぐ
)
って、
逆茂木
(
さかもぎ
)
へ縦横に張りめぐらしてある荒縄を
断
(
た
)
ち切れ。——われと思わんものはないか」
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
城の前には、
能美河
(
のうみがわ
)
、
新道
(
しんどう
)
河が流れ、この二つの川の落ち合うところは、大木を
伐
(
き
)
って
逆茂木
(
さかもぎ
)
とし、水流をせき止めるために杭を打ち渡した。
現代語訳 平家物語:07 第七巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
根を掘上げたばかりと思う、見事な蓮根が
柵
(
さく
)
の
内外
(
うちそと
)
、浄土の
逆茂木
(
さかもぎ
)
。勿体ないが、
五百羅漢
(
ごひゃくらかん
)
の
御腕
(
おんうで
)
を、組違えて揃う中に、
大笊
(
おおざる
)
に
慈姑
(
くわい
)
が二杯。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ところでおとしあなは掘ったかな?
逆茂木
(
さかもぎ
)
をうんとこさこしらえて置け!」またも銅兵衛わめき立てる。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
逆茂木
(
さかもぎ
)
から海辺へかけての生田の森が、ワッと喚声でわき上ったことです。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「このたびは、そちの部下のみで、小勢になるぞ。その小勢を
紛
(
まぎ
)
らすため、敵の
逆茂木
(
さかもぎ
)
、道の木々、所きらわず、火をかけろ、火を用いろ!」
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一時
(
ひとしきり
)
、芸者の数が有余ったため、
隣家
(
となり
)
の平屋を出城にして、
桔梗
(
ききょう
)
、
刈萱
(
かるかや
)
、
女郎花
(
おみなえし
)
、垣の
結目
(
ゆいめ
)
も
玉章
(
たまずさ
)
で、
乱杙
(
らんぐい
)
逆茂木
(
さかもぎ
)
取廻し、本城の
欄
(
てすり
)
の
青簾
(
あおすだれ
)
は、枝葉の繁る二階を見せたが
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
木戸をしつらえ、
逆茂木
(
さかもぎ
)
を植え、関を設けた
玉置
(
たまき
)
の荘司の、物々しい館が遥かあなたに、木立ちの間にすけて見える、そういう地点まで辿りついた時には、昼を少し過ごしていた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
二人は馬にも乗らず
藁草履
(
わらぞうり
)
をはき、弓杖をついて、その夜城内へ忍び入った。生田の森の
逆茂木
(
さかもぎ
)
を乗り越えて城の中へ乗りこめば、星空の夜に城郭はおぼろにかすみ、お互の鎧の色さえも見えぬ。
現代語訳 平家物語:09 第九巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
そこは、また、石岡へ出る
道路
(
みちすじ
)
でもある。当然、そこへも万一を
慮
(
おもんぱ
)
かって、
逆茂木
(
さかもぎ
)
を仕掛けておいたはずであるのに——
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「これぞ、
自然
(
おのずから
)
なる要害、樹の根の
乱杭
(
らんぐい
)
、
枝葉
(
えだは
)
の
逆茂木
(
さかもぎ
)
とある……広大な空地じゃな。」
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
空濠
(
からぼり
)
、
逆茂木
(
さかもぎ
)
などの工はただちに止めさせたがいい。敵は三万にちかい大軍と聞きおよぶ。途上、
按
(
あん
)
じてまいったが、ここは守るに利のある地形とも見えぬ。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
渭水
(
いすい
)
の流れも
堰
(
せ
)
かれるほど、魏の軍馬はいちどに浅瀬へ馳け入った。一ヵ所や二ヵ所ではない。蜀軍はもちろん
逆茂木
(
さかもぎ
)
を引き、要所要所は
防寨
(
ぼうさい
)
で固めている。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
加うるに、干潟にも、
逆茂木
(
さかもぎ
)
やら
粗朶垣
(
そだがき
)
やらの障害はあったろうから、新田勢がここでの死闘は、これまでの、どこの戦闘よりは苦しかった。おそらくは義貞も、心中
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかも平家方では、夜来の情勢に緊張して、寝もやらず諸所に
篝
(
かがり
)
を焚き明かしている。陣所陣所の仮屋、はためく幕、
城戸
(
きど
)
、
逆茂木
(
さかもぎ
)
など、美しいばかり明滅して見える。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのため寄手は自分たちが設けておいた
柵
(
さく
)
や
逆茂木
(
さかもぎ
)
にさまたげられ、道にふみ迷い、あるいは谷にころげ落ち、十万余騎の攻囲軍も、残り少ないまでに討たれてしまった。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なぜ注意したといえば、あそこは
逆茂木
(
さかもぎ
)
の柵も古く、城壁も修理したばかりで、
磚
(
かわら
)
は古いのと新しいのと不揃いに積み畳まれている。……要するに、防塁の弱点が見えるのです
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
呂布は、城をめぐる泗水の流れに、
逆茂木
(
さかもぎ
)
を引かせ、武具兵糧も、充分城内に積み入れて
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そうか。……城外の河には
逆茂木
(
さかもぎ
)
をうちこみ、縄を張りめぐらし、鈴を
結
(
ゆわ
)
いつけ、岸には高く
柵
(
さく
)
を結いまわしてある寄手の警備に恐れて、
所詮
(
しょせん
)
、そちには突破できぬというのか」
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
敗軍をひきまとめた曹操は、河を隔てて岸一帯に
逆茂木
(
さかもぎ
)
を結いまわし、高札を立てて
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
うしろには
大山
(
たいざん
)
がそびえ、その麓をめぐる三十余里の官渡の流れは、自然の
濠
(
ごう
)
をなしている。曹操は、その水流一帯に、
逆茂木
(
さかもぎ
)
を張りめぐらし、大山の嶮に拠って固く守りを改めていた。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
南皮城
(
なんひじょう
)
の八門をとざし、壁上に
弩弓
(
どきゅう
)
を植え並べ、濠には
逆茂木
(
さかもぎ
)
を
結
(
ゆ
)
って、城兵の守りはすこぶる堅かったが、
襲
(
よ
)
せては返し、襲せては返し、昼夜新手を変えて猛攻する曹軍の根気よさに
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「甲賀坊、
矢頃
(
やごろ
)
の所へ
逆茂木
(
さかもぎ
)
は」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“逆茂木”の解説
逆茂木(さかもぎ)とは、戦場や防衛拠点で先端を尖らせた木の枝を外に向けて並べて地面に固定し、敵を近寄らせないようにした障害物。別名:逆虎落(さかもがり)、鹿砦(ろくさい)、鹿角砦、鹿角木。英語では、abatis、abattis、abbattis と呼ばれる。戦場では、単独もしくは鉄条網などと組み合わせて使用される。
(出典:Wikipedia)
逆
常用漢字
小5
部首:⾡
9画
茂
常用漢字
中学
部首:⾋
8画
木
常用漢字
小1
部首:⽊
4画
“逆”で始まる語句
逆
逆上
逆立
逆手
逆鱗
逆落
逆様
逆捻
逆襲
逆巻