貴人きじん)” の例文
それは先年せんねん西海せいかいはて崩御ほうぎょあらせられた貴人きじん御霊みたまであったが、それを拝すると共に眼前めさきくらんで馬から落ちたのだと云う噂であった。
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
中にはさんでいく一ちょう鎖駕籠くさりかごは——まさしく、桑名くわな羽柴秀吉はしばひでよしへおくらんとする貴人きじん僧形そうぎょう武田勝頼たけだかつより幽囚ゆうしゅうされているものと見られる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昔の貴人きじんの用ひた正しいやはらいだ仏蘭西フランス語は独りこの地にだけ行はれて居て、農夫も馬丁も俚語アルゴを用ひないのが特色ださうである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
中央に貴人きじん寝台しんだいがあり、あおい顔をした貴人が今や息を引取ろうとしていると、その周囲にきらびやかな僧衣に身を固めた青鬼赤鬼およそ十四五匹が
鬼仏洞事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
むかしからのつたへによりますと、垂仁天皇すいにんてんのうときに、天皇てんのう御弟倭彦命おんおとうとやまとひこのみこと薨去こうきよになつたさい、そのころ貴人きじんぬと、家臣かしんなどが殉死じゆんしといつて、おとも習慣しゆうかんがありましたので
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
貴人きじん(六五)過端くわたんり、しかうして説者ぜいしやあきらかに善議ぜんぎもつ其惡そのあくせばすなはあやふし。
わたしはこの貴人きじんたちにいつもていねいなことばを使っています——さあ、この玉のようなまるい目をしてあなたを見てござる小さいお子さんに、いまは何時だか教えてあげてください
すくはんとの其孝心が天につうじ神やほとけ冥助めいじよにて賣代うりしろなしたるあかつきには如何なる貴人きじん有福いうふくの人に愛され請出され却つて結構けつこうの身ともなり結句けつく我手にそだちしより末の幸福しあはせ見る樣になるまじき者にも非ずよく覺悟かくご
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とも知らず——晴季は、障子しょうじめてほッとしたもののように、また小声で、目のまえにいる僧形そうぎょう貴人きじんへ話しかけていたことばをつづける。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてその瀟洒しょうしゃたる風采ふうさい偉貌いぼうとは、おのずから貴人きじんすえであることを現わしているかのようであった。彼は、いつとなく、銀座や新宿のカフェ街に出入することを覚えてしまった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
(六九)貴人きじんけいて、みづかもつこうさんとほつするを、説者ぜいしやあづかりればすなはあやふし。(七〇)かれあらはだすところことり、すなはみづかもつ也故たこすに、説者ぜいしやあづかりればすなはあやふし。
あいや、それにおわす貴人きじんのごそうに申しあげまする。われわれは武田家恩顧たけだけおんこのともがら、ここにいますは、おいえのご次男伊那丸さまにおわします。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれで悄悴しょうすいしていなかったら、貴人きじんの顔だよ。それから例の心霊実験会だ。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)