評定ひょうじょう)” の例文
「これを、勝家の部屋へとどけて参れ。明朝こくまでに、これにしるしてある者ども一同、評定ひょうじょうの間に集まるようにと申し添えて」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いねは子供たちに向って皆で好きな名をつけてくれといった。そういわれる前から子供たちは名つけの評定ひょうじょうでやかましかった。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
しかしそのゝちも、いくさ評定ひょうじょうのたびごとに御いんきょとながまさ公との御料簡ごりょうけんがちごうて、とかくしっくりいかなんだようでござりました。
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
酒肴しゅこうが出ると座がみだれて、肝腎の相談が出来ないというので一どう素面すめんである。ズラリと大広間に居流れて評定ひょうじょうの最中だ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「早馬鎌倉へ馳せつくのさえ、相当日数がかかる筈じゃ。それからいろいろ評定ひょうじょうがあって、それから返辞の早馬が来る。…ずっとずっと先のことよ」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
千円くれると言ったら、誰かそれでも暗い処へ一日来る気は有るか、この評定ひょうじょうが囚人の間で始まった時、一人として御免をこうむると答えない者はなかった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
加うるにその大将あるいは参謀官というような者は、一向戦争の評定ひょうじょうをするでもなければなんでもない。とんと平気なもので博奕ばくちばかりやって居たそうです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「仕様がありませんね、どういたしましょう。」「こうしてはどうです。」「それも不可いけません。」「やはり仕様がありません。」などと小田原評定ひょうじょう果し無し。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
皆のものが期せずして門口かどぐちまで駈け出しました。そして、暗い町の左右を眺めながら、あちらへ逃げた、こちらへ逃げたと、下らない評定ひょうじょうに時を移したものです。
盗難 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
折よく重役の評定ひょうじょうがはじまって追討派と非追討派とが、今論争中だという報があったので、慎九郎はその方へ耳を傾け、宮内からなるべく遠ざかろうとしたかった。
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
虎船長は、無念やる方なく、しばし黙考していたが、しばらくして、幹部を呼んで評定ひょうじょうを開いた。その結果、あらためてノーマ号に対して、信号を送ることとなった。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
また大学の弟の遠山勘解由かげゆを、いまだに評定ひょうじょう役にしておくのは不審である、などと述べ、さらに
さて、こうして七兵衛が、三田の四国町の薩摩屋敷の、芝浜へ向いた方の通用門の附近を通りかかった時分、中ではこんな評定ひょうじょうをしていたが、塀外へいそとの道の両側にはおびただしい人出。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼はその経済を以て、同僚にはかれり、同僚みな否とせり。彼は重ねて老中、若年寄、寺社奉行、勘定奉行、長崎奉行、大目付、御目付等の大評定ひょうじょうを開けり。衆議みなこれを否とせり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
是をどうするがよいかと評定ひょうじょうまちまちの折柄おりから、今度は川上の方から牛に似て更に大きなまた一個の怪物が、流れについて下ってきて、前からあった岩のような黒いものにひしと取り付き
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ふたりは往来に立ってその評定ひょうじょうにしばらく時を移したが、なにぶんにも暗い中の出来事で相手のすがたを見とどけていないのであるから、いつまで論じあっていても決着のつく筈がなかった。
半七捕物帳:43 柳原堤の女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
誰にも分りませんので、誰いい出すとなく評定ひょうじょうが初まりました。
部屋へ戻ってから、又評定ひょうじょうだった。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
おそらくは、主従しゅじゅうの軍議もこれが最後のものであろう。軍議というも、守るも死、攻むるも死、ただ、その死に方の評定ひょうじょうである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あとから追いついてきた男の子もいっしょにかたまって評定ひょうじょうした。女はだれも声をたてず、男の子がなにかいうたびにその顔に目をそそいだ。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
これは捨て置くべき場合ではないとして、親戚しんせき旧知のものがにわかな評定ひょうじょうのために旧本陣に集まった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
評定ひょうじょう無用! 一刻も早く同勢をすぐり、捜索隊を組織し、江戸おもてへ発足せしめられたい!」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と、そういう評定ひょうじょうもしたのであったが、本間党と渋谷党とが、承引しょういんしようとはしなかった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
女中たちは物見高ものみだかいから、たちまち二三人集まって、金魚評定ひょうじょうが始まりました、猫にひっかかれたんだろうというものや、いいえ烏が飛んで来ていたずらをしたのに違いないというもの
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
てこでも動かぬにこうじ果てて、すっぱすっぱ煙草たばこを吹かすやら、お前様、くしゃみをするやら、向脛むかはぎたかる蚊をかかと揉殺もみころすやら、泥に酔った大鮫おおざめのような嘉吉を、浪打際に押取巻おっとりまいて、小田原評定ひょうじょう
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みんなもその評定ひょうじょうに気をとられている間に、たくさんの蛇はどこへか消えてしまったように影も形もみえなくなったので、みんな又おどろいたが、もうその頃はそこらも薄暗くなって来たので
半七捕物帳:34 雷獣と蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大講堂の山門の僉議せんぎがひらかれたので、山法師の群れにまぎれ込み、その評定ひょうじょうの様子を見聞きしていたところ、誰からともなく
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と同音に「わっ!」と叫び大事な評定ひょうじょうも忘れたかのように四方に向かって逃げ出した。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
子分の者を呼び集めて評定ひょうじょうを開いてみましたけれど、いずれ、道庵の子分になるくらいのものだから、資力においても知恵袋においても、そんなにかんばしいものばかりありませんでしょう。
本郷、うなぎなわて——長岡頼母の屋敷である。喬之助討取り方評定ひょうじょうの最中に。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その浪士らが信州にはいったと聞き、佐久さくへ来たと聞くようになると、急を知らせる使いの者がしきりに飛んで来る。にわかに城内では評定ひょうじょうがあった。あるものはまず甲州口をふさぐがいいと言った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と言ふ評定ひょうじょうぢや。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
全国、どこの城にも、かならず評定ひょうじょうというものはある。けれどもその評定の間から真の大策たいさくらしい大策が生れた例は甚だ少ないようだ。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
というは、ほとんど落城の際の最後の評定ひょうじょうみたようなものです。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今日の評定ひょうじょうは他でもない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
気転きてんよくたった小姓こしょう藤巻石弥ふじまきいしや、ふと廊下ろうかへでるとこは何者? 評定ひょうじょう袖部屋そでべやへじッとしゃがみこんでいる黒衣こくいの人間。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鏡の裏から、お綱のちこんだ所は、昔、事あるごとに、甲賀組の者が、ここへ集合して隠密のしめしあわせをした評定ひょうじょう場所。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
由来、一藩が大挙して兵器を持つ場合は、必ず太守の御前で、支藩、重臣たちの意見を述べ、その評定ひょうじょうによって命令のくだることになっておる。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だまれ、さっするところそのほうは、伊那丸いなまるからはなされた隠密おんみつにちがいない、思うに、屋根の上にいて、ただいまの評定ひょうじょうをぬすみ聞きしたのであろう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きょうの評定ひょうじょうを、筑州殿には、何とお考えかしらぬが、およそ列座の諸侯も、このような大事を議す場所に臨むは、織田家あって初めてのことと、みなほぞを固めておられように。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
広い評定ひょうじょうの間とそのほかの袖部屋そでべやまで、すべてのふすまをとりはずし、さながら連日連夜の大地震でも避難しているように、一門一族、家老その他、みな起居を共にし、雑居しているのだった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これを見ても、評定ひょうじょうの席では、諸説紛々ふんぷん、なにもきまらなかったことがわかる。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百花の匂いも、春光も閉じこめて、評定ひょうじょうは、暗かった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
驚かない評定ひょうじょうをつづけていたのであった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)