西行さいぎやう)” の例文
十露盤玉そろばんだま筆先ふでさき帳尻ちやうじりつくろふ溝鼠どぶねづみのみなりけん主家しゆか一大事いちだいじ今日こんにち申合まをしあはせたるやうに富士見ふじみ西行さいぎやうきめ見返みかへるものさへあらざれば無念むねんなみだ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
過て宇都谷たうげに到れば絶頂ぜつちやう庵室あんしつ地藏尊ぢざうそん境内けいだい西行さいぎやう袈裟掛けさかけ松あり其所のわきへ年の頃五十位と見ゆる旅そうのやつれたるが十歳許りの女の子を引立來り彼のそう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
文覚もんがくさへ恐れさせた西行さいぎやうほどの肉体的エネルギイのなかつたことは確かであり、やはりわが子を縁から蹴落した西行ほどの神経的エネルギイもなかつたことは確かであらう。
続芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それ/″\の冬のいとなみに、もう惱み始めてゐるであらう主婦や娘や、氣の弱い父親などの氣もちを思ひやると、秋の夕霧も、なか/\、西行さいぎやうが歌つたやうなものではない。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
およそ越後の雪をよみたるうたあまたあれども、越雪こしのゆき目前もくぜんしてよみたるはまれなり。西行さいぎやう山家集さんかしふ頓阿とんあ草菴集さうあんしふにも越後の雪の哥なし、此韻僧ゐんそうたちも越地の雪はしらざるべし。
十六夜いざよひ日記につき」の女詩人は、河畔に立つて西行さいぎやう法師ほふしの昔をしのび、「光行紀行みつゆききこう」の作者は、川が深く、流れがおそろしく、水がみなぎつて、水屑みくずとなる人の多いのにおびえてゐる。
天竜川 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
高綱 (うち笑む。)西行さいぎやうのやうな涙もろい男なら、無常を感じて泣くでござらう。
佐々木高綱 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
ものをくらべるのは恐縮きようしゆくだけれど、むかし西行さいぎやうでも芭蕉ばせをでも、みな彼処あすこでははらいためた——おもふに、小児こどもときから武者絵むしやゑではたれもお馴染なじみの、八まん太郎義家たらうよしいへが、龍頭たつがしらかぶと緋縅ひおどしよろいで、奥州合戦おうしうかつせんとき
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一念いちねん此處こヽあつまりては今更いまさらまぎらはすべき手段しゆだんもなく、あさひるしよくをとりても、はては學校がくかうきてもしよらきても、西行さいぎやううた令孃ひめ姿すがただれてまへはなれぬに
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
およそ越後の雪をよみたるうたあまたあれども、越雪こしのゆき目前もくぜんしてよみたるはまれなり。西行さいぎやう山家集さんかしふ頓阿とんあ草菴集さうあんしふにも越後の雪の哥なし、此韻僧ゐんそうたちも越地の雪はしらざるべし。
あやしさよとばかさとし燈下とうかうでみしが、ひろひきしは白絹しろぎぬ手巾はんけちにて、西行さいぎやう富士ふじけむりのうたつくろはねどもふでのあとごとにきたり、いよいよさとりめかしきをんな不思議ふしぎおもへば不思議ふしぎかぎりなく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)