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くげん
ふりがな文庫
“
苦艱
(
くげん
)” の例文
孤独地獄にも陥ちたらんが如く
苦艱
(
くげん
)
を受くること
屡々
(
しばしば
)
なりなど仰せられ、御改易のことについては、些の御後悔だに見えさせられず候。
忠直卿行状記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
彼の新なる悔は切に
夤
(
まつは
)
るも、
徒
(
いたづら
)
に凍えて水を得たるに
同
(
おなじ
)
かるこの
両
(
ふたつ
)
の者の、
相対
(
あひたい
)
して
相拯
(
あひすく
)
ふ能はざる
苦艱
(
くげん
)
を添ふるに過ぎざるをや。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
若し舟中の人にして、或は浪に打ち揚げられ、或は自ら
泅
(
およ
)
ぎ着きて、巖のはざまなどにあらんには、人に知られで飢渇の
苦艱
(
くげん
)
を受けもやせん。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
苦艱
(
くげん
)
をなすった甲斐が有ったアだ、おれも心配して、汝がに会いてえと思ったが、
然
(
そ
)
うかえ、若旦那が御帰参になるようになったら、汝何うする気だ
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
が、この
苦艱
(
くげん
)
を受けているのは、何もおれ一人に限った事ではない。おれ一人
衆苦
(
しゅうく
)
の大海に、
没在
(
ぼつざい
)
していると考えるのは、
仏弟子
(
ぶつでし
)
にも似合わぬ
増長慢
(
ぞうじょうまん
)
じゃ。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
流れが
煽
(
あお
)
って、こう、
颯
(
さっ
)
とせく、落口の
巌角
(
いわかど
)
を
刎
(
は
)
ね越すのは
苦艱
(
くげん
)
らしい……しばらく見ていると、だんだんにみんな上った、一つ残ったのが、ああもう少し
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
三人は日ごとに顔を見合っていて気が附かぬが、困窮と
病痾
(
びょうあ
)
と
羇旅
(
きりょ
)
との三つの
苦艱
(
くげん
)
を
嘗
(
な
)
め尽して、どれもどれも江戸を立った日の
俤
(
おもかげ
)
はなくなっているのである。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「わたしが
快
(
よ
)
くなったら如何でもして恩報じをするから、今夜は
苦艱
(
くげん
)
だから、済まないが阿爺さん起きて居てお呉れ、
阿母
(
おっかさん
)
は赤ん坊や何かでくたびれきって居るから」
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
なれど、死ねぬ、死ねぬ。口惜しゅうて死ねぬ。いつまでつづくこの世の
苦艱
(
くげん
)
、焦熱地獄。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
旅人の胸は、人皆にはそれぞれの道が神によつて豫示せられてゐて、或者は幸福への道に、また或者は
苦艱
(
くげん
)
への道に向はざるを得ないといふ事で、いふべからざる苦惱をおぼえる。
ゲエテの「冬のハルツに旅す」
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
渡河
瀕死
(
ひんし
)
の難、雪峰凍死の難、
重荷
(
おもに
)
負戴
(
ふたい
)
の難、
漠野
(
ばくや
)
独行の難、
身疲
(
しんぴ
)
足疵
(
そくし
)
の難等の種々の
苦艱
(
くげん
)
もすっぱりとこの霊水に洗い去られて清々として自分を忘れたような境涯に達したです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
地獄の
裡
(
うち
)
に
堕
(
お
)
ちながら、慣るるにつれて、身の
苦艱
(
くげん
)
の薄らぐままに、ひたすら想い出でらるるは、故郷の父母さては東京、大阪の有志が上なり、一念ここに及ぶごとに熱涙の
迸
(
ほとばし
)
るを覚ゆるなりき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
この世に未練は沢山有るけれど、私は早く死んで、この
苦艱
(
くげん
)
を
埋
(
う
)
めて了つて、さうして早く元の
浄
(
きよ
)
い
躯
(
からだ
)
に生れ
替
(
かは
)
つて来たいのです。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
云はば目前の
境界
(
きやうがい
)
が、すぐそのまま、地獄の
苦艱
(
くげん
)
を現前するのである。自分は二三年前から、この地獄へ堕ちた。一切の事が少しも永続した興味を与へない。
孤独地獄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しの「さア
此方
(
こっち
)
へお上んなさいまし
私
(
わし
)
は少し
塩梅
(
あんべえ
)
が悪くってネ、其処まで立って
往
(
い
)
くも
苦艱
(
くげん
)
でござえますから、何うかあんた此方へ這入っておくんなせえましよ」
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
戦争過ぎて五年目に、日本は独舞台で欧洲中原の五年にわたる
苦艱
(
くげん
)
を唯一日の間に甞めました。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
なる程生というものは
苦艱
(
くげん
)
を離れない。しかしそれを避けて逃げるのは
卑怯
(
ひきょう
)
だ。苦艱
籠
(
ご
)
めに生を領略する工夫があるというのだ。
What
(
ホワット
)
の問題を
how
(
ハウ
)
にしたのだね。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
而
(
そ
)
して、
百年
(
ひやくねん
)
以来
(
いらい
)
、
天守
(
てんしゆ
)
に
棲
(
す
)
む
或
(
ある
)
怪
(
あやし
)
いものゝ
手
(
て
)
を
攫
(
さら
)
はれて、
今
(
いま
)
見
(
み
)
らるゝ
通
(
とほ
)
りの
苦艱
(
くげん
)
を
受
(
う
)
ける……
何
(
なに
)
とぞ
此
(
こ
)
の
趣
(
おもむき
)
を、
温泉
(
をんせん
)
に
今
(
いま
)
も
逗留
(
とうりう
)
する
夫
(
をつと
)
に
伝
(
つた
)
へて、
寸時
(
すんじ
)
も
早
(
はや
)
く
人間界
(
にんげんかい
)
に
助
(
たす
)
けられたい。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
重ね重ねの悪業を重ねた汝じゃから、有司の手によって身を
梟木
(
きょうぼく
)
に晒され、現在の報いを自ら受くるのも一法じゃが、それでは未来永劫、焦熱地獄の
苦艱
(
くげん
)
を受けておらねばならぬぞよ。
恩讐の彼方に
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
口惜しゅうて死ねぬ、いつまでつづくこの世の
苦艱
(
くげん
)
、焦熱地獄
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
千の
苦艱
(
くげん
)
も
固
(
もと
)
より
期
(
ご
)
したるを、なかなかかかる
寛
(
ゆたか
)
なる信用と、かかる
温
(
あたたか
)
き
憐愍
(
れんみん
)
とを
被
(
かうむ
)
らんは、
羝羊
(
ていよう
)
の
乳
(
ち
)
を得んとよりも彼は望まざりしなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
又さもなければ如何に良秀でも、どうしてかやうに生々と奈落の
苦艱
(
くげん
)
が画かれませう。あの男はこの屏風の絵を仕上げた代りに、命さへも捨てるやうな、無惨な目に出遇ひました。
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
袂
(
たもと
)
を分かつはただ一瞬の
苦艱
(
くげん
)
なりと思いしは迷いなりけり。わが身の常ならぬがようやくにしるくなれる、それさえあるに、よしやいかなることありとも、われをばゆめな
棄
(
す
)
てたまいそ。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
袂
(
たもと
)
を分つはたゞ一瞬の
苦艱
(
くげん
)
なりと思ひしは迷なりけり。我身の常ならぬが漸くにしるくなれる、それさへあるに、
縦令
(
よしや
)
いかなることありとも、我をば
努
(
ゆめ
)
な棄て玉ひそ。母とはいたく争ひぬ。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
“苦艱”の意味
《名詞》
苦しみ。苦難。
(出典:Wiktionary)
苦
常用漢字
小3
部首:⾋
8画
艱
漢検1級
部首:⾉
17画
“苦”で始まる語句
苦
苦悶
苦笑
苦々
苦痛
苦患
苦力
苦労
苦手
苦衷