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紙捻
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こより
ふりがな文庫
“
紙捻
(
こより
)” の例文
不圖、旅人は面白い事を考出して、
密
(
そつ
)
と口元に笑を含んだ。紙屑を袂から出して、
紙捻
(
こより
)
を一本
糾
(
な
)
ふと、それで紙屑を犬の尾に
縛
(
ゆは
)
へつけた。
散文詩
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「をツさん、また詰まつてるな。
素人
(
しろと
)
の煙草呑みはこれやさかいな。」と、俯いて
紙捻
(
こより
)
を拵へ、丁寧に煙管の掃除を始めた。
鱧の皮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
「世の中には、女の心を知り過ぎて、藝事と言へば、鼻へ
紙捻
(
こより
)
を入れてクシヤミをする藝當しか知らない奴もゐますよ、——この八五郎見たいに」
銭形平次捕物控:314 美少年国
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
これだけ? ——これだけなものか——ほかに、もう一通、弁馬の奴からよこした
猪口才
(
ちょこざい
)
な果し状も、
紙捻
(
こより
)
のように
縒
(
よ
)
って、結いつけておいたのだ。
御鷹
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ああ、誰も……」と前後を見廻し、
屹
(
きっ
)
と
頷
(
うなず
)
き、帯の間に
秘持
(
かくしも
)
てる
紙片
(
かみきれ
)
を取出だしつ、くるくると
紙捻
(
こより
)
にして、また左右に眼を配り、人のあらぬを見定めて。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
彼の眼の前には神中の白い左の手の指が、
美麗
(
きれい
)
に
透
(
す
)
きとおるように見えていた。彼はそのままその
紙捻
(
こより
)
を人さし指に巻きつけて、三度まわしてきちんと縛った。
雀が森の怪異
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
わたしは仕方なしに後方の
人込
(
ひとご
)
みに揉まれて舞台を見ると、ふけおやまが歌を
唱
(
うた
)
っていた。その
女形
(
おんながた
)
は口の辺に火のついた
紙捻
(
こより
)
を二本刺し、側に一人の
邏卒
(
らそつ
)
が立っていた。
村芝居
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
卯平
(
うへい
)
は
少
(
すこ
)
し
開
(
ひら
)
いた
戸口
(
とぐち
)
から
其
(
そ
)
の
小
(
ちひ
)
さく
蹙
(
しが
)
めた
目
(
め
)
で
外
(
そと
)
を
見
(
み
)
た。
狹
(
せま
)
い
庭
(
には
)
の
先
(
さき
)
に
紙捻
(
こより
)
を
植
(
う
)
ゑたやうな
桑畑
(
くはばたけ
)
の
乾燥
(
かんさう
)
しきつた
輕鬆
(
けいしよう
)
な
土
(
つち
)
が
黄褐色
(
くわうかつしよく
)
な
霧
(
きり
)
の
中
(
なか
)
へ
吹
(
ふ
)
つ
立
(
た
)
つて
行
(
ゆ
)
くのが
見
(
み
)
える。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その間に抽斗の草稿は一枚二枚と剥ぎ裂かれて、
煙管
(
キセル
)
の
脂
(
やに
)
を拭う
紙捻
(
こより
)
になったり、ランプの油壺やホヤを拭う反古紙になったりして、百枚ほどの草稿は今既に幾枚をも余さなくなった。
十日の菊
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
一つの端緒から
手繰
(
たぐ
)
り手繰りしてゆくうちにそれからそれと五日間も書き続けてまだその項が終らないような事もあった。おのおのの項が終るごとにそれを一つに纒めて
紙捻
(
こより
)
で綴じた。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
これを読んで寝ようとお思ひになつてあなたが二階から
態々
(
わざ/\
)
床
(
とこ
)
の中へ持つて来ておありになるのを見附けますが、私の生前に
束
(
たば
)
ねられた儘の
紙捻
(
こより
)
の結び目は一度もまだ解いた跡がないのです。
遺書
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「をツさん、また詰まつてるな。
素人
(
しろと
)
の煙草呑みはこれやさかいな。」と、俯いて
紙捻
(
こより
)
を拵へ、丁寧に煙管の掃除を始めた。
鱧の皮
(新字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
その手さきに眼をやった彼は、そこに奇怪な物を見つけて血が逆上したように驚いた。それはその人さし指に
己
(
じぶん
)
が結んだと同じような
紙捻
(
こより
)
がまいてあることであった。
雀が森の怪異
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
細い
刃金
(
はがね
)
が三本通してあって、その上を、
雁皮紙
(
がんぴし
)
の
紙捻
(
こより
)
で実に根気よく巻きしめた物なのである。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
白紙
(
しらがみ
)
手頼
(
たよ
)
り
水
(
みづ
)
手頼
(
たよ
)
り、
紙捻
(
こより
)
手頼
(
たよ
)
りにい……」と
巫女
(
くちよせ
)
の
婆
(
ばあ
)
さんの
聲
(
こゑ
)
は
前齒
(
まへば
)
が
少
(
すこ
)
し
缺
(
か
)
けて
居
(
ゐ
)
る
爲
(
ため
)
に
句切
(
くきり
)
が
稍
(
やゝ
)
不明
(
ふめい
)
であるがそれでも
澁滯
(
じふたい
)
することなくずん/\と
句
(
く
)
を
逐
(
お
)
うて
行
(
い
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「これを裂いて
紙捻
(
こより
)
にしようよ、——人を呪わば穴二つさ。見たが可い。」
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
どういふもので分るのか、それは文吾も知らないが、兎に角、源右衞門の汚い握り拳を透いて、中の
紙捻
(
こより
)
がギヤマンの鉢に浮く
慈姑
(
くわゐ
)
の根のやうに見えてゐた。
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
同地発行の新聞は、なぞの死人のことを書きたてたが、死因も判っていなければ、どこの者とも判っていなかった。そして、指の
紙捻
(
こより
)
のことなどは問題になっていなかった。
雀が森の怪異
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
斜
(
なゝめ
)
に
茶碗
(
ちやわん
)
の
水
(
みづ
)
に
立
(
た
)
つた
紙捻
(
こより
)
がだん/\に
水
(
みづ
)
を
吸
(
す
)
うて
點頭
(
うなづ
)
いた
樣
(
やう
)
にくたりと
成
(
な
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
紙捻
(
こより
)
で耳をほっていた
赤埴源蔵
(
あかばねげんぞう
)
が
べんがら炬燵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
七人の
親指
(
おやゆび
)
と
食指
(
ひとさしゆび
)
とが、皆源右衞門の擧の上に集つたところで、源右衞門は「よしか。」と一聲、パツと指を開くと、七つの手に一本づゝ
紙捻
(
こより
)
がブラ下つた。
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
「まア/\。」と、源右衞門は、さながら若い主人を宥める家老のやうにして、文吾のいきり立つのを押へながら、最初の定めの通り籤親の自分だけが拔けて、一同に
紙捻
(
こより
)
の籤を抽かした。
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
紙
常用漢字
小2
部首:⽷
10画
捻
常用漢字
中学
部首:⼿
11画
“紙”で始まる語句
紙片
紙
紙幣
紙鳶
紙屑
紙燭
紙入
紙袋
紙縒
紙芝居