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納所
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なっしょ
ふりがな文庫
“
納所
(
なっしょ
)” の例文
と、
納所
(
なっしょ
)
坊主が寄り集って大ボヤキ。この大石をどかさないと、人が通れない。それを見て、どうかしましたか、と人が集る物見高さ。
明治開化 安吾捕物:20 その十九 乞食男爵
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
その古寺へ四、五年前から二人の出家がはいり込んで来て、住職は全達、
納所
(
なっしょ
)
は全真、この二人が先ず居すわることになりました。
半七捕物帳:46 十五夜御用心
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
庫裡
(
くり
)
に
音信
(
おとず
)
れて、お墓経をと頼むと、気軽に取次がれた住職が、
納所
(
なっしょ
)
とも小僧ともいわず、すぐに下駄ばきで卵塔場へ出向わるる。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
だから
納所
(
なっしょ
)
にいるお小僧までが——もっとも
小寺
(
こでら
)
なのでほかに住僧はないが——びたびたという尻切れ
草履
(
ぞうり
)
が寺内に聞えてくると
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こうして
襷掛
(
たすきがけ
)
で働いているところを見ると、どうしても一個の独立した
庵
(
あん
)
の主人らしくはなかった。
納所
(
なっしょ
)
とも小坊主とも云えた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
一度は一軒置いてお隣りの多宝院の
納所
(
なっしょ
)
へ這入り坊さんのお夕飯に食べる
初茸
(
はつたけ
)
の煮たのを
摘
(
つま
)
んでいるところを
捕
(
つか
)
まえました。
幕末維新懐古談:73 栃の木で老猿を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
第一、正伝寺の墓場には、笹枝家の墓などというものの無いことは、花屋も、
納所
(
なっしょ
)
の小坊主も保証をしております。
銭形平次捕物控:046 双生児の呪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
◎
山城
(
やましろ
)
の
相楽郡木津
(
さがらぐんきづ
)
辺の或る寺に某と云う
納所
(
なっしょ
)
があった、身分柄を思わぬ
殺生好
(
せっしょうずき
)
で、師の坊の
誡
(
いまし
)
めを物ともせず、
例
(
いつ
)
も大雨の後には寺の裏手の小溝へ出掛け
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
お寺の
納所
(
なっしょ
)
のような感じがした。部屋部屋が意外にも清潔に磨かれていた。もっと古ぼけていた筈なのに、小ぢんまりしている感じさえあった。悪い感じではなかった。
帰去来
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
秋の晩方から宗右衛門は寺の
納所
(
なっしょ
)
部屋の隣へ小さな隠居所を建てゝ
籠
(
こも
)
つた。寺の世話役も彼の心中を察して別段やかましく言はなかつた。村の者もあまり
怪
(
あやし
)
まうとしなかつた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
ものにするとは、何かお手のものの商売手に利用してみてやろうじゃないかという
謀叛気
(
むほんぎ
)
なのであります。このお寺の
納所
(
なっしょ
)
で、案内係であの小坊主を腐らせてしまうのは惜しい。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
宝村から追い立てられた其翌日の出来事であるが、昨日までの教員が、今日は青々と髪を剃った
納所
(
なっしょ
)
坊主と一変し、名も
拳龍
(
けんりゅう
)
と改めたのは、有為転変の世の中とは云え
漫
(
そぞろ
)
に
憐
(
あわれ
)
を催させる。
国事犯の行方:―破獄の志士赤井景韶―
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
納所
(
なっしょ
)
二人も尻はしょり、一人は
麺棒
(
めんぼう
)
、一人は
鉄火箸
(
かなひばし
)
を得物に代えて、威風
凜々
(
りんりん
)
というありさま。隅々を見回ってから四人額をあつめひそひそささやき合い、また立ち分かれて見回り歩く。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
「お新!」若い
納所
(
なっしょ
)
が狂気のように叫び出した。「おほ、お、お——しん!」
釘抜藤吉捕物覚書:02 梅雨に咲く花
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
納所
(
なっしょ
)
の雛僧の末々に至るまでもかように権を誇っていたのは当り前です。
旗本退屈男:06 第六話 身延に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
と先刻
納所
(
なっしょ
)
をして、持ってこさした、桐の箱を開けると、中から出たは、パサパサになった女の黒髪と、
最早
(
もう
)
曇って光沢のない
古鏡
(
こきょう
)
であったので、当時血気な私初め
傍
(
かたわら
)
に黙って聞いていた兵卒も
雪の透く袖
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
此間
(
こねえだ
)
鴻
(
こう
)
の
台
(
だい
)
を見たいという話だからお寺へ頼んだ処が、何んだか浪人者が山へ
匿
(
かく
)
ねたとか云うんで、八州さまが調べに来て
八
(
や
)
ヶましいので、知んねえものは
入
(
い
)
れねえだが、おらが
納所
(
なっしょ
)
へ頼んでネ
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ほかに善了という二十一歳の
納所
(
なっしょ
)
と、英俊という十三歳の小坊主と、伴助という五十五歳の寺男と、あわせて三人がこの寺内に住んでいた。
半七捕物帳:25 狐と僧
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ここでは
納所
(
なっしょ
)
の僧が、
疾
(
と
)
く起きていたらしく、僧の影はひとりも見えないが、二斗
炊
(
だ
)
きの大釜をかけた
竈
(
かまど
)
の下には、
薪
(
まき
)
が
焚
(
た
)
きつけてあった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
老僧か、小坊主か
納所
(
なっしょ
)
かあるいは門番が
凝性
(
こりしょう
)
で
大方
(
おおかた
)
日に三度くらい
掃
(
は
)
くのだろう。松を左右に見て半町ほど行くとつき当りが本堂で、その右が
庫裏
(
くり
)
である。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
……その勢だから……向った本堂の横式台、あの高い処に、
晩出
(
おそで
)
の
参詣
(
さんけい
)
を待って、お
納所
(
なっしょ
)
が、盆礼、お返しのしるしと、紅白の麻糸を三宝に積んで、小机を控えた前へ。
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二人ともに、この寺院の荒涼たる広間で、白衣を着て対坐したところが、行者か亡者かみたようだが、事実は、寺院備えつけの
納所
(
なっしょ
)
の坊主の着用を一時借用に及んだものらしい。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
結構な打ち菓子を
誂
(
あつら
)
へて仏前や老師に供へた。しまひには
納所
(
なっしょ
)
部屋にまでも、それを絶やさなかつた。泰念といふ
静
(
しずか
)
な
朴訥
(
ぼくとつ
)
な小僧が居て、加減よく茶を立てゝは宗右衛門によくすゝめた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
「今までは住職と
納所
(
なっしょ
)
ばかりだ。そこへ何処からか虚無僧二人が舞い込んで来て、一緒に死んでいたんだから、何がどうしたのか判らねえ」
半七捕物帳:46 十五夜御用心
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そんな筈はない、きまりが悪いのじゃろう、明日は江戸へ連れて帰る——と重ねて佐渡がいうと、伊織は、
納所
(
なっしょ
)
坊がしたように、アカンベーをして
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まず拝して、絵馬を
視
(
み
)
て、しばらく居ました。とにかく、
廚裡
(
くり
)
へ案内して、拝見……を願おうと……それにしても、竹の子上人は
納所
(
なっしょ
)
なのかしら、
法体
(
ほったい
)
した寺男かしら。……
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
だが、ときめきだけが胸に残つて、いくら眼を閉ぢても
無駄
(
むだ
)
になつた。今度は
納所
(
なっしょ
)
部屋の角を曲ると直ぐ宗右衛門は横を向いた。その上にまたかたく眼を閉ぢた。しかし、矢張りいけない。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
味噌をすっていた
納所
(
なっしょ
)
は、
摺古木
(
すりこぎ
)
を担ぎ出しました。そのほかいろいろの
得物
(
えもの
)
を持って、このすさまじい
風来犬
(
ふうらいいぬ
)
を追い立てました。門外へ追い出そうとしてかえって、方丈へ追い込んでしまいます。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「
納所
(
なっしょ
)
にも
住持
(
じゅうじ
)
にも、坊主はまだ一人も出て来ないんだ」
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
寺の玄関へ廻って案内を乞うと、奥から
納所
(
なっしょ
)
が出て来た。留吉はさっき提灯を借りに行ったので、納所もその顔を識っていた。
半七捕物帳:69 白蝶怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
すると、外から帰ってきた奥蔵院の
納所
(
なっしょ
)
が、うさん臭い者を見るような眼で、武蔵をじろじろながめて通りかけた。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もうそうなりますとね、一人じゃ先へ立つのも
厭
(
いや
)
がりますから、そこで私が案内する、と
背後
(
あと
)
からぞろぞろ。その晩は、鶴谷の
檀那寺
(
だんなでら
)
の
納所
(
なっしょ
)
だ、という悟った禅坊さんが一人。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
本堂も
庫裡
(
くり
)
も山門も
納所
(
なっしょ
)
もごっちゃなんで。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかし吉五郎は寺の
納所
(
なっしょ
)
にたのんで、あしたの朝は駕籠を迎いに
遣
(
よこ
)
すから、今夜だけはここへ寝かして置いてくれと云った。
半七捕物帳:69 白蝶怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
和尚様は今日は留守なり、お
納所
(
なっしょ
)
、小僧も、
総斎
(
そうどき
)
に出さしった。まず大事ねえでの。はい、ぐるぐるまきのがんじがらみ、や、このしょで、転がし出した。それさ、その
形
(
かた
)
でがすよ。
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
納所
(
なっしょ
)
坊は、調子に乗って
揶揄
(
からか
)
いながら、眼の玉を
剥
(
む
)
いて、ぬっと顔を突き出した。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「なるほど、そういえば此の頃は、うちの御住持さまは大変に犬を嫌っていなすった」と、時光寺の
納所
(
なっしょ
)
も云った。
半七捕物帳:25 狐と僧
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もう一人の頭陀、これは気絶していただけなので、すぐ息を吹っ返し、裸のまま
拉致
(
らっち
)
された。頭陀は報恩寺の
納所
(
なっしょ
)
、
胡道人
(
こどうじん
)
というやつ。彼の白状で事はあらまし奉行所の調書にのぼった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
内心如夜叉
(
ないしんにょやしゃ
)
どころか、夜叉神の面をかぶって悪事を働きやがる。貴様は一体どこの
納所
(
なっしょ
)
坊主だ。素直に云え」
半七捕物帳:65 夜叉神堂
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
たしかめた上、ちと話があるのじゃ。今まで、あの沢庵坊主や、姫路の御家来たちと話していたが、ここの
納所
(
なっしょ
)
、茶も出さぬ。喉が
渇
(
かわ
)
きました。まず先に、ばばに茶を一ぱい汲んでおくりゃれ
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
納所
(
なっしょ
)
の了哲に番をさせて置いたのですが……」と、僧も面目ないように云った。「その了哲がちょっとほかへ行った隙に……。どうも不思議でなりません」
半七捕物帳:66 地蔵は踊る
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
納所
(
なっしょ
)
の僧が、
煎
(
せん
)
じ薬を持って入ったり
粥
(
かゆ
)
の土鍋を運んで行ったりしていた。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寺の
納所
(
なっしょ
)
たちへ聞こえよがしに、彼はこんなことを云って、わざと苦しそうに顔をしかめていた。
半七捕物帳:69 白蝶怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
どじょう髯の大将は、この寺の
納所
(
なっしょ
)
と思っているらしく、遂に
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
時光寺の
納所
(
なっしょ
)
の善了も本山派に内通していたという疑いをうけて、寺を
逐
(
お
)
い出されたそうです。
半七捕物帳:25 狐と僧
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
いっしょに洗い物を手伝っていた
納所
(
なっしょ
)
坊も、口をそろえて
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三崎町の大仙寺というお寺の
納所
(
なっしょ
)
が檀家の法要に呼ばれてかえる途中、丁度その時刻に坂下町を通りかかると、谷中の方角から
十歳
(
とお
)
か十一ぐらいの女の子が長い振袖を着て
怪談一夜草紙
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
あの店から、五、六軒先の
法衣屋
(
ころもや
)
の筋向うに徳法寺という寺があります。そこの
納所
(
なっしょ
)
あがりに善周という若い坊主がいる。娘の死んだ明くる朝にやっぱり頓死したんだそうで……。
半七捕物帳:22 筆屋の娘
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そこらを四、五日うろ付いた揚げ句に、宗慶寺という寺へはいって、住職と
納所
(
なっしょ
)
に疵を負わせて十五両ばかりの金を取ったのから足が付いて、ゆうべ板橋の女郎屋で挙げられたそうです。
半七捕物帳:64 廻り灯籠
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
寺の
納所
(
なっしょ
)
たちが
銅鑼
(
どら
)
をたたいて騒ぎ立てたので、近所の者も駈けつけて来る。
半七捕物帳:64 廻り灯籠
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
“納所”の意味
《名詞》
納 所 (なっしょ, のうしょ)
年貢などを納める場所。
寺院で、施物を納める所。
(出典:Wiktionary)
納
常用漢字
小6
部首:⽷
10画
所
常用漢字
小3
部首:⼾
8画
“納所”で始まる語句
納所坊主
納所僧
納所寺
納所用
納所着
納所部屋