筑後ちくご)” の例文
筑前ちくぜん筑後ちくご肥前ひぜん肥後ひご豊前ぶぜん豊後ぶんご日向ひゅうが大隅おおすみ薩摩さつまの九ヵ国。それに壱岐いき対馬つしまが加わります。昔は「筑紫ちくししま」と呼びました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
豊前ぶぜん筑後ちくごは好く存じませんが、筑前ちくぜん殊に福岡は鷹揚おうような人が多い、久留米くるめなどのこせ/\した気性に比ぶれば余程男らしい処があります。
福岡の女 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
すると、突然ある日、そのころ筑後ちくご前司ぜんじ小舎人ことねりになっていた弟が、盗人の疑いをかけられて、左のひとやへ入れられたという知らせが来た。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
水野筑後ちくごは二千石の知行ちぎょうということであるが、特にその旅は十万石の格式で、重大な任務を帯びながら遠く西へと通り過ぎた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
徳大寺とくだいじ家の密使をはじめ、加担の西国大名、筑後ちくご柳川やながわ大洲おおず加藤かとう金森かなもり鍋島なべしま、そのほかの藩から、それぞれの使者が徳島城に集まって
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昔「猫」を書いた時、その中に筑後ちくごの国は久留米くるめの住人に、多々羅三平たたらさんぺいという畸人きじんがいると吹聴ふいちょうした事がある。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
左馬権介さまごんのすけ結城ゆうき七郎、千葉平兵衛尉ちばへいべえのじょう葛西かさい十郎、筑後ちくご六郎、和田わだ三郎、土肥先二郎どひせんじろう佐原さはら太郎、多多良たたら四郎、長井ながい太郎、宇佐美うさみ三郎、佐佐木小三郎ささきこさぶろう南条平次なんじょうへいじ
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
しかしこれは日本につぽんのごく一部いちぶおこなはれたゞけで、九州きゆうしゆう筑後ちくご肥後ひごなどに時々とき/″\ることが出來できます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
福岡県筑後ちくごにて聞いた狐話があるが、夏の夜、一人の漁夫が筑後川の岸にてあゆの釣りをしていた。その背面にあしが茂っており、その薦を隔てて小道が川に並んでついている。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
藩士尊攘派の独自的結成は水戸で水長藩士の丙辰へいしん丸会盟、関西ではもっと大仕掛に薩——寺田屋で藩主改良派の手で殺された——長、土、肥、筑前ちくぜん筑後ちくごの諸藩士および浪士
尊攘戦略史 (新字新仮名) / 服部之総(著)
それから一帯吉原田圃で、この方に太郎稲荷(この社は筑後ちくご柳川やながわ立花たちばな家の下屋敷内にある)の藪が見え、西は入谷田圃に続いて大鷲おおとり神社が見え、大音寺前だいおんじまえの方へ、吉原堤に聯絡れんらくする。
落付おちつけんと思ひ近處きんじよ近傍きんばうへは古郷なる筑後ちくご久留米くるめへ赴くといひなしてぞ立出ける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
羽後うご由利郡の本荘ほんじょう西方から、雄物川おものがわ平原の浅舞あさまい横手へ越える峠は、海岸部の方が表口、肥後ひご山鹿やまがの奥岳間村から筑後ちくごの矢部へ越える冬野の山道は、複雑していたが肥後の方が表だったと記憶する。
峠に関する二、三の考察 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
時に王既に今川了俊いまがわりょうしゅんの為に圧迫せられて衰勢に陥り、征西将軍の職を後村上帝ごむらかみていの皇子良成ながなり王に譲り、筑後ちくご矢部やべに閑居し、読経礼仏を事として、兵政のつとめをば執りたまわず、年代齟齬そごするに似たり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
伊東七十郎のほかに、訪問者が三人待っており、あとからまた二人来て、それらとの用談が済むと、宮崎筑後ちくごから、招宴の使いが来た。筑後は本丸城代じょうだいで、これまであまり親しいつきあいはなかった。
それから三度も四度も猛烈な手紙を寄こしたあとで、とうとうこう云う条件を出した。自分が三平と誤られるのは、双方とも筑後ちくご久留米くるめの住人だからである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
八月の一日には、この街道では栗色くりいろなめしのやりを立てて江戸方面から進んで来る新任の長崎奉行、幕府内でも有数の人材に数えらるる水野みずの筑後ちくごの一行を迎えた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
先年、筑後ちくごの柳河にて、ある小学校長より聞いた話がある。その校長が不知火しらぬいを探検せんとて、火の出ずる季節に漁舟を雇い、夕刻より海上へこぎ出だしたれど、なかなか火が見えぬ。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
筑後ちくごにはむかし繼體天皇けいたいてんのう御時おんとき磐井いはゐといふつよひとがをつて、朝鮮ちようせん新羅しらぎくに同盟どうめいして、天皇てんのうめいそむいたので、とう/\征伐せいばつされてしまひましたが、このひときてゐる時分じぶんから、いしでおはかつく
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
筑後ちくご柳河やながわの人で南紀理介なんきりすけ、槍術では海内かいだい無双むそうという聞えがあった。
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水野筑後ちくごかみ——あの人は二千石の知行ちぎょう取りだそうだが、きょうの御通行は十万石の格式だぜ。非常に破格な待遇さね。一足飛びに十万石の格式なんて、今まで聞いたこともない。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)