しつ)” の例文
相手の陸奥むつはなもそんなに細かい力士ではないが出羽に向つて仕切ると四階見物より『小さいのーイ、しつかりしろ』と怒鳴られる。
五八も驚きしつかといだは若旦那にてありしか私し事は多く御恩ごおんあづかり何かと御贔屓下ごひいきくだされし者なれば先々まづ/\わけあとの事手前の宿やどへ御供を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
地面に半分ばかり入つてゐるしつかりした食ひ込みの剛直さは、まはり六七尺もある老杉と釣合うて何ともいはれず美事だつた。
京洛日記 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
方角はいへ裏手うらての様にも思へるが、遠いのでしつかりとはわからなかつた。また方角を聞きけるひまもないうちにんで仕舞つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
少くともしつかりと箇をつかめば、その箇の中には全もあるわけだから、それを此方から其方へと移して行くことが出来る。
小説新論 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
「何言うてなはるのや。……火事がいく、何処どこが焼けますのや、……しようもない、しつかりしなはらんかいな。」
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
たわいのない事を云ふかと思ふと、祖母の頭にはこんなにしつかりしたところもあるのだと、お梅は自分もこれにならつて精細な計算帖をつくる氣になつて暇を告げた。
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
いえわつしはそら六十四ですもの。金「ナニ八十になつても九十になつても生きてる人は生きてます、死にたいからつて死なれるものぢやないからしつかりしてなくツちやア。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いづれわかることでせうが、お金も何處かにしつかり溜めてゐることでせう」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
本当にしつかりした信念があるならば何の恐れをなす必要もないと思ふ。
狩太農場の解放 (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
藁苞わらづとよりそろ/\と出しこししつかとゆひつけ之までかぜを引たりと僞り一ト夜も湯には入らざるのみか夜もろく/\に目眠まどろまず心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其時第一に馳けけたものは祖父ぢゞであつた。左の手に提灯をかざして、右の手に抜身ぬきみを持つて、其抜身ぬきみ死骸しがいを叩きながら、軍平ぐんぺいしつかりしろ、きづあさいぞと云つたさうである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いんきんだむしの附着くつゝいてる箱は川原崎かはらさきごんらういたてえ……えゝすべつてころんだので忘れちまつた、醋吸すすひの三せい格子かうし障子しやうじに……すだれアハヽヽヽ、おいうした、しつかりしねえ。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そんなに謙遜けんそんしなくつてもいゝわ。兄さんの繪が評判になれば私達まで肩身が廣くなるのだから、心細いことなぞ云はないでしつかりして下さいな。今度の日曜ごろには新しい作品を
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
……これだけをしつかり約束せんと、今度といふ今度は家の敷居跨がせん。
鱧の皮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
喞筒ポンプしつかり頼むぞい!」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
のがれなんとせども惡者承知せず彼是ふうち其骨柳こり渡せと手を掛るに傳吉今は一生懸命右をはらへば左より又た一人が腕首うでくびしつかと取てうごかせずかうはてたる折柄此處に來たる旅人あり此有樣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なるほど、みやくはうおほうございますな、みやくわりにするとねついんにこもつてりますな。「モウ/\わたしとても助かるまいと思ひます。「そんな事をおつしやつちやアいけませんよ、どうかしつかりなさい。 ...
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
……これだけをしつかり約束せんと、今度といふ今度は家の敷居またがせん。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
しばらくして、そりや君の様に気楽にくらせる身分なら随分云つて見せるが——なにしろふんだからね。どうせ真面目まじめな商買ぢやないさ。と云つた。代助は、それで結構だ、しつかりり玉へと奨励した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)