眞實ほんたう)” の例文
新字:真実
錢形の親分は江戸開府以來と言はれる捕物の名人だから、きつと眞實ほんたうの下手人を搜して下さるに違ひない——と斯う言つてくれました
でもな、眞實ほんたう小額こびたひところ雛鷄ひよっこのお睾丸程きんたまほどおほきな腫瘤こぶ出來できましたぞや、あぶないことよの、それできつ啼入なきいらッしゃった。
たらよろしく被仰おつしやつください、』とぼく眞實ほんたうにしないのでむすめだまつてわらつてた。おきぬ此娘このむすめ從姉妹いとこどうしなのである。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
この男の口からみのるは何日いつかの自分の作を選した眞實ほんたうのもう一人を知つた。それは簑村といふ新らしい作家であつた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
謔語じやうだんのつもりで言つたことは眞實ほんたうに成つて來た。實際、菜の花が咲いて居た。青草は地面ぢべたから頭を持上げて居た。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
昨宵ゆうべもね、母が僕にさう云ふんだ。君が楠野さん所へ行つた後にだね、「肇さんももう廿三と云へや子供でもあるまいに姉さんが什麽どんなに心配してるんだか、眞實ほんたうに困つちまふ」
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
……いて、眞實ほんたうにはなさるまい、伏木ふしき汽船きせんが、兩會社りやうくわいしやはげしく競爭きやうさうして、乘客じようきやく爭奪さうだつ手段しゆだんのあまり、無賃銀むちんぎん、たゞでのせて、甲會社かふくわいしや手拭てぬぐひ一筋ひとすぢ乙會社おつくわいしや繪端書ゑはがき三枚さんまい景物けいぶつすとふ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
聞きお勇否々いや/\夫は眞實ほんたうとも存じませんが若御ことばのやうならかへつて御うらやましく存じます女の身にては見たき處が有ても見られもせずさりながら御前樣まへさまには最早もはや三十に近き御年頃としごろに見上ますが御住居を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
きりゝとした女の人——眞實ほんたうにきりゝとした女の人だ、ね、ジエィン。
これはてんまで殘念ざんねんながら眞實ほんたうらしい。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「それは變つた話を聞くものだな、本所の狸囃子といふのは話の種にはなつて居るが、眞實ほんたうにそんなものがあるとは思はなかつたよ」
愚かな私は何事でも自分でつて見た上でなければ、眞實ほんたうにその意味を悟ることが出來ませんでした。
じやがづラクダルさんに試驗しけんをしてもらはなければならぬ、其上でお前に怠惰屋なまけやになるだけの眞實ほんたう力倆りきりやうがあるときまれば、あらためてお前をの人の弟子でしにしてもらふ、如何どうだ、これは?
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
カピ妻 まだ眞實ほんたうの十四にはなりませぬ。
聞て番頭久兵衞成程世の中には義理ぎりかたい深切なる者もあれば有者あるものしかしながら夫が眞實ほんたうの人間なるべし其市之丞殿とか申方は當時たうじ何方に住居致され候やと申にお政は打案うちあんじ左樣さ私しも未だ江戸の樣子やうすは不案内なれ共たしか馬喰町邊とかにて紙屑買を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
晝のうち檢屍に來た係り同心には、幾太郎の無實を細々と説明した上、『眞實ほんたうの下手人は、今晩中に擧げてお目にかけます』
祖母樣ばゝさま、お前さまは眞實ほんたうの祖母樣かなし……一寸背後うしろを向いて見さつせれ……』
赤らめしが思ひ切てわたくしで御座ります然樣さやう聞成きゝなされたらさぞいやで御座りませうと云つゝ邪視ながしめに見やりたる其艷色うつくしさにナニ夫が眞實ほんたうならどうして/\此重四郎が身に取ては實に本望ほんまうなりと云ふとき人來りければ二人は素知そしらぬていにて左右さいうわかれ其のち藤澤へ歸りてよりなほお勇と相談さうだんうへ小松屋文右衞門は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『女がやつたらしく見せかける爲か』でなければ眞實ほんたうに『女がこさへた藁人形でなければならない』ことになるのです。
若旦那は、大旦那の眞實ほんたうの子ではなく、遠い御親類から貰はれた人ですが、後添の御内儀と仲が惡い上、近頃大旦那にさからつてばかり居りますので、明日は親類の方々を
「それだけ解つて居るなら、どうしてむじつの世之次郎を縛つて、眞實ほんたう下手人げしゆにんを逃して置いたのだ」
そのことから現に今三人の命にも拘はるといふ大變なことが持上がつてゐるんだ。父親が亡くなつた今となつては、もう遠慮はあるまい。眞實ほんたうのことを詳しく話してはくれまいか
「それは解つてゐるが、主人の孫右衞門の眞實ほんたうの娘ではないといふことだな」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「そりや善いお母さんです。眞實ほんたうの母でもあんなにはしてくれないでせう」
「羨ましいほどで、——みんな眞實ほんたうの姉妹と思つてをります」
「お前とは眞實ほんたうの姉妹ぢやなかつたのだな」
「それは眞實ほんたうだらうな」