眉目みめ)” の例文
まして手紙のうちにある眉目みめうるわしい女性の笛吹きといえば、どうやら、かねて時折は案じている昔なじみのお通らしくもあるし——
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清らかに痩せ細つた顔は、火の光に赤うかがやいて、風に乱れる黒髪も、肩に余るげに思はれたが、哀れにも美しい眉目みめのかたちは、一目見てそれと知られた。
奉教人の死 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
お瀧は其れとは打って変って成程眉目みめ形は美しゅうございますが、せい恰好から襟元えりもとまでお尻の詰ったほっそり姿、一目見ても気味の悪くなるような婦人でございます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのそばに小さくなつてシクシクと泣いてゐるのは、十六七の小娘で、眉目みめ美はしさや、拔群の可愛らしさから見ても、それはお君の妹のお吉でなければなりません。
行末どんな立派な貴公子になろうかと思われるほど、眉目みめ形の整った紅顔の美少年だったが、敵に弱味を見せまいと、袖で涙をかくしておられる様子が哀れであった。
いくつにも仕切つた四角い池へは、じつにいろ/\さま/″\の金魚が眉目みめ美しく放たれてゐた。
下町歳事記 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
私はよく実験室の窓から彼等を見るが、まことに眉目みめ麗しく雄々しい連中で、挙動は優雅で丁寧であり、如何にも親切そうにこちらを見るので、即座に同情と愛情とを持つようになる。
眉目みめよしといふにあらねど紺浴衣こんゆかた
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
四 眉目みめよき一婦人
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
見てくれい。美人だぞ。眉目みめばかりか気だてもいい。一生の持ちものとして気に入ったからもらったのだ。ほかに、他意もないわさ
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われ、まなこを定めてその人を見れば、おもてはさながら崑崙奴こんろんぬの如く黒けれど、眉目みめさまで卑しからず、身には法服あびとの裾長きを着て、首のめぐりには黄金こがねの飾りを垂れたり。
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのそばに小さくなってシクシクと泣いているのは、十六七の小娘で、眉目みめうるわしさや、抜群ばつぐんの可愛らしさからみても、それはお君の妹のお吉でなければなりません。
平林という奴は誠に横着おうちゃくな奴で、平生罪人の内女の眉目みめき者がありますと、役柄をもはゞからずしょうにするという、現に只今でも一人ひとり囲い者にして男児を設けたということでございます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
漁師りょうし日焼ひやけ眉目みめよしからすとぶ
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
老女は師直の命で、ひまあるごとに、家臣のやしきを訪れ、眉目みめよい女房があると、ひそかにこれを師直へ耳打ちしておく。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
少し時節は早う御座いますが、御領内から、嫁入前の眉目みめよき娘を狩り集め、女ばかりの盆踊りを
七八年まえ痘瘡もがさが、おれには重く、弟には軽かったので、次郎は、生まれついた眉目みめをそのままに、うつくしい男になったが、おれはそのために片目つぶれた、生まれもつかない不具になった。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「父親の官兵衛よりは眉目みめい。母御ははごに似たと見ゆる。気性もしっかり者らしい。良い和子わこだ。なかなか良いところがある」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だが、山伏どの、他人ひと眉目みめよい妻をめとるのを、ねたむものは、あさましゅうござるぞよ。どういうお怒りか存ぜぬが——」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眉目みめい八、九歳の少年が「……お母さま……」と、大声を発し、あたりの者へ「母者ははじゃがいない……母者を捜して」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小茶ちゃんにいて奥へ通ってゆく彼女のひなに稀れな眉目みめと、どことなく、ろうたけているとでもいうか、品のあるすがたに、眼と囁きを送っていた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眉目みめうるわしい笛の上手な佳人が来て、朝夕の世話やら、茶や花や和歌の相手やら、とかくに寒巌枯骨になりやすい草庵に、一輪の花をそえている。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眉目みめや身なりからみても北条一族の奥にでも仕えていた小女房か何ぞにちがいない。——しかも、師氏を見上げた眸は、敵意にみちている目であった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、この辺には見馴れない眉目みめのよい女房が、磯べをしょんぼり彼方かなたから辿たどってくる——れちがって、ふと
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつの頃か、お千代という眉目みめのすぐれた売笑婦が、浜町の菖蒲河岸あやめがしに舟をつないで、嫖客ひょうきゃくを招くに水上から
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十人のうちから唯ひとりの常磐を選んだと——都の辻あたりでも噂されたほど眉目みめすぐれた女性である。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眉目みめはよし、芸もよし。鎌倉の白拍子、田楽女でんがくひめ数千といわるるが、かほどな者はよもおるまい。道誉はなぜ、今日まで、藤夜叉をこの高時に見せずにおいたか」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男の子ならばむろ唐船からふねへ売りわたし、眉目みめよい女子おなごだと京の人々が、千里もあるように考えているあずまの国から那須野なすのの原をさらに越えて、陸奥みちのくのあらえびすどもが
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこの古いお厨子ずし青漆塗せいしつぬりで玉虫貝たまむしがいぎ出しであったかと思う、その厨子の前へ、朝に夕に眉目みめのいやしくない老婆が、合掌する、不思議はない、御先祖を拝むのだ。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当館とうやかたへ将軍家のおりを仰ぐたび、歌舞にお給仕に、何かのお目なぐさみにもと、年来、眉目みめうるわしいものは召抱えて来たが、さてさて天下にすくないのは美人であった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、両手を顔に当てたかと思うと、美しい眉目みめは忽然と口の引っ裂けた形相に変っている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、叫びかけて、おもわずはしたない驚きの目をしばらく彼女の花顔かんばせから離しえなかったものだった。それほど彼女の眉目みめは若き日のかの草心尼に似て美しくまばゆくもあった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眉目みめよい一少年を連れた路傍の垂衣笠たれぎぬがさの一女性を、高氏は、その晩、夢にもみたほどだった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おおせのごとく、こんど、この地へ、はじめて越し、けんざんに入、祝着に候……其許そこもと眉目みめぶりかたちまで、いつぞや見まいらせ候折ふしよりは、十のもの二十ほども見上げもうし候
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眉目みめきひとりは、彼の寵姫ちょうきでもあった。なにしろここには、緋の袴に白袖の神のつかが「——かもめの群れ居たるによく似たり」と旧記にもあるほどたくさんにいたらしい。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、他家の女房たちと、何かむつまじそうに話していた三十ぐらいな眉目みめい婦人が
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おそらくは、百姓の女房たちと同じように、裾短かにくくしあげ、手も水仕みずしのひびあかぎれや、土いじりに荒し、髪のあぶらも眉目みめよそおいも、かえりみる暇はなかったにちがいない……
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或る日、物見櫓ものみやぐらの下で、すれちがッた一少年がある。城内には小姓や下屋しもやわらべも多い。しかし、どこか眉目みめが違う。右馬介は「この和子だな」と直感したので、すれ違いざま、こころみに
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おんかずらに高々と、飛ぶ鳳凰おおとり、九ツの龍、七いろの珠などちりばめた金冠を載せ、天然無双の眉目みめのおんほほ笑みを、まばゆいばかりに、こぼしておられる。——その雪のおんはだ美妙みみょうかおり。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、妙齢十六、七の眉目みめうるわしい処女おとめを、そっと城中から送って来た。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いやそれが、ここらの磯女ともみえません。眉目みめい……」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第一眉目みめうるわしい。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)