さん)” の例文
「おいそぎでなかったら一さんととのえましょうか、わたくしはお相手がなりませんけれども、そのうちにはくらんどがみえましょう」
日本婦道記:松の花 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
智深ちしんは、その人をむしろに迎え、名乗りあってから、一さんけんじた。おとこおとこを知り、道は道に通ずとか。二人はたちどころに、肝胆かんたん相照あいてらして
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吟味のものには、黄金五枚、鶴の御酒一さんくだしたまわる。……晴れの御前試合。どちらもぬからぬよう、じゅうぶん勉強いたすよう申し聞かせ
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
一、酒は釣詩鈎ちょうしこうの意をもて三五さん用ゆるは可なり、おおくとも七盞を過ぐべからず、この数を越る飲徒は荘中に入るを許さず
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
されば一べいの菓子、一さん珈琲コオヒイに、一円、二円となげうちて、なおも冥加に余るとなし、我も我もと、入交いりかわり、立替る、随喜のともがら数うるにうべからず。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
圖「はゝアかしこまりました、就きましては甚だ差上げる物もござらんが、いさゝ酒肴しゅこうを取寄せお待受まちうけを致して居りましたから、何うぞ一さんお傾け下され、さ周玄これへ」
玄竹げんちく今夜こんやつて其方そち相談さうだんしたいことがある。怜悧りこう其方そち智慧ちゑりたいのぢや。…まあ一さんかたむけよ。さかづきらせよう。』とつて、但馬守たじまのかみつてゐたさかづきした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
まゆをあつめ胸をおさえて、浪子は身をもだえつ。急に医を呼びつつ赤酒を含ませんとする加藤夫人の手にすがりて半ば起き上がり、生命いのちを縮むるせきとともに、肺を絞って一さんの紅血を吐きつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
全篇支離にして、絶て格調の見るべきなし。看てへいとなせば、これ瓶。さんとなせば、是れ盞。劍となせば、これ劍。その定まりたる形なきこと、これより甚しきはあらず。字をあますこと凡そ三たび。
「……横井はそのほうに大切な知らせを持って来ている、勝負は余の所望だ、もうよいから上って坐れ、改めて一さんとらすぞ」
足軽奉公 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ぼくして、過日、未解決におわった大問題をぜひ一決して、さらにさんを重ねたいと思うのであるが、諸公のお考えは如何であるか
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今日きょうは来たな、丁度用もなし徒然とぜんで居るから幸いで、酒は少しは飲むか、一さん取らせよう、これ由次よしじ、奥へ行ってあの菓子が有ったから、あれを多分に母といもとに土産になる様にして遣れ
「やあ待ち給え。そいつはちと気が早い。もう一さん、機嫌直しをって、こころよく乾杯した上、お別れしよう」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「雪が待ちきれないので一さんやりに出たんですがな、飲んでしまったら、このとおり降りだしました、いったいどういうつもりですかな、とんとわけがわかりません、どうも御無礼」
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
圖「ではござましょうが、せめて麁酒そしゅを一さんだけでも召上って」
漁網の魚は、これを採って一さんの卓にのぼせ、地は割譲わけて、ながく好誼よしみをむすぶ引出物としようではないか。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうそう、久木たちとも飲まなかったそうだな、では失礼して、一さんするよ」
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
さんまた一盞、みずから酒をそそいで、彼の激色は火のような忿懣ふんまんを加えるばかりである。孔明はわざと冷静に、そしてさもいぶかしげな眉をして問い返した。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とうとう謝ってしまった、「なにしろそういうわけだから、とにかく、そこでそのまたひとつ香物を出して貰おうかな、さかなの口を直してもう一さん馳走になろう、すっかり酔いが醒めてしまった」
明暗嫁問答 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
やがて戦端が開かれたら、谷を囲む南の一峰に、昼は七星旗を立て、夜は七さん燈火ともしび明々あかあかと掲げよ、司馬懿を引き入れる秘策ゆえ、切に怠らぬようにいたせ。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「では席を替えて一さん仕ろう」それから御殿へ移って酒宴が開かれ
備前名弓伝 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「門出の心祝いです。どうかこれを収めて、士卒のはしにいたるまで、一さんずつわけてあげて下さい」と、途中、酒賈さかやからあがなってきた酒壺しゅこをたくさんに陣中へ運ばせた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、急に戦いもやんで、何やら手持ち不沙汰だから、一さん、馳走になろうかと思って」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
各〻も、昼夜、戦のほかに他念なく、疲れもしつらん。旁〻かたがたきょうは祝うべく楽しむべき日だ。粮米ろうまいすらに事欠く中、何もないが一さんみ交わそうぞ。さあ、くつろいで杯を挙げよ
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なにもびっくりなさる事はありません。この春日を慰め奉れ、と相国から酒をお贈り申しにきたのです。これは延寿酒といって、百歳のよわいを延ぶる美酒です。さあ一さんおあがりなさい」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
良人うちにだってしてるじゃないの。さ、食事がすんだらお茶を一さん上がって」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わが党の士か、あらためて一さんけんじ申そう。して、貴君はいずれの藩士」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その周りには四十九の小燈を懸けつらね、中央に本命の主燈一さんを置いて、千々種々ちぢくさぐさの物を供え、香をき、じゅを念じ、また、折々、盤の清水せいすいをかえ、かえること七度、拝伏して、天を祈る。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帳中の孔明はと見れば、祭壇には大きな七さんの燈明がかがやいている。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遂に毒杯を献じたり、右と左にそして最後の一さんにわれをたおしぬ
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、またつい、さされる一さんをうけてしまった。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、彼へも一さんの茶をすすめた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まず、一さん
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)