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痛痒
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つうよう
ふりがな文庫
“
痛痒
(
つうよう
)” の例文
一撃に敵を打ち倒すことには何の
痛痒
(
つうよう
)
も感じない代りに、
知
(
し
)
らず
識
(
し
)
らず友人を傷つけることには児女に似た恐怖を感ずるものである。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そうすれば肺臓は如何に結核に冒されようが、何の
痛痒
(
つうよう
)
も感じません。従って、肺結核問題はたちどころに解決されてしまいます。
人工心臓
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
一応御報告というところへ云いつくせぬ小心な恨みをこめ、対手にはだが一向
痛痒
(
つうよう
)
を与え得ず、父親が去ると、主任は椅子をずらして
刻々
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
小人
(
しょうじん
)
から
罵詈
(
ばり
)
されるとき、罵詈それ自身は別に
痛痒
(
つうよう
)
を感ぜぬが、その
小人
(
しょうじん
)
の面前に
起臥
(
きが
)
しなければならぬとすれば、誰しも不愉快だろう。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ハハハハハハハ、お撃ちなさい。その女が死んだところで、わしは少しも
痛痒
(
つうよう
)
を感じない。イヤ、
却
(
かえ
)
って御礼を申上げ度い位のものだ」
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
つけた積りだろうが、皆矢っ張り頭が悪いね。ガラマサどんと呼ばれる分には意味がないんだから、我輩一向
痛痒
(
つうよう
)
を感じない
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
然し、僕が棄てても棄てんでも、そんな事に君は
痛痒
(
つうよう
)
を感ずるぢやなからうけれど、僕は僕で、
友
(
フレンド
)
の徳義としてとにかく一旦は棄てんで訪ねて来た。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
家屋庭園の装飾はただちに我が形体の寒熱
痛痒
(
つうよう
)
に感ずるに
非
(
あら
)
ざれども、精神の風致を
慰
(
なぐさむ
)
るの
具
(
ぐ
)
にして、戸外の社会に交りてその社会の美を観るもまた
教育の目的
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
未来は当然
来
(
きた
)
るべきものにしてからが、来らざる間は
痛痒
(
つうよう
)
の感覚から離脱している。ただ現在だけは怖るべきです。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この場合、二人や三人の敵を斬っても、相手は総体の力からいえば、なんの
痛痒
(
つうよう
)
も感じないばかりでなく、間髪を
過
(
あやま
)
れば、槍が伸びてくるからである。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
でも興行者側はなんといふか?
少
(
すこ
)
しでも障りになるか? いえ、ちつとも
痛痒
(
つうよう
)
は感じないであらうと思ふ。
むぐらの吐息
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
たとい涸るることあるも自家には決して
痛痒
(
つうよう
)
なき財源を有するものなり。すでにこれを有す。あにいずくんぞこれを
酙
(
く
)
むに遅疑せんや。ゆえに吾人は断言す。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
いったい、この人物は、蚤について一言も発せぬが、果して何の
痛痒
(
つうよう
)
も感じないのだろうか。もしそれなら、この人物は自分たちには不思議な存在だと思った。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
ゼーロンはそんな調子で、
躍
(
おど
)
り出すと、行手の松の木の傍まで進んで、また振り返っている。丁度、加えられた
痛痒
(
つうよう
)
が消え去ると同時に立ち止まるという風であった。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
そう思われても、ぼくは別段
痛痒
(
つうよう
)
は感じません。人間、誰だって、その要素はあるのですから。
凡人凡語
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
印度人なぞは
蛆虫
(
うじむし
)
同然にしか心得ていない大使館では我々が束になって騒ぎ立てても何らの
痛痒
(
つうよう
)
も感じないであろうが、日本人のあなたが訪ねて行かれたならばまさかに
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「やあ今日は、イレネさん」と帽子をとって
挨拶
(
あいさつ
)
をしてから、魚戸氏に「金はちゃんと持っているんだ。君たち二人ぐらい奢っても
痛痒
(
つうよう
)
は感じないんだ。だから一緒に……」
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
書物なんか盗まれても
痛痒
(
つうよう
)
を感ぜぬ輩が多く、従って社会の書籍に対する良心が、掠奪結婚を是認する時代、待合を議会と心得る時代の良心と相
距
(
へだた
)
る事遠くないからだと思う。
愛書癖
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
神経の
麻痺
(
まひ
)
したその腕は、なんの
痛痒
(
つうよう
)
も感じないと見え、引っ込まそうとはしなかった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
右のごとく長州の
騒動
(
そうどう
)
に対して
痛痒
(
つうよう
)
相
(
あい
)
関
(
かん
)
せざりしに反し、官軍の東下に
引続
(
ひきつづ
)
き奥羽の
戦争
(
せんそう
)
に付き横浜外人中に一方ならぬ
恐惶
(
きょうこう
)
を起したるその
次第
(
しだい
)
は、中国辺にいかなる
騒乱
(
そうらん
)
あるも
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
清国は既に無勢力になったからかの国の言う事を
肯
(
き
)
かないでも自分の方には少しも
痛痒
(
つうよう
)
を感じないという考えもあり、殊に外国との関係について清国から申込みがあった時分には
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
尚侍
(
ないしのかみ
)
は大将の来ないことで何の
痛痒
(
つうよう
)
も感じていないのに、一方は一所懸命な言いわけがしてあるこの手紙も、
玉鬘
(
たまかずら
)
は無関心なふうに見てしまっただけであるから、返事は来なかった。
源氏物語:31 真木柱
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
この時船中の食堂で卓を囲んで皿の肉をつついている人には船が進んでいようがいまいが何の
痛痒
(
つうよう
)
も感ぜぬ、船が動けば皿の肉もそれを食っている自分自身もやはり一緒に動いて行くからだ。
宇宙の二大星流
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ここに到って並大抵の
天狗
(
てんぐ
)
様ならば一遍にギャフンと参いって、それなり生唾を飲み込んで我慢するところであるが、
併
(
しか
)
し慢性の超弩級大天狗になるとこれ位の逆撃は
然
(
さ
)
して
痛痒
(
つうよう
)
を感じない。
謡曲黒白談
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
果実が腐っても親木は腐りはしない。腐った果実は地に落ちるだけだ。そのうえ、そういう連中は国民としてはわずかな部分だ。彼らが生きようと死のうと、われわれにはなんらの
痛痒
(
つうよう
)
もない。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その方針をあきたらぬとする岡本権判官や、政府の弱腰を嘆く丸山外務大丞の
挂冠
(
けいかん
)
を横目で見送って何らの
痛痒
(
つうよう
)
をも感じなかった。むしろ彼らの人間的な欠陥や時代的不誠実に嫌悪をさえ覚えた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
今文三の
痛痒
(
つうよう
)
をお勢の感ぜぬはどうしたものだろう。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
しかし着物を着換えて、お延から金を受け取って、少しの間
坐談
(
ざだん
)
をしていたために起ったこの遅刻は、何らの
痛痒
(
つうよう
)
を彼に与えるに足りなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
大きな会社とか商店とかいう、希望者の多いところでは、彼一人断わるということに何の
痛痒
(
つうよう
)
も感じないのだ。
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
また阿波守に
咎
(
とが
)
められたことも、自身では、正しい啓蒙と信じているので、なんらの
痛痒
(
つうよう
)
もおぼえていない。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いつ断わられたところで
敢
(
あえ
)
て
痛痒
(
つうよう
)
を感ずるわけではないけれど、ここで断わるというのは、あんまり人をばかにした仕打ちであると思いました。それだから米友は
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかし、今度の場合のやり方は、若し君が犯人でなかったら、少しも
痛痒
(
つうよう
)
を感じないようなものでした。虚偽の自白を
強
(
し
)
いるような手段は全くとられなかったのです。
月と手袋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
またあるいは一方の病気の如き、
固
(
もと
)
より他の一方に
痛痒
(
つうよう
)
なけれども、あたかもその病苦を自分の身に引受くるが如くして、力のあらん限りにこれを看護せざるべからず。
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
ゆえに政治上においても自由なり、平等なり、自然ならんことを欲するのみ。それ人は利害もっとも切なるの点に向かってもっともその
痛痒
(
つうよう
)
を感ず。生活上の利害は直接の利害なり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
氏は夫人失踪の第三日を迎えようが、四日目になろうが、
痛痒
(
つうよう
)
を感じなかった。
奇賊は支払う:烏啼天駆シリーズ・1
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
考えて見れば、一時間かゝろうが、二時間かゝろうが、本人以外には
痛痒
(
つうよう
)
ない。
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
いうのではないが、今の程度ならまだいいのさ、
撲
(
なぐ
)
られても
痛痒
(
つうよう
)
を感じない、石っころや土くれを撲ったんだからねえ。でもそんなこと繰り返していると、力自慢の力持ちのように、自分で自分の脛を
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
けれども粟野
廉太郎
(
れんたろう
)
には何の
痛痒
(
つうよう
)
をも与えないであろう。
十円札
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
巡査はただ形式的に聞いたのであるから、いつ這入ったところが
一向
(
いっこう
)
痛痒
(
つうよう
)
を感じないのである。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
新聞社にとっちゃ何の
痛痒
(
つうよう
)
もない。だから写真部員も僕の買収に応じてくれたのだよ。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
譬
(
たと
)
えば人身のごとし。これを健康に保たんとするには、飲食なかるべからず、大気、光線なかるべからず、寒熱、
痛痒
(
つうよう
)
、外より
刺衝
(
ししょう
)
して内よりこれに応じ、もって一身の働きを調和するなり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
その身一つは、寺に宿り、野に臥し、時には知己の清浄を恵まれ、なければ喰べずにいても、そう
痛痒
(
つうよう
)
には感じない。——そのうちに何とかなって来たのが今日までの流浪生活の常であった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すなわち国を立てまた政府を
設
(
もうく
)
る
所以
(
ゆえん
)
にして、すでに一国の名を成すときは人民はますますこれに
固着
(
こちゃく
)
して自他の
分
(
ぶん
)
を
明
(
あきらか
)
にし、他国他政府に対しては
恰
(
あたか
)
も
痛痒
(
つうよう
)
相
(
あい
)
感
(
かん
)
ぜざるがごとくなるのみならず
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
“痛痒”の意味
《名詞》
痛痒(つうよう)
痛みと痒み。
苦痛や障害。影響。
(出典:Wiktionary)
痛
常用漢字
小6
部首:⽧
12画
痒
漢検1級
部首:⽧
11画
“痛痒”で始まる語句
痛痒相冒