うみ)” の例文
ただ急劇に食物を変化させるのは禁物で昨日きのうまで煉餌を与えた者が今日から急に粒餌ばかりをたべさせると当分の内玉子をうみません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
人の霊魂のうみ劬労くるしみは実にこれである。かかる道程を経て進歩するのである。さればヨブ記の実験記たるはますます明かである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
又かれがうみおきたるはらゝごをとればその家断絶だんぜつすといひつたふ。鮏の大なるは三尺四五寸にあまるもあり、これ年々とし/″\あみのがれて長じたるならん。
その時身重であったその女が、作をうみおとしてから程なく、子供を弟の家に置去おきざりに、どこともなく旅へ出て行った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ふと我等の前に、うみにくるしむ女のごとく悲しくさけぶ聲きこえて、うるはしきマリアよといひ 一九—二一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
けれども、の奥様は大層お優しい方で、わがうみの児よりも継子ままこの御総領の方を大層可愛がって、にいう継母ままはは根性などと云う事は少しもない、誠に気質きだての美しい方でした。
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
実のうみの母御でさえ、一旦この世を去られし上は——幻にも姿を見せ、を呑ませたく添寝もしたい——我が最惜いとしむ心さえ、天上では恋となる、その忌憚はばかりで、御遠慮遊ばす。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかしこの万物呻吟は、また新しき創造のうみの苦痛である。この宇宙的苦しみの中から、人々は目をあげて、人の子イエス・キリストが大なる能力と栄光とをもて、雲に乗り来たるを見るであろう。
仕合とは何事ぞや當歳たうさいにてうみの母に死別しにわか七歳なゝつの年には父にさへしなれ師匠のめぐみ養育やういくせられ漸く成長はしたるなりかくはかなき身を仕合とは又何故にお前は其樣になげき給ふぞとたづねけるお三婆はおつる涙を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さてなる事は、かはひろにてかれうみおきたる所洪水こうずゐなどにてかはりて河原かはらとなりしが幾とせたちてもうみたる子くさらず、ふたゝび瀬となればその子生化せいくわしてさけとなる。
うみの親を可懐なつかしむまで、眉の一片ひとひらかばってくれた、その人ばかりに恥かしい。……
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うみたるも産後敢果なく成けるにぞ其親は娘の遺物かたみと生れし幼兒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これらはうみの苦難の始めなり。(一三の七、八)
さて此一掘ひとほりうみをはれば又それにならべりてはうみ、うみてはほり、幾条いくすぢもならべほりてつひには八九尺四方の沙中すなのなか行義ぎやうぎよくはらをのこらずうみをはる。あるひは所をかえてもうむとぞ。
私もはじめのうちは御実家おさとへお戻りのあるように、勧めてはみましたけれど、あなた方の重い御身分では、姑御しゅうとめご邪慳じゃけんだからって、ついちょいと軽々しく、うみの親御に顔は合わされぬとおっしゃるので
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お前のお娘のうみまごありて幼年にはてられしやは又如何なる人の子にてありしぞととふに婆は彌々いよ/\涙にくれながらも語り出るやうわしさはといふ娘あり御城下の加納將監樣といふへ奉公に參らせしが其頃將監樣しやうげんさまに徳太郎樣と申す太守樣たいしゆさまの若君が御預おあづかりにてわたらせ給へり其若君が早晩いつか澤の井に御手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)