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生唾
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なまつば
ふりがな文庫
“
生唾
(
なまつば
)” の例文
こういって、ジイと、
堤
(
どて
)
の上から見おろした。新吉は、何となく身がすくんで、これは、いよいよ容易なことではないと、
生唾
(
なまつば
)
をのむ。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして彼らは、
生唾
(
なまつば
)
をのむような沈黙に
堕
(
お
)
ち、この対座の一瞬々々に双方の考えがずんずん遠ざかるような焦燥を感じだした。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
手を
叩
(
たた
)
くことさえ忘れていた。
生唾
(
なまつば
)
を
呑
(
の
)
み込み呑み込み、眼をみはって、口をあけて、名女優の命がけの演技に見とれていた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかし、五、六度
生唾
(
なまつば
)
を
嚥
(
の
)
み下しているうちに、サッと智的なものが
閃
(
ひらめ
)
いたかと思うと、伸子は高い
顫
(
ふる
)
えを帯びた声で云った。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
生唾
(
なまつば
)
が、だらだらと出てきた。全身には、びっしょり汗をかいていた。だが僕は、大声で叫びたいほど愉快であった。
三重宙返りの記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
妾は
生唾
(
なまつば
)
をグット呑み込んだ。あんまり出来事が不意打ちで案外だったので、正直のところ胸がドキドキした。
ココナットの実
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
が、どうしても、出そうとするものがすっかり出ないで、さい/\
生唾
(
なまつば
)
を蜜柑の皮の上へ吐きすてた。
浮動する地価
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
それを人垣で隱すやうに、お光の
從兄
(
いとこ
)
の喜太郎を始め近所の衆、湯島五丁目の町役人、下つ引などが、檢屍の役人や平次の來るのを待つて、
生唾
(
なまつば
)
ばかり呑んで居ります。
銭形平次捕物控:198 狼の牙
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして、わたくしの肩をぐさと
掴
(
つか
)
み、
生唾
(
なまつば
)
を土手の若草の上に吐いて喘ぎながら言った。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
手向かうものとてはもはやその一個の
蛆虫
(
うじむし
)
のみである。が彼は手向かう。そして彼は剣をさがすがごとくに一語をさがす。彼には
生唾
(
なまつば
)
が湧く。そしてその生唾こそ彼の求むる一語である。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
一坪の
厨
(
くりや
)
は活気を
呈
(
てい
)
して
鰯
(
いわし
)
を焼く匂いが僕の
生唾
(
なまつば
)
を
誘
(
さそ
)
った。
魚の序文
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
オルガは
生唾
(
なまつば
)
をぐっと飲み込むように首を延ばした。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
その目安箱の側へよって、万吉は、ふところから弦之丞のしたためた密封をさぐり出し、
生唾
(
なまつば
)
をのみながら、箱の口へ、ポンと入れた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
博士は
生唾
(
なまつば
)
をごくりと呑みこみながら、秘書を呼んで冷蔵庫を探させた。
時限爆弾奇譚:――金博士シリーズ・8――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
柚木の大きい
咽喉仏
(
のどぼとけ
)
がゆっくり
生唾
(
なまつば
)
を飲むのが感じられた。
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
生唾
(
なまつば
)
が煙になって、みんな胃のふへ逆もどりしそうだ。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
かくと
殿軍
(
しんがり
)
の物見から聞くと、孔明は初めて、うすい
微笑
(
ほほえみ
)
を
面
(
おもて
)
に持った。
生唾
(
なまつば
)
を呑むように、待ちに待っていたものなのである。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「だ、だ、旦那様が……」勝見は
生唾
(
なまつば
)
をごくりと呑みこみました。
赤耀館事件の真相
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
小田島は、ごくりと一つ
生唾
(
なまつば
)
を呑んだ。
ドーヴィル物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
と、眼を血走らせているのは
袁彦道
(
えんげんどう
)
の胴元、
盆蓙
(
ぼんござ
)
の周りには、十四、五人の男が、同じように、
生唾
(
なまつば
)
を呑んで、よからぬ
弄
(
なぐさ
)
みに夢中の
態
(
てい
)
。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
博士は、電話をかけながら、ごくりと
生唾
(
なまつば
)
をのみこんだ。
時限爆弾奇譚:――金博士シリーズ・8――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「…………」
傷
(
いた
)
ましげに、人々は、
生唾
(
なまつば
)
をのんだ。しいんと、声もないうちに。と、生信房は、くわっと大きな眼を一方に向け
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、ジッと
生唾
(
なまつば
)
をのんですくまっていると、境内を斜めに切って、
疾風
(
しっぷう
)
のように自分の方へ駈けてくるふたつの天蓋が闇をかすッて見える。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、茫然の
裡
(
うち
)
に、やや
呆
(
あき
)
れ気味さえ湛えて、頼朝の怒っている——ほんとに怒りきっている苦々しげな
面
(
おもて
)
を——
生唾
(
なまつば
)
のんで見すえていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
小次郎は、そういって、
周
(
まわ
)
りにいる三、四十人の顔を見まわしている。皆、
生唾
(
なまつば
)
をのんで、彼の厳しい稽古ぶりに
顫
(
おのの
)
いた。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
官兵はちぢみ上がったものの、虚勢を張ったてまえ、退きもならず、
生唾
(
なまつば
)
をのんでいた。玄徳は、眼じらせで、関羽にこの場を扱うように促した。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、なおかつ、いまの師直の一言には尊氏もおもわず
生唾
(
なまつば
)
をのんだらしい。じっとそのおもてを
睨
(
にら
)
まえるように見て。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
客は口々にこう
囁
(
ささや
)
いて
生唾
(
なまつば
)
をのんでいた。先に
減
(
へ
)
らず口をたたいた男などは
唖
(
おし
)
みたいに眼をすくめた。
陸
(
おか
)
と川の中との隔てがなによりの頼りであった。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ワーッ、という
動揺
(
どよ
)
めきに、上甲板の醜い
喧噪
(
けんそう
)
は、一時に押し黙って、
眸
(
ひとみ
)
を吊り、眉をひそめ、
生唾
(
なまつば
)
をのんだ。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ぐ……と
生唾
(
なまつば
)
をのんで又八はなおも後へ
摺
(
ず
)
り
退
(
さ
)
がった。腹の底から驚きを感じると声も出ないものだ。ただ眼のみ大きくみひらいて、目前の事実に茫失した。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
胸さきに、
生唾
(
なまつば
)
を
痞
(
つか
)
えさせていた武士たちも、その図に乗って、いちどきに、わッと凱歌をあげて引揚げた。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
宵
(
よい
)
のくちになると、大番頭の
李固
(
りこ
)
以下、
盧家
(
ろけ
)
の雇人四十幾人、二列になって、大旦那の前に出て
生唾
(
なまつば
)
呑んだ。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こうつぶやいては、宅助、ペッ、ペッ、と
生唾
(
なまつば
)
を吐き、目ばかり鋭く動かして、よろよろと道を泳いだ。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
秀吉はともかく、衆はみな酒気を失って蒼白な
面
(
おもて
)
に
生唾
(
なまつば
)
をのみ合った。——事態、これはただ事でない。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
九郎兵衛は苦い
生唾
(
なまつば
)
をのんでいた。暫く措いてから門の外で、八十右衛門の笑い声が大きく響いた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ごくッ……と、丈八は、
喉
(
のど
)
に
生唾
(
なまつば
)
をつかえさせた。似ている! と思う直感と、たしかに! という直感と、一時に、十文字に、胸をつきぬいて、大きく心臓が呼吸した。
無宿人国記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ベッと、彼は馬上から
唾
(
つば
)
を捨てた。いやな物を見た後の不快な
生唾
(
なまつば
)
がまだ残っていた。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ごくと、
生唾
(
なまつば
)
を
嚥
(
の
)
んだまま、その妙な、小さな物体に、驚きの目を
奪
(
と
)
られてしまった。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
また、あれほど
躁
(
さわ
)
いでいた子供も、駈け出した大人も、その他この界隈の漁村の男女も、皆、森の際や
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
がくれに、しいんと、
生唾
(
なまつば
)
をのんでしまって、声一つ立てる者がない。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
凝然
(
ぎょうぜん
)
と、
生唾
(
なまつば
)
をのんだ儘、自失した無数の顔は、しばらく声をすら、出せなかった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
渺茫
(
びょうぼう
)
とした迷宮に疑心をさまよい、万吉も、それへ
驚目
(
きょうもく
)
をみはったまま、ゴクリと、
生唾
(
なまつば
)
をのんでいるばかり……まったく、いうべき言葉を忘れているとは瞬間、二人の姿であった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なにか緊迫してくるものを
各〻
(
めいめい
)
が顔に
湛
(
たた
)
え出した。自然とそれが人々を無口にさせた。誰の眼も一様に、そこから
街端
(
まちはず
)
れの街道を眺めて、
生唾
(
なまつば
)
を溜めて待ちしびれている様子に見える。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
草雲は、胸がつまって、思わず、依頼者に聞えては恥しいような
生唾
(
なまつば
)
をのんだ。
田崎草雲とその子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だがすぐ、不快な眼まいがこみあげて来るらしく、
生唾
(
なまつば
)
を吐いて顔を振った。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
後見や
装束方
(
しょうぞくがた
)
、そのほか、鏡の間の異変に、期せずして混み入って来た家臣たちは、
毛氈
(
もうせん
)
に
蔽
(
おお
)
われている紋太夫の死骸よりも、まず光圀の
面
(
おもて
)
を仰ぎ合って、ひとしく
生唾
(
なまつば
)
をのむばかりだった。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
連中はただ
生唾
(
なまつば
)
呑んで聞いているばかりだった。まるで地底のようである。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、ペッと
生唾
(
なまつば
)
を吐く音をさせて、そこを立とうともしない様子。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
唯七はペッと
水面
(
みずも
)
へ
生唾
(
なまつば
)
を吐いて、苦々しく、見ぬ振りを装っていた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さっきから見物していた兵たちは、笑いも出ずに、ただ
生唾
(
なまつば
)
をのんでいた。食い物の恨みは元々深刻なもの。いわんや、
焦
(
や
)
くがごとき暑熱に
渇
(
かわ
)
いている鼻先で、舌つづみを打たれたのでは堪るまい。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
腸も胃も、暴れ廻って、吐き気のような
生唾
(
なまつば
)
を感じるのだった。
田崎草雲とその子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
生
常用漢字
小1
部首:⽣
5画
唾
常用漢字
中学
部首:⼝
11画
“生唾”で始まる語句
生唾液